084 補助魔導具
女性店員は営業スマイルのまま答えた。
「複数の補助魔導具を装備しても、効果の増幅などはございません。効果が適用されるのは、最もランクの高い補助魔導具1点のみとなっております。ですが、中にはアクセサリーとして低ランクの補助魔導具をお求めになる方もおられます」
「なるほど。どれもオシャレだもんな。アクセサリーとして買うというのは理解できる」
話していると、スミレが「お待たせしました」と近づいてきた。
「もう決まったのか? 思ったより早かったな!」
「見た目だけで選べるため、直感的に気に入ったものを選びました」
そう言ってスミレが持ってきたのはブレスレットだ。
色はターコイズブルーで派手だが、かなり細いので下品ではない。
普通にオシャレだ。
「いい感じじゃないか! よし、これにしよう!」
俺は迷わず購入した。
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【支払ログ】
装備:[E]ブレスレット
支出:9,600G
所持金:13,107G → 3,507G
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さっそく左手首に装着して、スミレに「どうかな?」と見せる。
「すごく似合っています」
「だよな! さすがスミレだ! センスあるよ!」
「喜んでいただけてホッとしました」
声を弾ませるスミレを見て、俺はふと気になった。
ステータスの表示はどうなるのだろうか。
先ほど確認した時、補助魔導具の項目はなかった。
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【名前】吉岡
【レベル】16 EXP:1,113/1,290
【所持金】3,507ゴールド
【ユニークスキル】オール・レジェンド(P)
【技能①】[F]スター・ストライク(レジェンド)
【技能②】[E]バースト・ステップ(レジェンド)
【技能③】[E]デコイ(レジェンド)
【武器】[E]吉岡デスサイズ(レジェンド)
【防具】[F]ブルファムレザーの軽装備
【補助魔導具】[E]ブレスレット
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改めて確認すると、補助魔導具が追加されていた。
防具と同じで、武器ではないため習熟度は存在しないようだ。
「よーし、次はスミレの武器を買いに行こう! Eランクに更新だ!」
「はい」
「せっかくだから手をつなごう!」
「よろしいのですか?」
そう言いつつ、スミレは右手を俺に近づけていた。
「当たり前だろ! だって今日は君の日だからな! 厳密には明日、ギルドでミオと合流するまでは君の日だ! たっぷりイチャイチャしようぜ!」
「はい。吉岡さんが私に戻ってきたくなるよう、たっぷり甘えさせていただきます」
スミレは嬉しそうに微笑んだ。
◇
スミレの武器は片手用の短い槍+小盾のセットだ。
以前もそうだったが、今回も購入までに時間を要した。
「もしかしたら数日で買い換えるかもしれないのに、お待たせしてすみません」
「いいさ。俺だって教本と補助魔導具でかなり待たせた! お互い様だ!」
「そう言っていただけると、気が楽になります」
何軒か店を回った後、スミレは新たなセット武器を購入した。
槍と小盾の組み合わせも、見た目も前のセットに似ている。
ただし、装飾は前より凝っていた。
白を基調とした柄に加え、刃にもよくわからない模様が入っている。
「いかがでしょうか?」
「うん、前より少しオシャレになった!」
「あはは。これでもEランクの武器ですので、明日は今日よりも活躍できそうです」
「いいことだ! なんといっても明日の君は霧島隊だからな! このレジェンド吉岡が一緒にいない! 頭数は増えたのに、今日よりも大変になるだろう! 怪我だけはしないようにな!」
「はい、気をつけます」
俺たちは手をつないで歩き、そのまま一般個室宿に入る。
前にスミレと二人で泊まった宿屋だ。
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【支払ログ】
宿泊:一般個室
支出:1,400G
所持金:3,507G → 2,107G
