第24話 聖女レイナ9歳編 聖女レイナの踊るケーキ
王宮の庭園は、今年もレイナの誕生日を祝う華やかな舞台となった。
夕暮れ時、色とりどりのランタンと風船が柔らかな光を放ち、庭園を幻想的な雰囲気で包み込んでいた。
淡いピンクのドレスをまとったレイナは、去年の「歌うケーキ」を思い出しながらほほえんでいた。
招待客たちは、今年はどんな魔法が飛び出すのかと期待に胸を膨らませている。
「レイナ様、9歳のお誕生日おめでとうございます!」
宮廷魔術師マルコムが手を叩くと、中央に三層のバースデーケーキがふわりと浮かび上がった。イチゴとブルーベリーが散りばめられたフルーツケーキで、チョコレートの装飾がランタンの光にきらめいている。
「去年は歌うケーキだったけど、今年は何をするの?毎年楽しみしてるんだ」
隣に立つクリス王子が目を輝かせて尋ねた。
レイナはいたずらっぽく笑い、指先から淡い銀色の光をケーキへと送った。
すると、ケーキがふるふると震え始め、一番上の層から小さな足がにょきり。二層目、三層目も続き、三層のケーキ全体が、合計六本の細い足で立ち上がった。
「さあ、踊る時間だよ!」
一番上のイチゴ層が宣言すると、ケーキは軽やかにステップを踏み始めた。
「わあっ!」
来賓たちから驚きと歓声が上がる。
ケーキはまるでプロのダンサーのように、庭園の中央で旋回し、跳び、優雅に回転した。
二層目のチョコレート層は特に熱心で、「私はタンゴが好き!」と叫びながら情熱的なステップを披露する。
マルコムがひげを撫でながら感嘆した。
「去年は歌って、今年は踊る……このケーキはますます進化しているな!」
踊るケーキに触発され、王様や招待客たちも踊りだした。
大臣たちはぎこちないワルツを、騎士たちは鎧をガチャガチャ鳴らしながらフォークダンスを試みる。
庭園はたちまち賑やかなダンスホールと化した。
ケーキはダンスの合間に、レイナへ話しかけた。
「レイナ様、9歳のお誕生日おめでとうございます!去年は歌いましたが、今年は体を動かしたくて。でも、踊り終えたら、ぜひ私たちを食べてくださいね。ダンスで少し疲れましたが、それでもとっても美味しいですよ!」
レイナは笑いながら答えた。
「あなたのダンスは素晴らしいけど、また食べるのはちょっと気が引けるわ」
「どうぞお構いなく!」
ケーキは陽気に返し、最後のダンスを始めた。
「私たちは食べられるために生まれたんです。踊る機会をもらえただけで幸せです。さあ、ロウソクを吹き消してください。9本全部に火がついたままなら、私たちが踊りながら燃えちゃうかもしれません!」
レイナが深く息を吸い、ロウソクの火をふーっと吹き消すと、ケーキはピンと伸びた最後のポーズを決め、皆に向かってお辞儀をした。その瞬間、ケーキの足はぱっと消え、普通の(しかしとても美味しそうな)ケーキに戻った。
やがて夜空に花火が打ち上がり、誕生日のクライマックスを華やかに飾った。
その後、ケーキは皆に振る舞われた。
噂によると、それを食べた人々はその後一週間、自然と踊りたい衝動に駆られ、歩くときも知らずにリズミカルなステップを踏んでしまうという「副作用」が出るらしい。
王宮の廊下で突然タップダンスを始める大臣を見て、皆が笑い転げた。
こうして、聖女レイナの9歳の誕生日は、王国史上最も躍動的で、最も甘く、最もダンスに満ちた一日として、楽しく記憶に刻まれたのだった。




