082 転移8日目の編成
「霧島と梶原が認めた。スミレも承諾している。相良さんや佐伯さんだって筋が通っていると言ってくれた。何も問題はない。あったとしても、お前に認められる必要はないだろ」
宮坂が黒瀬に反論した。
驚いたことに、本当に衝撃的なのだが、宮坂が正しい。
「それは表向きの正しさの話だ」
「なんだよ、表向きって」
「お前は暴走する。前にスミレのことを考えていたせいで、佐伯の足下に壁を出して佐伯を吹っ飛ばしただろ」
「それは……スミレがいなかったからだ。明日はスミレが同じPTにいる。スミレのことを考えて迷惑をかけることはない」
「なら転移2日目はどうだ? 佐伯隊の一員として、俺、佐伯、ミオ、戸塚、スミレと第1階層に行った時だ。お前はスミレの前で格好つけようとして迷惑をかけただろ」
「あのときは初めての実戦だったんだ。ユニークスキルを上手く扱えなかったし、戦闘もよくわかってなかった。今は違う。訓練所にも行ってるし、戦闘経験だって積んだ。むしろ、俺が成長したところをスミレに見せるチャンスだ」
「それだ。お前は合理的なことを言っている振りをして、スミレのことしか考えていない。その調子なら、明日も迷惑をかけるはずだ。そうなってからでは遅い。反対する」
「お前の反対なんか知るかよ」
黒瀬の言い分にも理解できる部分はある。
しかし、ここまで聞いてもなお、宮坂が正しいと思った。
「黒瀬さん、お気持ちは嬉しいのですが、私は宮坂くんが正しいと思います」
「スミレ……」
黒瀬の瞳が揺らぐ。
「私は自分の意思で承諾しました。誰に強制されたわけでもありません。霧島さんや梶原くんも私の加入に賛同しています。そうである以上、黒瀬さんが強く反発するのは間違っていると思います」
「俺はただ……すまん、俺が間違っていたのかもしれない」
「かもしれないじゃねえよ。お前が間違ってたんだ」
「宮坂くんも、そういう言い方はしないでください」
勢いづいた宮坂だったが、スミレに注意されて撃沈した。
「今度こそ決まったな! 宮坂、黒瀬、君らのやり取りはうんざりだ! 俺のハーレムランド計画と何ら関係ない! そういうのは俺のいないところで勝手にやってくれ! 退屈すぎてメシを食い終わってしまった!」
俺はコップの水をグビッと飲み干した。
宮坂が何か文句を言っていたが、どうでもいいので無視する。
こうして、明日の編成が確定した。
以下の通りだ。
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【転移8日目の編成】
・吉岡隊:吉岡、ミオ
・霧島隊:霧島、梶原、宮坂、スミレ
・相良隊:相良、リカ、黒瀬、三船、ナナ
・サキ隊:サキ、早川、アヤ、ユズ
・戸塚隊:戸塚、佐伯、カホ
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「相良、編成云々は以上でいいかな!?」
「他に隊の移動希望などがなければ決定でいい」
相良が全員の顔を見る。
誰からも発言が出なかった。
「よーし、報告会終了だ! 金も貯まったし防具を新調しに行こっと! いや、新たな教本を買うか! そっちのほうが面白そうだ!」
俺が言うと、佐伯がハッとした。
「解散の前に、私から一つよろしいでしょうか?」
「どうした?」と相良。
「今日はどの隊も十分に稼ぎました。なので、多くの方がこれから装備を更新されると思います。念のために記録しておきたいので、どの装備を更新するのか教えていただけますか? 暫定という形でかまいません」
佐伯は手帳とペンを取り出した。
「俺、宮坂、梶原は防具をEランクにする予定だ」
霧島が真っ先に答えた。
宮坂が「スミレは?」とスミレを見る。
「私は……防具ではなく、武器をEランクに更新します」
「霧島隊はスミレさん以外の三人が防具、スミレさんが武器をEランクに更新ですね」
「サキ隊は私とユズが防具、アヤと早川は武器をEランクにする予定ー」
次にサキが言った。
その後も次々と申告があり、以下のように決まった。
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【武器をEランクに更新する者】
・スミレ、アヤ、早川、ミオ、相良隊全員、戸塚隊全員
【防具をEランクに更新する者】
・霧島、宮坂、梶原、ユズ、サキ
【未定】
・吉岡
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「未定は俺だけかよ! てか、ユズとサキって戦技を覚えて俺を驚かせるんじゃなかったのか?」
