第15話 聖女レイナ7歳編 おへやそうじ、ぴかぴかおまじない
「ねえ、おじいちゃん王様」
ある朝、レイナはアルドリック三世の書斎に飛び込んできた。
彼女の金色の巻き毛は少し長くなり、小さな王冠(おもちゃのものではなく、本物の小さな宝石が散りばめられたもの)が走った勢いで少し少し斜めに乗っていた。
「今日はね、新しい『おまじない』を考えたの!」
王は書類から顔を上げ、目を細めた。
「ほう、どんなものかな?」
レイナは得意げに胸を張った。
「『おへやそうじ、ぴかぴかおまじない』! ママがお掃除してるのを見て、レイナもやりたいって思ったの」
その日の午後、レイナは宮廷魔術師長マルコムの研究室を訪れた。部屋はいつものように、積み重ねられた古い巻物と実験器具で散らかっていた。
「マルコムおじいちゃん、おへやがごちゃごちゃだよ!」
マルコムはため息をついた。
「レイナよ、これは『創造的混乱』というものだ」
「レイナがきれいにする!」
レイナは両手を広げ、かつて瘴気を浄化した時と同じような真剣な表情を浮かべた。
しかし今度は、彼女の口から出た言葉はより洗練されていた。
「ちらかったもの、みんないいこ、もとのばしょにかえろ〜!ほこりくんはおやすみなさい、きんいろひかって、ぴかぴか〜!」
彼女の手から金色の小さな光の粒が飛び出し、部屋中に散らばった。
すると驚くべきことに、巻物は棚に整然と戻り、ガラス器具は洗われて輝き、床のほこりは消えていった。
マルコムは目を丸くした。
「こ、これは……整理魔法の応用か!?」
レイナはにっこり笑った。
「うん! でも一番大事なのはね」
彼女はマルコムの長い白ひげをそっと触れながら言った。
「使ったあとは、おかたづけしないと、またごちゃごちゃになっちゃうんだよ。魔法だけじゃだめなの」
老魔術師長はしばらく言葉を失っていたが、やがて深くうなずいた。
「……もっともな意見だ。まったくその通りだな、レイナよ」
マルコムは立ち上がり、不思議と軽くなった足取りで、整理された本棚の前へ歩いていった。
「では、この『創造的混乱』を少しだけ『創造的整頓』に変えるとしよう。次に君が来る時までにね」
レイナの笑顔が、金色の光の粒よりも輝いた。




