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095 転移8日目の残る報告

「まず、最初に前提条件の共有だ! 知っているとおりマップは砦で、城壁に囲まれている! 城壁はところどころ崩れているが、ボスやウォーロードの周辺は綺麗だ! ついでに瓦礫の山などの障害物もない! そして、ウォーロードとボスはその場から動きたがらない!」


「そんなのはわかってる。だから苦戦してんだろ。お前の作戦とやらを早く言ってみろ」


 霧島はテーブルを指でトントン叩く。


「単純だ! まず、向かって左側、すなわちウォーロード方面の城壁に梶原を配置する!」


「「「は?」」」


 霧島隊の野郎三人が同時に言った。

 梶原本人も驚いている。


「城壁に配置する方法が不明か? たしかに階段がないものな! だが、諸君には宮坂の壁がある! それを階段代わりに使えば、梶原を城壁に上げられるだろう!」


「で、俺を城壁に上げてどうするわけ?」と梶原。


「いい質問だ! まずは安全な場所で梶原を城壁に配置し、宮坂のクールタイムが明けるのを待つ! 次に、梶原以外の三人が向かって右側、すなわちサイクロプス方面から敵の注意を引く! あくまでも注意を引くだけだ! 突っ込みはしない! 敵の射程ギリギリで踏みとどまる! 火球は避けられるなら避けろ! 無理なら宮坂の壁で防げ!」


「走らなくていいなら、敵の攻撃を防ぐのは簡単だ」


 宮坂が真剣な表情で話を聞く。


「スミレのスキルは緊急時の保険だ! 君たち三人が注意を引いている間に、梶原が城壁を走ってウォーロードに近づき、死角から風刃で奇襲する! ヒットアンドアウェイでいこう! 倒せたかどうかにかかわらず、風刃を全部ぶっ込んだらマッハで下がれ! 城壁を走るんだ!」


「なるほど、梶原の遠距離攻撃でウォーロードを崩すわけね」とリカ。


「いかにも! 梶原のスキルは精密射撃が可能なので、有効活用しないのはもったいない! 懸念点があるとしたら、怒り狂った敵が梶原に反撃することだが、そこはスミレのスキルが控えているので安心だろう! 敵の意識が梶原に集中しているなら、攻めの好機とも言える!」


「梶原が頑張ってる間、俺たちはどうすんだよ」


 霧島が腕を組む。


「さっきも言ったように敵の注意を引く! 敵が梶原を意識し始めたら、その隙を突いて攻めに転じる! ……が、無理には攻めない! 常に片方が注意を引き、もう片方が削るスタイルでじわじわ追い込めばいいだろう! 敵に逃げ場はない!」


 俺は説明を終えると「いかがかな?」と霧島を見た。


「……宮坂の壁を足場にして、梶原を城壁に上げるのは考えていなかった。悪くねえ」


 霧島の俺に対する「悪くない」は、「非常にいい」の意味だ。


「普通、思いつかないでしょ。吉岡の頭の中、マジでどうなってんの」


 梶原が苦笑している。


「……吉岡くんの発想、変。でも、面白い」


 ミオがくすりと笑う。

 彼女が俺に笑いかけるたび、戸塚が何とも言えない顔をした。


「俺は現地を見たことがないのでわからないが、吉岡くんの今の案は実行できるのか?」


 相良が霧島に確認する。


「たぶん可能だ。いや、まず可能だ。ただ、吉岡の案にも問題が一つある」


「「問題?」」


 俺と相良の声が被った。


「城壁の耐久度が不明だ。ウォーロードやサイクロプスが梶原を攻撃して、それが城壁に当たった場合にどうなるかがわからない。スミレのスキルで梶原に結界を張ったとしても、城壁の上から空堀に落下したら怪我をするはずだ」


「いいところに目を付けたな、霧島! その懸念は正しいぞ! そこは事前の下調べで乗り切るか、ぶっつけ本番で対処する部分だな! 安心しろ、梶原! 城壁が崩れて落ちたとしても死にはしない! 足か腕、またはその両方を骨折するだけだ! 霧島隊らしく治療所でポンさ!」


 ミオが「治療所でポン」と復唱し、「変な言葉」と笑う。


「吉岡、そこはビシッとした安全策用意してないのかよ」


 呆れる梶原に、俺は「何を言っている!」と開き直った。


「ディテールはアドリブでどうにかするのが冒険者だろ!」


「私たち戸塚隊とは冒険者像が全然違うね」


 カホが笑いながら言うと、佐伯も「ですね」と頬を緩めた。


「吉岡くんの発想力には驚かされる。それはそうと、吉岡くん、霧島の案には反対ということでいいな?」


 相良の確認に対し、俺は「おう!」と頷いた。


「俺の案のほうが優れているから反対だ!」


「仮にお前の案がなかった場合、お前は賛成してたのかよ」


 霧島が俺を睨む。


「もちろん賛成だ! しかしながら、俺も佐伯さんと同じく、君の案は詰めが甘いと感じた! 俺ならみんなでウォーロードに突撃なんて戦い方はしないだろう! スミレにはサイクロプスの動きを監視させるし、梶原にサイクロプスを狙わせる! ウォーロードに突っ込むのは君と宮坂だけで十分だ!」


