088 ミオの提案
ギルドに戻った俺たちは、まず受付で第1階層の精算を済ませた。
第1階層しか討伐依頼を受けていなかったからだ。
今回もエリナではなく、知らない受付嬢が担当だった。
---------------------------
【依頼報酬ログ】
・[通常]青芽ネリュム:180G
・[通常]草角ラビット:200G
・[通常]青羽コッコ:220G
・[通常]若葉ウルフ:240G
・[通常]土くれゴブリン:260G
・[危険]大牙ボア:300G
・[危険]牙群れアルファウルフ:400G
・[ボス]草冠トロル:700G
総額:2,500G
所持金:3,080G → 5,580G
---------------------------
まずは依頼報酬を受け取る。
---------------------------
【魔石換金ログ】
・[通常]青芽ネリュム:10G×6個=60G
・[通常]草角ラビット:10G×5個=50G
・[通常]青羽コッコ:10G×4個=40G
・[通常]若葉ウルフ:20G×4個=80G
・[通常]土くれゴブリン:20G×3個=60G
・[危険]大牙ボア:50G×1個=50G
・[危険]牙群れアルファウルフ:70G×1個=70G
・[ボス]草冠トロル:300G×1個=300G
総額:710G
分配人数:2人
分配後:355G / 残余:0G
所持金:5,580G → 5,935G
---------------------------
次に魔石の換金を済ませた。
「続けて新しい討伐依頼を受けたいんだけど、いいかな?」
「かしこまりました。どの階層にしますか?」
答える前に、俺は掛け時計を確認する。
14時20分だった。
早足で戻ったが、それでもかなり遅い。
(第2と第3の両方をクリアするのは、時間的に難しいな。第2だけにするか)
そう思い、「第2」と言ったところで、ミオが俺の服を引っ張った。
「……第4か第5がいい」
「え?」
驚いたことに、ミオが上の階層を指名してきた。
「かまわないけど、どっちもミオは未経験じゃないのか?」
「……うん。だから、吉岡くんと行きたい。できれば第5階層」
「正気か? 第5の難易度は第4とは桁違いだぞ。レベルは大差ないが、難易度は全然違う」
「わかってる。しかも、私はレベル10。危険個体やボスと戦う時はレベル差補正が発生する」
「そこまで理解しているなら、もう少し詳しく理由を教えてもらえるかい?」
意外なことに、イケイケドンドンの俺がブレーキを踏んでいた。
「……吉岡隊や霧島隊が見てる最前線の世界を、私も見てみたい。ユウゴといる時には、見られない景色だから。ボスまで行けなくてもいい」
ミオの言葉には力強さがあった。
その場のノリで言っているわけではない。
危険を承知しながら、自分の意思で行きたいと言っている。
「よかろう! ならば第5階層だ! 撤退の判断は俺がする! 俺が決めたら絶対に撤退だ! 俺は君を絶対に傷つけたくないから、安全第一で行く! よろしいかな?」
「わかった。それで、かまわない」
「決まりだ! 受付嬢のお姉さん、第5階層の討伐依頼をよこしてくれ!」
「かしこまりました」
受付嬢が謎のキーボードをカタカタと叩く。
---------------------------
・[通常] Lv.11 赤砂スライム:6体(290G)
・[通常] Lv.12 砦ラット:5体(330G)
・[通常] Lv.13 錆剣ゴブリン:4体(360G)
・[通常] Lv.14 赤土ハウンド:4体(390G)
・[通常] Lv.15 石盾コボルト:3体(420G)
・[危険] Lv.15 破城ボア:1体(490G)
・[危険] Lv.16 赤砦ウォーロード:1体(650G)
・[ボス] Lv.17 赤砦サイクロプス:1体(1,140G)
---------------------------
「さあ、行こうか、ミオ。二人で敵を蹴散らすぞ」
