071 吉岡ルール
「たしかに吉岡さんの鎌ブーメランなら安全に狩れますが、私も戦技を実戦で使いたいです。残りの敵は一緒に倒しましょう」
「正しい意見だ! 失礼、君の楽しみと貴重な経験の場を奪うところだった!」
「いえ、ワガママ言ってすみません」
「ワガママを言う君は可愛い! だからもっとワガママを言ってくれ!」
「後悔しても知りませんからね」
スミレは笑みを浮かべながら歩き出した。
「キィ!」
程なくして生き残りのマウスを発見。
「ぷにーっ!」
スライムも一緒だ。
「片方は俺が――」
「いえ、この二体は私に戦わせてください。危なくなったらユニークスキルを使うので、吉岡さんは他の敵をお願いします」
スミレが戦技〈ホーリーシールド〉を発動する。
装備している小盾を覆うように光の盾が現れた。
「よかろう! では、他の敵は俺に任せろ! 必殺! 無差別スタスト!!!!」
俺はスミレと彼女の敵に当たらないように配慮しつつ、そこら中に〈スター・ストライク〉をばらまいた。
その結果――。
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討伐:麦穂マウス×1、丘ゴブリン×1
PT:2人 人数補正:90%
獲得:63G / 63EXP
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残りのマウスとゴブリンを倒し終えた。
あとはスミレだ。
「…………!」
スミレは慎重に敵2体との間合いを計っている。
しかし、持久戦は分が悪い。
〈ホーリーシールド〉が2分しかもたないからだ。
それは彼女も分かっていた。
「やあっ!」
スミレが覚悟を決めて前に出る。
「ぷにーっ!」
スライムが酸性の体液をスミレに飛ばす。
「効きません!」
スミレは光の盾で体液を弾くと、まずはマウスを突き刺した。
軽く胴体を刺した後、いったん抜いて、続けざまに頭部に刺し直す。
一昨日には見られなかった攻撃テクニックだ。
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討伐:麦穂マウス×1
PT:2人 人数補正:90%
獲得:27G / 27EXP
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「1対1なら怖くありません」
そう言って、スミレは残るスライムをあっさり仕留めた。
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討伐:風草スライム×1
PT:2人 人数補正:90%
獲得:54G / 54EXP
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討伐依頼のうち、通常種3種を倒し終えた。
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【戦闘結果ログ】
討伐:麦穂マウス×6 / 丘ゴブリン×4 /
風草スライム×3
PT:2人 人数補正:90%
獲得:468G / 468EXP
所持金:6,747G → 7,215G
レベル:Lv.14
経験値:312 → 780/1,130EXP
依頼進捗:麦穂マウス討伐 6/6・達成
依頼進捗:丘ゴブリン討伐 4/4・達成
依頼進捗:風草スライム討伐 3/3・達成
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結果ログが表示される。
「スミレ、やるじゃないか! さっきのマウス戦で見せた二連続の突き、すごかったな!」
「ありがとうございます。昨日の夜、訓練所で教わりました。武器の習熟度もノーマルに上がりましたよ」
「おー! やるなぁ! しかし、夜に訓練所……? もしかして、俺以外の男と……?」
俺がニヤニヤしながら冗談を飛ばすと、スミレは口元に笑みを浮かべた。
「気になりますか?」
「おいおい、そこは否定するところだろー! まさか、本当に……!?」
「どうでしょうか? もしかしたら、男性の教官と二人きりだったかもしれません」
「マジで!?」
「もし『マジです』と言ったら、どうしますか?」
スミレは試すような目で俺を見る。
「もちろん嫉妬する! それから禁止令を発令する!」