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いつも通り折半で部屋を借りると、そのまま魅惑的な夜を過ごした。
この日も「追い風」だけが部屋に響き、「ドッカンボンバー」は発動しなかった。
◇
転移8日目――。
朝からスミレとたっぷりイチャイチャした後、入ったことのない店で朝食を堪能した。
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【支払ログ】
食事:シンプルセット
支出:350G
所持金:2,107G → 1,757G
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「よーし! 今日は当たりだ!」
「一昨日のお肉料理はスパイスがすごかったですからね……」
今日の朝食はバゲットサンドとカフェオレだ。
バゲットに挟む具を自分で選ぶという、変わった形式になっていた。
俺は細かく刻んだ牛肉とタマネギ、レタスを挟んだ。
「吉岡さん、私の首の跡……昨日より薄れましたか?」
スミレが口元を隠すようにサンドを食べる。
彼女のパンにはベーコン、レタス、トマトが挟まっていた。
「いや、むしろ昨日より派手だぞ。なぜなら今朝、イチャついている時にキスマークを更新しておいた!」
「え、本当ですか? 気づきませんでした……。そんなに目立ちますか?」
スミレの顔が真っ赤に染まる。
「おう! めちゃくちゃ目立つ!」
本当だ。
スミレの首筋には、誰が見てもわかるほどのキスマークがあった。
しかも、髪や服で隠しきれない位置にべったり付いている。
「もう……。知りませんよ、宮坂くんが怒っても」
「暴走する宮坂を見て楽しんでいる人間の言うセリフとは思えないぜ!」
俺は「悪い子め!」と笑った。
◇
食事が終わり、早歩きでギルドへ向かった。
到着したのは9時50分頃。
昨日よりも5分ほど早いので、自分を褒めたくなった。
「遅い。もっと早くこいよ」
到着するなり不機嫌そうな声が飛んできた。
霧島だ。
鋼鉄まみれの重装備に身を包み、ロングアックスを背中に担いでいる。
背負い袋は左の肩に掛けていた。
霧島の傍には、梶原、宮坂、ミオの姿もあった。
霧島隊の三人は防具を、ミオは武器をEランクに更新している。
梶原は退屈そうに周囲を眺め、宮坂はスミレの顔を凝視していた。
「……おはよう、吉岡くん。そのブレスレット、似合ってる」
ミオが真っ直ぐ俺を見つめる。
大柄な霧島と並ぶと、なおさら小さく見えた。
武器は細剣で、防具は軽装備だ。
「おはよう、ミオ! これはスミレが選んでくれた補助魔導具だ! それはさておき、今日はゆるっと楽しむぞー!」
俺は素早くミオの背後に回り込むと、彼女の右手首を掴んで「おー!」と掲げた。
ミオは大して表情を変えずに受け入れる。
「……朝から元気」
「もう昼前だろ。スミレ、さっさと出発するぞ」
霧島の視線が少し動いた。
スミレの首を見て、キスマークに気づいたのだろう。
しかし、そのことには触れなかった。
「わかりました――吉岡さん、行ってきますね」
「おうよ! 第4を全8してから第5全8だっけ? 頑張ってくれ!」
スミレは頷くと、ミオに一礼してから進もうとする。
「ではミオ、俺たちも第1階層に行くとしようか!」
「……うん。アユの串焼き、楽しみ」
ミオが小さく笑った。
「さて、エリにゃんの窓口はぁ……」
俺は素早く窓口を見渡すが、エリナの姿は見当たらない。
「仕方ない! 適当に空いている場所に並ぼう!」
「……あそこ、空いてる」
ミオが指したのは、霧島隊のいる列だった。
受付嬢が優秀なのか、列の進みが速い。
俺たちも並ばせてもらった。
霧島隊のすぐ後ろだ。
「奇遇だな、霧島! 同じ列だぞ!」
「お前らが俺たちの後ろを選んだんだろ」と霧島。
「空いているところを選んだら、目の前に君たちがいた! 運命であるな!」
「気持ちわりい。勝手に運命扱いすんな」
霧島は今日も変わらず俺を嫌っている。
実にいいことだ。
その後は何事もなく列が進み、受付を済ませて本日の狩りが始まる――ことはなかった。
「スミレ、その首……。昨日よりも……」
宮坂がスミレの首に気づいてしまったのだ。
隠しようがないので、気づくこと自体はかまわない。
しかし、今は真後ろに俺がいた。
霧島と梶原が振り返る。
俺たちの間にだけ、不穏な空気が漂っていた。