「……行く」
俺とミオは万全の態勢で第5階層に向かった。
◇
転移直後の第5階層は、昨日と同じで静かだった。
遠目にはウォーロードとサイクロプスが見える。
「……ここが、第5階層」
「そうだ。見ての通り、狩場のサイズはこれまでで最も小さい。全力で走れば20分足らずで往復できるだろう。だが、その程度の距離に、全ての討伐対象が集まっている」
俺は〈デコイ〉を発動し、背負い袋をその場に置いた。
「ミオ、進む前に作戦を説明する。魔石は無理に拾わなくていい。拾い損ねたものは、後で太郎たちに拾わせる」
「わかった」
「陣形は俺が前で、君が後ろだ。【サイレンス・ドーム】は、俺が指示した時に発動すること。もしくは、ウォーロードが範囲内に入ったら発動すること」
「……ボスじゃなくて、ウォーロード?」
「そうだ。ボスは投石だが、ウォーロードは火球を飛ばしてくる。第3階層のボスみたいに、君の【サイレンス・ドーム】で妨害できるかもしれない。試す価値はある」
ミオは真剣な目で頷いた。
「戦闘は基本的に俺が行うが、君も一緒に戦いたいって顔をしている。俺が派手に立ち回って敵を引きつけるから、君は側面から安全に仕留めてほしい。できるか?」
「たぶん、できる……違う。たぶんじゃない。できる」
「よろしい! 作戦は以上だ! 狩りを始めるとしよう! 行け! 太郎!」
俺はまず、太郎を単独で突っ込ませた。
昨日と同じ配置なら、空堀からラットが飛び出てくるはずだ。
しかし、敵は反応しなかった。
太郎は門をくぐり、中に入っていく。
さらに少し進ませたが、敵は襲ってこない。
「待ち伏せているのは明らかだが、場所がわからないな。念のために空堀を確認してから行こう」
「うん」
俺たちは慎重に空堀へ近づき、堀に敵が潜んでいないか目視で確認する。
「右側は安全だ。敵の姿は見当たらない」
「左側も大丈夫」
「敵は中だな。陣形を整えてから入るぞ」
再び俺が前衛、ミオが後衛の陣形に戻す。
次郎と三郎は、ミオの両サイド……厳密には斜め後ろに配置した。
「中で待ち伏せられるほうが面倒くさいな」
周囲には倒壊した建物や瓦礫、赤土の山が点在しており、地形が入り組んでいる。
この階層の通常種は全て小型の魔物なので、どこに隠れていてもおかしくない。
警戒しながら少しずつ進み、太郎のもとへ向かう。
一歩、また一歩と、太郎との距離が縮まっていく。
太郎は棒立ちのまま動かない。
「ここでストップだ。そろそろ仕掛けてみよう」
太郎との距離を約5m残したところで、俺は立ち止まった。
「何をするの?」
「まずは左右の確認だ」
俺は次郎と三郎を左右に走らせた。
視界を遮る瓦礫の山などを迂回させて、元の位置まで戻らせる。
もし敵が左右に伏せていれば、この時点で反応するだろう。
「「…………」」
次郎と三郎は、何ら問題なく帰ってきた。
少なくとも左右に敵が伏せていないのは確実だろう。
ここで〈デコイ〉の召喚が解除されたので、即座に再召喚する。
「左右の安全は確認できた。次は前方だ。ミオ、太郎の右斜め前に【サイレンス・ドーム】を設置してもらえるか? あの倒壊した建物と赤土の山が連なっている場所だ。それに合わせて、俺は太郎を一気に真っ直ぐ前に走らせる。これだけ手を打てば、どこかしらに反応があるはずだ」
「わかった」
ミオがスキルを発動するため前進する。
それに合わせて俺も進み、太郎の横に立った。
「……スキル、使う」
「いいぞ、やれ!」
俺は太郎を真っ直ぐ走らせた。
同時に、ミオは右斜め前の怪しい場所に【サイレンス・ドーム】を設置する。
「ワォオオオン!」
「ゴブーッ!」
案の定、敵の反応があった。
鳴き声を響かせたのは、左斜め前に伏せていたハウンドとゴブリンだ。
数はそれぞれ2体ずつで、そいつらは太郎に釣られた。
一方、ミオが設置したドームにも反応があった。
残りのハウンドやゴブリン、それにラットが飛び出してきたのだ。
「ようやく現れたな! 戦闘開始だ!」




