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081 霧島vs宮坂

「私は大丈夫だよ。吉岡くんと二人きりというのは想像できないけど」


 真っ先に答えたのはカホだ。

 以前はパスされたが、今回はタイミングが合ったらしい。

 かすかに頬を赤らめており、なかなかポイントが高い。


「……私も大丈夫」


「ミオ?」と戸塚がミオを見る。


 二人は向き合う形で座って食べていた。

 メインの一品はどちらも焼き魚だ。


「……ユウゴの隊は、一人が抜けても回るように設計されてる。それが強み」


「そうだけど……」


 戸塚はそれ以上言わなかった。


「私は悩むところだけど、できればパス気味かなー。早川の監視をしたいからね」


 アヤの言葉に、早川は「監視ですか!?」と驚いた。


「俺、今日はめちゃくちゃ頑張ってたじゃないっすか! 信じてくださいよ!」


「どうかなー? ユズとサキばっかり活躍していたイメージだけど?」


「それは否定できませんが……! でも、俺だって敵を倒しましたよ!」


「私の矢で弱った敵だけどね」


「ぐっ……」


 アヤと早川が楽しそうに盛り上がっている。


「アヤ本人が気乗りしていないなら、アヤも除外しよう! カホとミオの二択だ!」


 俺が言うと、「どちらも戸塚隊ね」とリカが笑う。


「吉岡……」


 戸塚が俺の名を呟き、静かにこちらを見ている。

 その顔には「ミオを選ぶな」と書いてあった。

 ただし、明言はされていない。


「決めた! ミオ、君にする! 次のデート相手は君だ!」


 ということで、俺はミオを選んだ。


「……私? カホのほうが強いのに」


「強さは関係ない! それに、カホが強いのは俺のおかげでもある!」


「全部ではないけど、きっかけを作ってくれたのは吉岡くんだね。うちの子らがロープを使って戦闘に貢献しているのだって、元を辿れば吉岡くんのアイデアから始まってるし」


 カホは残念そうにすることなく、静かに味噌汁を飲んだ。


「そういうわけだ! ミオ、これから二日間、俺とデートだ!」


「……デートなら、プランを教えて。いきなり第5階層とか第6階層に行くのは無理」


 俺は「行かんよ!」と即答した。


「まずは第1階層からだ! そこで相性チェックと、君のユニークスキルを実際に確認する! その後もゆるっと楽しもう! 例えばそうだな、第1の川でアユの串焼きを食べよう! 事前に塩を買っていこう!」


「出た! 吉岡先輩の串焼き! あれ本当に美味いっす! 俺もまた食べたいです!」と早川。


「塩なら道具屋に売ってたよ。小瓶に入ったのが100Gだったかな」


 カホが言った。


「これで明日のデートプランは決定だ!」


「……いいの? 霧島隊に差をつけられるよ」


「かまうもんか! 霧島隊に抜かれたって問題ねえ! いつでも抜き返せる! いや、梶原がちょっと厄介だ! なので、いつでもとはいかんな! でも、やっぱり問題ねえ!」


 ミオが驚いたように目を見開いた。

 もう一人、同じように驚いている者がいた。


「俺がいると『ちょっと厄介』になるのか」


 梶原だ。

 意外そうにこちらを見ている。


「君のユニークスキルは便利だからな! 双剣のほうは不明だ! 前に組んだ時、君は腰が引けてまともに戦えていなかった!」


「まあ、あの時より成長したかな。双剣はまだ『ちょっと厄介』なレベルではないけど」


「梶原、吉岡くんに厄介扱いされて嬉しそうじゃん!」


 ユズがニヤニヤしながら茶化すと、梶原は「悪い気はしない」と笑った。


「ふん、俺と宮坂は警戒するに値しないってか? ずいぶんとなめられたもんだな」


 霧島が不機嫌そうに言った。

 今日もカツ煮を使ったオリジナルのカツ丼を食べている。


(おや? 珍しく何も言ってこないな)


 俺は宮坂を一瞥した。

 霧島に続いて何か吠えると思ったが、宮坂は黙っていた。

 怒る様子でもなく、何かを狙うように俺を睨んでいる。


(まあいいか!)


