第11話 聖女レイナ6歳編 笑顔の連鎖
王城の中庭は色とりどりの旗や花で飾られ、3段のケーキがどーんと置かれた。
一番上には、イチゴが山のように載っている。
レイナは新しい虹色のドレスを着て、トーマスとエマの手を繋ぎながらやって来た。
「レイナ様、お誕生日おめでとうございます!」
城の住民も町の人々も集まり、一斉に拍手を送る。
王が前に進み出て、静かに言った。
「今日は、レイナの6歳の誕生日だ。だが、私はここで改めて気づかされた。この王国が笑顔で満ちているのは、レイナが笑顔を“くれた”からではなく、彼女が私たちの中に元からあった笑顔を“引き出してくれた”からだ」
少し間を置き、王はにっこりとした。
「だから、このケーキも、城の中で食べるだけではもったいない。一段はここで、一段は町の広場で、一段は遠くの村へ届けよう。笑顔は、分ければ分けるほど増えるのだから」
人々から歓声が上がる。
レイナは王のひげをつんつんと触りながら、小声で言った。
「おじいちゃん王様、それ、レイナが言ったことだよ」
「そうだな……では、その言葉の特許料として、レイナのケーキのイチゴを、さらに10個追加しよう」
「やったー! でも、その10個は、パパとママで分けるね」
レイナが言うと、後ろに立っていた2人が、微笑んだ。
中庭では、綱渡りの大道芸人がバランスを崩しそうになり、見ていたレイナが「あっ!」と声を上げると、芸人がわざとらしくよろめき、観客の笑いを誘った。
王はバルコニーからその光景を見下ろし、ウィリアム王子とクリス王子に言った。
「覚えておきなさい。王国で一番大切な資源は、金でも小麦でもない。あの笑い声だ」
クリスが頷く。
「レイナが来てから、みんなよく笑うようになりました」
「彼女は特別な力を持っている。でも、その力は人々の中に元からあったものを目覚めさせる力なのだ」て王が言った。
その時、レイナがバルコニーに駆け上ってきた。頬にはクリームがついている。
「おじいちゃん王様!見て、ケーキもらったよ!三段目のお裾分け!」
彼女が差し出した皿には、小さなケーキが一切れ乗っていた。それは、城の門で配られた三段目から、また分けられた一切れだった。
「大道芸人さんがくれたの!『笑顔のお返し』だって!」
王はそのケーキを受け取り、3分の1に割って、ウィリアムとクリスで分け合った。
甘くて、少し可笑しくて、そしてなぜか温かい。
窓の外から、また笑い声が風に乗ってやってきた。それは、たった一人の小さな少女から始まって、王国中に広がっていく波紋のようなものだった。
そして王は思った。
この子が6歳になろうが、16歳になろうが、この真理は変わらないだろう。
むしろ、彼女が成長するにつれ、この王国はどんなに明るく、笑いに満ちた場所になることか。
月明かりの下、笑い声はまだまだ止みそうになかった。