「束縛するのですか? 吉岡さんは自由にハーレムを満喫しているのに?」
「当たり前だ! 俺には独自の吉岡ルールが存在している! 正式名称は『吉岡くんが快適なハーレム生活を満喫するために必要なルール』だ!」
「そんなルールが……! 興味深いです。聞かせてください」
スミレが口元に手を当て、笑いながら言った。
「簡単だ! 吉岡ルールは非対称性で成り立っている! 俺がイイ女を口説くのはOK! もちろんセックスもOK! でも俺に口説かれた女が他の男とイチャイチャするのは禁止! 嫉妬させるのも禁止! ただし、普通に話したりPTを組んだり……デートしたりする分にはかまわない! 手つなぎセックスお触り禁止!」
スミレは「手つなぎセックスお触り禁止」と小声で復唱した。
語呂がいいため、復唱したくなる気持ちは理解できる。
「かなり一方的なルールですね……。ですが、そのルールなら私が男性の教官と二人きりで指導を受けてもセーフなのではありませんか?」
「通常ならセーフだ! しかし、君は含みのある言い方をすることで、俺の発狂を誘発しようとした! よって嫉妬誘発罪と認定し、吉岡ルールに違反したものと見なす! 佐伯さんがいれば『吉岡くんの指摘は妥当です』と言っていたに違いない!」
「佐伯さんの口調にそっくりですが、佐伯さんは妥当性を認めないと思いますよ」とスミレが笑った。
「細かいことは気にするな! そんなわけでスミレ、あとでおしおきだ!」
「わかりました。ですが、優しくしてくださいね。ちょっと悪い子の心が疼いただけなので」
「やれやれ、すっかり調子に乗ってるなぁ! 悪い子になってからかっていいのは俺以外の奴だけだ! では、行くぞ! ついてきなさい!」
俺はぷんすかしながら歩き始めた。
◇
次の戦闘も問題なく進んだ。
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【戦闘結果ログ】
討伐:風切りホーク×5 / 跳ね角シープ×4
PT:2人 人数補正:90%
獲得:396G / 279EXP
所持金:7,215G → 7,611G
レベル:Lv.14
経験値:780 → 1,059/1,130EXP
依頼進捗:風切りホーク討伐 5/5・達成
依頼進捗:跳ね角シープ討伐 4/4・達成
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今回のホークは、危険個体とではなくシープと組んで攻めてきた。
そういう展開もあるんだなと思いつつ、あっさり戦闘終了だ。
「スミレ、君は思ったより腕を上げたな! レベルだけが全てじゃないと感じさせる強さだ!」
「ありがとうございます。一昨日、吉岡さんが前で戦わせてくださったのと、昨日の訓練のおかげです」
今回の戦闘でも、スミレに2体倒させた。
それが本人の希望だったからだ。
彼女が倒したのはホーク2体。
2体は縦横無尽に空を飛んで連携していたが、スミレはその攻撃を捌いていた。
少し危なっかしい場面もあったが、ひやりとするほどではない。
そのため、スミレも【聖花の結界】を使わずに済んだ。
「それにしても、この大鎌……思ったよりいい感じだな。派手な見た目に反して細かい攻撃ができるぞ!」
今しがたの戦闘では、鎌を投げずに振り回して戦った。
思い描いた動きを再現できるため、鎌を引くことで目の前の敵を攻撃することも可能だ。
さらに柄を持つ位置を変えることでリーチの調整もできる。
応用力の高い武器だ。
「残すは危険個体とボスだけですね」
「そうだな。だが、その前に検証をしておこう」
「検証?」
「さっきも言ったとおり、いくら俺の習熟度がレジェンドだからといって、何でもできるわけではない。とりわけ初戦の鎌投げがそうだったが、俺のイメージではあんなにも遠く飛ぶものではなかった。戻ってくる時の軌道も、イメージとは少し違っていたんだ」
「そうだったのですか」
俺は頷いた。
「一方で、手で持って戦う時の動きは完全にイメージどおりだ」
「吉岡さんの手から離れた場合のみ、イメージどおりにいかないこともある……ということでしょうか?」
「それをこれから検証するわけだ」
ふざけたネーミングと動作だが、鎌ブーメランはぶっちゃけかなり強い。
しかし、さっきのようにイメージと違う動きをされると使えない。
だから、今のうちに原因を究明し、問題を解決することにした。