 俺は気にせず話を進めた。


「ミオ、どうかな!? このデートプラン!」


「……それならいい。アユの串焼き、楽しみにしてる」


「決定! 明日は9時30分にギルドの受付付近に集合! 朝食は各自で済ませておくこと!」


「吉岡さん、9時30分より10時のほうがゆっくり過ごせますよ」


 スミレが俺にだけ聞こえる声で言った。

 その首筋には、先ほどつけたキスマークがはっきり残っている。


「訂正する! ミオ、集合時間は10時だ! 9時30分は早すぎた!」


「9時30分でもおせえだろ」と霧島が呆れる。


 女性陣から笑いがこぼれた。


「……ん。わかった。10時。ギルドの受付付近。遅刻はダメ」


「了解! 遅刻はダメ!」


「吉岡、話は済んだよな?」


 ここで宮坂が口を開いた。


「ん? 済んだけど、どうかしたのか!?」


「お前に用はない」


 そう言って、宮坂はスミレに視線を向けた。


「スミレ、吉岡隊を抜けてフリーになるだろ。霧島隊に来てくれ」


 なんと、宮坂がスミレを勧誘し始めた。

 スミレも「え?」と耳を疑っている。


「お前、何勝手に勧誘してんだよ」


 隊長の霧島が宮坂を睨む。


「第5を攻略するのにスミレの力が必要なんだよ。スミレは吉岡と第5を攻略したんだ。実際に敵を見ている。【聖花の結界】だって役に立つ。問題ないだろ」


 驚いたことに、宮坂の言い分は妥当だった。

 そのため、「筋は通っているわね」とリカも呟いた。

 黒瀬は口をポカンと開けていた。


「そういう理由であれば……わかりました。明日は霧島隊で活動します。ただし、霧島さんや梶原くんが承諾したら、の話です。――吉岡さんも、問題ありませんか?」


「おう! 問題ないぞ! 行け行け! 霧島隊を助けてやれ!」


 俺は躊躇なく承諾した。

 吉岡ルールに抵触していないため、特に問題ない。


「俺も問題ない……ていうか大歓迎。できればユズも一緒がいいけど、ユズはサキ隊だろ?」


 梶原が軽い調子で言った。


「うん! 私はサキ隊! ごめんね、梶原!」


「いや、いいって」


 梶原が「気にすんな」と手を振る。

 その反応は、明らかにこれまでよりも自信に満ちていた。

 レベルランキングで1位になり、俺に評価されているとわかったのが大きそうだ。


「は? ふざけんなよ。スミレの力を借りるってことは、吉岡の貢献度を認めることと同じなんだぞ」


 霧島は反発した。


「ふざけてんのはお前だろ。頭イカれてんじゃねえのか」


 宮坂が言い返す。


「なんだと?」


 霧島の顔が険しくなる。


「冷静になって考えてみろよ、霧島」


「お前が冷静とか言うんじゃねえ」


「まだ話は終わってねぇよ。黙って話を聞け。先輩だろ、カス」


 宮坂が語気を強める。

 驚いたことに、霧島は本当に黙った。

 一言、「言ってみろ」とだけ言って腕を組む。


「仮に俺、お前、梶原の三人で第5を全8攻略したとする。それで俺たちの貢献度が認められるのか? そら多少は認められるだろうけど、一番槍をつけた吉岡隊には遠く及ばない。馬鹿でもわかる。だったら、第5階層なんて通過点だ。さっさと次に進んだほうがいい。そのほうが貢献度でも評価されやすいはずだ。違うか?」


 霧島は腕を組んだまま静かに考え込む。

 そんな中、大声で反応する男がいた。


「たまげたな! 宮坂、君はスミレのことになると本当に極端だ! 飛び抜けて間抜けだと思いきや、第1の周回や今回の件など、驚くほど真っ当な意見を言うことがある!」


 そう、俺だ。

 手を叩いて宮坂を評価した。


「お前に褒められたくて言ってるわけじゃない。でも、今回は間違ってないはずだ。相良さん、佐伯さん、あんたらだってそう思うだろ? 俺、間違ってるか?」


 宮坂が相良と佐伯に話を振る。


「スミレが承諾している以上、最終的な決定権は隊長の霧島にある。ただ、個人的には筋が通っていると思う」


 相良が言うと、佐伯も「私も同意見です」と続いた。


「……わかった。反対は取り消す。スミレ、力を貸してくれ」


 霧島が宮坂に押し切られた。


「わかりました。ですが、まずは第4階層で様子を見させてください。霧島隊で活動するのは今回が初めてですので、いきなり第5階層へ行くというのは避けたいです」


「かまわない。元々、第4を全8してから第5に行く予定だった。今のメンツになってから第1しか行ってないからな。まともな相手に対して連携を確認しておく必要がある」


「それなら問題ありません」


 スミレを受け入れた後の霧島は、グチグチ言わずに話を進めていた。

 しかし、この件はまだ終わらない。


「いいや、問題ある。ダメだ。そんなものは認められない」


 新たな反対者が現れたのだ。

 黒瀬である。

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【ノクターン】異世界ゆるっとサバイバル生活
~学校の皆と異世界の無人島に転移したけど俺だけ楽勝です~
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『異世界ゆるっとサバイバル生活』
異世界ゆるっとサバイバル生活 第1巻 異世界ゆるっとサバイバル生活 第2巻 異世界ゆるっとサバイバル生活 第3巻
異世界ゆるっとサバイバル生活 第4巻 異世界ゆるっとサバイバル生活 第5巻 異世界ゆるっとサバイバル生活 第6巻
『成り上がり英雄の無人島奇譚』
成り上がり英雄の無人島奇譚 第1巻 成り上がり英雄の無人島奇譚 第2巻 成り上がり英雄の無人島奇譚 第3巻
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