第26話 聖女レイナ9歳編 レイナと恥ずかしがり屋のウサギ
王国に一つの問題が浮上した。
彼女には同年代の友達が少なかった。
廷臣たちの子供たちはレイナを「聖女様」として敬遠し、一般市民の子供たちは身分の違いを気にして近づこうとしなかった。
レイナ自身は気にしていない様子だった。
彼女にとって、王も執事も騎士も、みんな同じ「笑顔の友達」だったからだ。
しかし、エラは心配だった。
「子供は子供同士で遊ぶべきよ」
ある夜、エラは夫のトーマスにこぼした。
「レイナは特別な力を持っているかもしれないけど、それでもまだ9歳の女の子なのよ」
それを聞きつけた王は、ある画期的な提案をした。
友達と遊ぼうプロジェクトとして、王宮に彼女の遊び相手として、同じ年頃の子供たちが招かれるようになった。
農夫の息子、鍛冶屋の娘、商人の娘……レイナは身分の違いを全く気にせず、皆を「お友達」と呼んだ。
彼女の「お友達」の一人、鍛冶屋の娘リサは、とてもシャイな子だった。
初めて王宮に来た時、緊張して一言も話せなかった。
レイナは彼女の前に座り、ぬいぐるみのウサギを差し出した。
「リサちゃん、このウサギさん、話したいんだけど、恥ずかしがり屋なんだよ。あなたが代わりに話してくれる?」
リサは目を大きく見開き、少し考えてから、小さな声でウサギの「代弁」を始めた。
「ウサギさんが言うには……こ、こんにちは、だそうです」
それからというもの、リサはレイナと話す時はいつもウサギを通して話し、それが彼女の安心する方法になった。
ある日、リサが「ウサギを通して」重大な問題を伝えた。
「ウサギさんが言うには……町の鍛冶屋の仕事場が、古い魔法の道具の影響で、鉄が突然柔らかくなり、武器が作れなくなっているそうです」
レイナは真剣な顔で聞き、すぐに行動を提案した。
「じゃあ、一緒に見に行こう! ウサギさんも連れて行くね!」
2人は王宮の小さな馬車で町へ向かった。
鍛冶屋の仕事場では、リサの父親が頭を抱えて悩んでいた。
炉の近くに置かれた古い魔法の盾が、誤って鉄の硬度を奪っていた。
レイナは古い盾をじっと見つめ、触ろうとしたが、リサの父親が慌てて止めた。
「聖女様、それは危険かもしれません!」
レイナは首を振り、「でも、盾さんも、ずっとここにいるから寂しいんだよ。新しい友達が欲しいんだって」
彼女は盾に話しかけるように近づき、小さな手をその表面に置いた。
「盾さん、ここから出て、お外で遊びたい? 鉄さんたちは、硬くないと仕事できないんだよ。」
盾から微かな光が漏れ、レイナの手に吸い込まれるように消えた。
その後、盾は普通の古い盾になり、炉の鉄は再び硬くなった。
リサの父親は感激して泣き、レイナはリサとウサギで「盾さんのお引っ越し祝い」をした。
「盾さん、新しいところで楽しく遊んでね!」
レイナは古い盾に微笑みながら言った。
リサはウサギを通して、「ウサギさんも、盾さんの新しい友達になってくれるって言っています」と伝えた。
その日から、鍛冶屋の仕事場は以前のように活気を取り戻し、リサの父親は王宮に感謝の品を送った。
しかし、レイナはそれよりも、リサがウサギを通して直接「ありがとう」と言ったことに、より喜びを感じていた。
「友達と遊ぼうプロジェクト」は成功だった。
レイナは農夫の息子と畑の虫の話をし、商人の娘とお人形ごっこをした。
彼女の特別な力は時々問題を解決したが、何よりも大切なのは、誰とでも「友達」になれるその心だった。
ある日、王がレイナに尋ねた。
「最近、楽しそうだね。たくさん友達ができたみたいだ」
レイナは王の膝の上に座り、ウサギのぬいぐるみを抱きながら答えた。
「うん! でも一番の友達はウサギさんかな。リサちゃんが話してくれるから、ウサギさんも私の友達になったんだよ!」
王は微笑みながら、レイナの頭を撫でた。
「それは素敵なことだ。でも、ウサギさんを通して話すリサちゃん自身も、君の友達だよね?」
レイナは考え込むような表情をしたが、すぐに笑顔で言った。
「そうだね! リサちゃんは恥ずかしがり屋だから、ウサギさんが話すのを助けてくれるんだ。でも、昨日、ウサギさんが『リサちゃん自身が話したいことがある』って言ってたんだ!」
「それは何だったの?」
「ウサギさんが言うんだよ、『リサちゃんは、レイナちゃんと直接話す練習をしたい』って!」
王は温かい笑みを浮かべた。
「それなら、君がリサちゃんの練習相手になるのが一番だね。」
次の週、リサが王宮に遊びに来た時、レイナは特別な計画を立てていた。
彼女はリサに小さな人形を渡し、「この人形さんは、ウサギさんのお友達なんだ。でも、今日はウサギさんがお休みしたいって言ってるんだよ」と言った。
リサは不安そうにウサギのぬいぐるみを見たが、レイナは続けた。
「ウサギさんが言うんだよ、『リサちゃんが直接話しても、レイナちゃんはちゃんと聞いてくれるから、安心してね』って。」
長い沈黙の後、リサは小さく息を吸い込み、レイナを見つめて言った。
「レイナちゃん……ありがとう。」
それはウサギを通さず、リサ自身の声だった。
レイナの目が輝き、彼女はリサの手を握った。
「リサちゃんの声、すごく素敵だよ!」
その日から、リサは少しずつウサギを通さずに話すようになり、時にはウサギと一緒に、時には自分自身でレイナと会話を楽しんだ。
レイナはただの「聖女様」ではなく、子供たちの「レイナちゃん」になった。
そして王国では、子供たちが「レイナちゃんと遊びたい!」と口にするようになり、王宮の門はいつも笑い声で溢れていた。
ある春の日、レイナとリサが庭でウサギと人形を使って遊んでいる時、リサが突然言った。
「レイナちゃん、私……ウサギさんと話すのは楽しいけど、レイナちゃんと直接話すのも、もっと楽しいんだ。」
レイナは嬉しそうに跳びはねた。
「私も! リサちゃんの声、大好きだよ!」
ウサギのぬいぐるみが二人の間に置かれ、それはもう「代弁者」ではなく、ただの「友達」の一人になっていた。
王国の問題は、レイナの笑顔と、一匹の恥ずかしがり屋のウサギのぬいぐるみによって、温かく解決された。
そして誰もが知っていた。
最も強い魔法は、友情という名の、最も柔らかい力だった。