「忘れてた!」とユズが笑う。
「その予定だったんだけど、まずは装備をEランクにするのが先かなって! ほら、戦技を覚えてもすぐに使えないじゃん? 明日は狩りに行きたいんだよね」
サキの説明に、俺は「なるほど」と納得した。
「吉岡くんは教本を購入する予定ですが、魔法か戦技かは決まっていない……ということでよろしいですか?」
「よろしいです! 今の所持金が約18,000Gだから、わりと選択肢があるんだよね」
具体的には次のような選択肢がある。
1.Eランクの防具:12,800G
2.Eランクの補助魔導具と魔法の教本:14,600G
3.Dランクの戦技教本:10,000G
なお、2の内訳は補助魔導具が9,600G、教本が5,000Gだ。
「いいなー! 吉岡くんは訓練不要で技能を習得できて!」
ユズが羨ましそうに言う。
「いいだろー! だが、君の果実爆弾も羨ましいぞ、ユズ太郎!」
「ユズ太郎じゃなくてユズ隊員! サキ隊のエースだよ!」
「そうか、ユズ太郎!」
ユズが「もう!」と言いつつ、嬉しそうに笑った。
それを見て笑った後、俺はスミレの肩を抱き寄せた。
「そんなわけで佐伯さん、未定になってしまい申し訳ない!」
「いえ、お気になさらず」
佐伯はメガネをくいっと上げた。
「では、俺はこれからスミレとデートをしてくる! 道具屋で塩を買い、そのあと、教本店と武器屋だ! スミレ、行こうか!」
スミレが「はい」と立ち上がる。
「待て。スミレ、吉岡とミオが10時に集合だろうと関係ねえ。俺の隊は9時に出発する。集合は8時45分頃だ」
霧島が言った。
宮坂はどう反応するのが正解なのかわからず静観している。
梶原はちらちらとユズの顔を見るのに忙しそうだった。
「それは……困りましたね。どうにか明日だけ10時に変えていただけませんか?」
スミレは困った顔をしつつ、口元に笑みを浮かべながら言った。
「……わかった。なら、明日は10時だ。だが、明後日以降も霧島隊で活動するなら、9時に出発だ」
「ご配慮いただき、ありがとうございます」
「霧島、どうしたんだ!? 今のは『なんで俺たちが吉岡に合わせないといけねえんだよ』ってキレるところじゃないのか!?」
俺はからかい半分、驚き半分で言った。
「それは思った。霧島くんにしてはあっさり譲ったね」
カホが頷く。
「勝手に知った気になるんじゃねえ」
霧島が「ふん」と鼻を鳴らす。
「あ、そっか、わかった! 今日、吉岡隊が10時頃に出発して第4と第5を全8したからでしょ? 霧島、何食わぬ顔で吉岡くんに張り合ってるんだ」
アヤがニヤニヤしながら言う。
「……関係ねえ」
霧島がばつの悪そうな顔で目をそらす。
どうやらアヤの指摘が正解だったようだ。
◇
今度こそ本当にお開きとなった。
いつの間にやら日が暮れ、夜になっている。
どの酒場も繁盛しており、冒険者の騒ぎ声が外にまで響いていた。
そんな中、俺とスミレは、まず道具屋で塩を買った。
明日、ミオとアユの串焼きを食べるのに使うものだ。
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【支払ログ】
調味料:塩の小瓶
支出:100G
所持金:18,207G → 18,107G
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次いで、教本店にやってきた。
かつて〈スター・ストライク〉を買った店だ。
「おや? あんたかい。前とは違う女の子を連れているね」
中に入ると、老婆の店主が俺を見て言った。
「さすがお姉さん! よく覚えているじゃないか! 好立地なのに繁盛していないのかな!?」
「ふぉっふぉっふぉ。口達者な若造じゃわい」
老婆は年齢相応の笑い方をする。
スミレは俺たちの会話には加わらず、ペコリと老婆に頭を下げた。
「で、魔法を覚えたばかりだってのに、もう新しい教本に手を出すのかい? それとも、そっちの嬢ちゃん用か?」
老婆は俺のユニークスキルを知らない。
なので、〈スター・ストライク〉の習熟度をビギナーかノーマルだと見ているのだろう。
「いや、彼女は俺の付き添いだ! 本命は俺! お・れ! ちなみに言うと、あのあと別の店で〈バースト・ステップ〉も習得したぞ! 今日は記念すべき三つ目の技能枠を埋めにきたってわけだ!」
「それは移動系の戦技だね。いい選択じゃないか。その戦技なら上のランクに行っても使える」
老婆が真面目な顔で頷いた。
「その言い分だと、〈スター・ストライク〉は上のランクに行くと使えないのか?」