「……明日はお前の案も含めて検討してみる」


 霧島は「ふん」と鼻を鳴らした。


「では、吉岡くんも反対ということで、当事者4人を除いた14人の結果は、ちょうど賛成と反対が7人ずつとなりました」


 最終的な賛成・反対は以下の通りだ。


---------------------------

【賛成】

相良、リカ、黒瀬、サキ、ユズ、早川、三船


【反対】

カホ、佐伯、戸塚、ミオ、吉岡、アヤ、ナナ

---------------------------


「思ったより割れたわね」とリカ。


「だが、メンツに意外性は少ない。意外だったのは吉岡、アヤ、三船の三人くらいだろう」


 黒瀬が言うと、相良が「結果だけ見るとそうだな」と言い、さらに続けた。


「理由まで考慮すると、佐伯が迷っていたことも意外だ」


「相良さんが賛成したのと同じです。それだけ霧島くんの案には試す価値を感じました」


 霧島はまたしても「ふん」と鼻を鳴らす。

 その口元には、かすかに笑みが浮かんでいた。


「長くなったが、残りの隊も報告しよう。俺の隊、サキ隊、戸塚隊の順で進めよう」


 時間が押しているからなのか、相良が巻きで進め始めた。


「俺の隊は第2と第4を全8だ。第4を攻略したあとに余裕があったから第2もこなした」


「黒瀬との連携は本当にいい感じだわ。第4のボスもあっさり倒せたもの」


 リカが満足げに言う。

 黒瀬も腕を組んだまま頷いた。


「次は私たちねー、さっきから眠そうな顔のユズ隊員、どうぞ!」


 サキに指名されて、ユズはハッとした。

 半開きの口から垂れかかっていたよだれを慌てて吸い込む。


「ね、寝てないもん!」


「私は眠そうって言ったんだよ」


「そうなの!? で、私がどうしたの?」


「サキ隊の報告、よろしく! エースでしょ?」


 ユズは「うん!」と大きく頷いた。

 目をパチッと開いて立ち上がる。


「私たちは第1全8を2回と第4全8! 相良隊と同じで最初に第4を攻略して、それから第1を走った! ユズ隊員は今日も大活躍! サキも頑張ったし、早川とアヤも頑張った! でもエースはユズ隊員!」


「相良の話は聞いていたんだ?」


 サキがからかうように笑う。


「聞いてるよ! ユズ隊員は器用なのです!」


 ユズは謎のドヤ顔を浮かべながら、再び椅子に座った。

 それを確認してから、戸塚が言った。


「俺たちは第2、第3、第4の通常種5種を倒した。危険個体とボスは避けている。第2から始めて、時間の限り階層を上げた」


 戸塚は報告を終えると、ミオに向かって言った。


「第5も通常種ならいけると思う」


「……うん。でも、第5はまだ行かないほうがいい」


 ミオは落ち着いた声で返した。

 戸塚は何も言わず、静かに目を伏せる。

 場が沈黙に包まれるが、それを許さない男がいた。


「じゃあ、佐伯さん! 恒例の【一人当たりの獲得量】と【ランキング】をお願いします! 霧島隊が下手を打ったおかげで、俺の返り咲きがあるかもしれませんので!」


 そう、俺だ。

 重い空気などなんのその、絶好調である。


「俺たちがちょっと不調だったからって調子に乗りやがってよ」


 霧島がトゲのある言葉を吐く。

 しかし、言葉に反して機嫌は良さそうだ。

 自分の案が存外にも高評価だったからだろう。


「わかりました。少々お待ちください」


 佐伯は驚異的な速度でペンを走らせた。

 その姿は、謎のキーボードを叩くギルドの受付嬢みたいだ。


「できました」


 佐伯が二つのデータをまとめた。


「確認の時間だあああああああ!!!!!」


 俺は立ち上がり、佐伯のもとへ向かう。

 他のメンバーも、続々と集まってきた。

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【ノクターン】異世界ゆるっとサバイバル生活
~学校の皆と異世界の無人島に転移したけど俺だけ楽勝です~
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異世界ゆるっとサバイバル生活 第1巻 異世界ゆるっとサバイバル生活 第2巻 異世界ゆるっとサバイバル生活 第3巻
異世界ゆるっとサバイバル生活 第4巻 異世界ゆるっとサバイバル生活 第5巻 異世界ゆるっとサバイバル生活 第6巻
『成り上がり英雄の無人島奇譚』
成り上がり英雄の無人島奇譚 第1巻 成り上がり英雄の無人島奇譚 第2巻 成り上がり英雄の無人島奇譚 第3巻
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