第6章-7-『あれ、もしかして…』
おはようございます、ディラン伯爵家の三男 ヘンリーです。昨日は…別邸でお腹いっぱいご飯を食べて、煮込まれてトロトロになったお肉美味しかったな…また食べたいな…、ええっと、その後 本邸のこっちのティム兄様のお見舞いをして…、ずっと寝たきりだったティム兄様が少し元気になったの。次期当主様は本当に、すっごく喜んでたよ。勿論、完治した訳じゃ無いから、まだ薬丸は必要だし、僕らのティム兄様が様子を診ながら薬丸の量を調整するんだって。
それで、ええっと…、夜遅くなってからルーカス王子殿下がお忍びでやって来たみたいなんだけど…僕は起きてようと思ったんだよ?会議に参加出来ないとはいえ、僕も『魔女たん救出部隊』の一員だしね?だけど、お腹いっぱいでテオ兄様にお風呂入れられて、フカフカのベッドに寝かされたら起きてるの難しいと思わない?もう五分も経たずに夢の中だったよ…、それはそれは 朝までぐっすりと…。
ちょこんとティム兄様のお膝に座って、甘いトロトロのスクランブルエッグと、カリカリに焼けたベーコンに温かいフカフカの白パン。サラダは摘みたてなのかキラキラしてるし、そこにニンジンドレッシングをかけると更に美味しくなるんだよ。他にも名前の分からない美味しそうな料理がいっぱい並んでた!なんか、僕ら来たのが急だったのもあるし、しばらく子供用のご飯を作って無かったからか、大人用のガッツリとした朝食が用意されてたの。当然、僕とティム兄様はいっぱい残しちゃって…テオ兄様とジェーちゃが少し助けてくれたけど、本当に量が多かったんだよね。
「すまん、残してくれて良いから」って次期当主様が言ってくれて、申し訳ないけど僕らは結構残しちゃったんだ。でも凄ーく美味しかったんだよ!味も大人向けなのかも!いつもより濃いかなって思ったから。次期当主様のお皿を見ると、どれも綺麗に無くなってた。大人って凄いな…。
それで朝食が終わった後、僕らは支度をして王宮へ行く事になったの。昨夜、皆で話し合った結果、狂乱の魔術師の居場所を見つけるのに、まずは王宮の中から調べようって事になったみたい。でもティム兄様は こっちのティム兄様の具合を診るのを頼まれて、残る事になったの。本当は僕もティム兄様と残るように言われたんだけど、ジェーちゃが心配だから駄々こねて着いてきちゃった!だって、こっちのジェームズ王子殿下は、歴史書の通りみたいだし、鉢合わせちゃったら大変でしょ? まあ、僕が居たからって何か出来る訳じゃないんだけどさ…。
そうしてドキドキしながら王城へ入ったんだけど、国王陛下とか王子殿下って言うのは、凄ーく偉い人達だから お城に入ったからってすぐに会える訳じゃないんだよね。なんか、僕らの世界では 頻繁に会ってたから…感覚がおかしくなるよね。へへ…。そんなに心配する事も無かったかな…ってジェーちゃにだっこされながらキョロキョロしてたら、テオ兄様とジェーちゃは応接室へ呼ばれちゃったの。僕はお城のメイドさんに預けられて、お庭でお花でも見て待ってなさいって言われた。…僕も話し合いに参加したいのにぃ。
「さあ、お坊ちゃま。こちらで少し私とお待ちしていましょうねぇ」
ベテランって感じのニコニコしたメイドさんで優しそうで安心した。だってなんか、お城に入ってから皆、ピリピリしてるんだもん。こんな中で毎日暮らしてたら情緒不安定になっちゃうよね。ここでお花を見ながら、少しゆっくりしような…と思ってたら、後ろから近づいて来る人が居た。
「おやおや、随分、可愛らしいお客様ですね」
聞き覚えのある声に振り返ると、そこには良く知ったお顔が。
(あ!ファーニーさんだ!)
こっちのファーニーさんも見た目は僕らの世界のファーニーさんと変わらない。ニコニコと話しかけてくる。
「ファーニー様、こちらはディラン伯爵家の縁戚の方でございます。ディラン伯爵家のテオドール様がおいでになっておりまして」
メイドさんが深々とお辞儀をして僕を紹介してくれる。
「へぇ、テオドールさんが。城内に来るのは久々ですね、それも親戚の子供を連れてだなんて、全く 珍しい」
少し驚いたお顔でファーニーさんが言う。やっぱり、こっちの次期当主様は忙しくてお城にあまり来ないのかもね。最近なんか、色々あったせいだけど、僕らお城に住んでたもんね。ハハハ…。
「こんにちわ、お坊ちゃま。私はファーニーと申します。お名前を頂戴しても宜しいですかな?」
僕の目線まで腰を折って挨拶してくれるファーニーさん。やっぱりこっちのファーニーさんも優しいね!ペコリとお辞儀して自己紹介する僕。
「こんにちわ、”リリー”です」
「リリー、いい名前ですね」
この『リリー』は勿論、うそっこの名前だよ!本当の名前を名乗る訳にはいかないからね。ジェーちゃは前使ってた『アムス』で、テオ兄様は『テール』だよ!
「それではリリー様、宜しければこの私と共にお散歩などいかがですか?」
ファーニーさんが手を差し出してくれる。ここで待ってなきゃなんだけど…まだ時間はかかるだろうし、折角だからお散歩に連れてって貰おうかな?そうして僕はファーニーさんとお手てを繋いで花壇の周りを歩き出した。メイドさんは後から着いてきてくれる。
「美しいでしょう?この庭園は、王城の中でも特に力を入れているんですよ。こうして可愛いお客様に楽しんで貰えるように」
「はい!」
庭園て言うか、お花畑みたいな広さがあって、色とりどりのお花が咲いている。氷で出来たお花もあるし、七色に色が変わるお花もある。珍しいのは真っ白な蝶々みたいなお花。あんなお花見た事ないな…、ノアだった頃にも記憶にない。うーん、ノアの頃は漫画やゲームばっかりでお花に興味無かったせいもあるかも…。なんのお花か気になるな…と思い、鑑定を使おうとしたの。ヘンリーの月魔法はもう使えないけど、ノアの闇魔法はバリバリ使えるからね、ノアだった頃の闇魔法、それの祝福『鑑定』。僕はヘンリーとして目覚めてから アチコチ怪我してて、お口も上手く動かなかったから(今もあんまり変わってないけど…)無詠唱で魔法を発動させるのが得意になっちゃってるんだよね。普通の人は詠唱しないと魔法を発動出来ない、昨日テオ兄様から聞いた話ではこっちのルーカス王子殿下も無詠唱で魔法を使えないみたいだし。
だから、本当に偶然だったの。
『リアム・オーガスト
秋節の十日生まれ 二十三歳
木魔法 ステラ5 / 祝福有り』
エッッッ………………。お花に使うつもりだった祝福の『鑑定』、手を繋いでたせいか それはファーニーさんを鑑定してしまったみたい…。事態が飲み込めなくて、頭が真っ白になる僕。どういう事?ファーニーさんて、ファーニーさんじゃ無かったの?だって、僕らの世界のファーニーさんはファーニーさんだったよ????
「リリー様、どうかしましたか?」
ピクリとも動かなくなった僕を心配そうに覗き込むファーニーさん…リアムさん…?しかも木魔法使いでステラ5…?それって、めっちゃ凄いんじゃ………、まさか、………狂乱の魔術師って…………。




