070 アヤの装備
「おはようございます! 吉岡先輩! いつの間にか気を失っていて、気がついたら治療所に入院してたっす! で、退院して復帰しました! 頑張って遅れを取り戻します!」
早川が元気よく頭を下げる。
「焦らなくても大丈夫だぞ、早川。あと、君はサキ隊だからな。俺とは行動しないぞ!」
「そうでした! サキ先輩、今日はよろしくお願いします!」
早川がサキにも頭を下げる。
サキは「はいはーい」と軽い調子で手を振った。
「おはよう、吉岡くん。どうやら一人に絞らなかったみたいだね」
アヤが俺の顔を見てニヤリと笑う。
「よくわかっているじゃないか! いずれ君にも手を出す! 覚悟しておくように!」
そう言って、俺はアヤの全身を舐めるように見た。
DかEカップであろう胸、スカートから覗く健康的な太もも。
ユズほどの破壊力はないが、実にいい体つきをしている。
「相変わらず胸と太ももが好きなんだね。じゃあ問題、私の武器と防具は何でしょう?」
そう言うと、アヤは俺の目を手で覆った。
「え? アヤって武器を装備してたっけ?」
アヤが「してるよ」と笑う。
「吉岡くん、太ももは見たのに武器には気づかなかったの?」
サキの笑い声だ。
ユズとスミレも笑っている。
「防具は軽装備だ! 武器は……短剣だろう! 当たっていたら、俺のほっぺにチューして! 俺のだぞ! 早川じゃなくて俺だからな! 早川の前で頼む!」
「吉岡先輩、いきなり酷すぎですって!」と早川が笑う。
「ま、当たっていたらの話だけどね」とアヤ。
「当たっているはずだ! さあ、手を離して答えを見せろ!」
防具はそこそこ自信がある。
なぜなら胸を見たとき、鋼鉄の部分が目に付かなかったからだ。
なので、鋼鉄を使う中装備や重装備は候補から外れる。
武器は完全に適当だ。
「防具は正解。武器はハズレ」
アヤが手を離した。
俺はまずアヤの胸を見て、次に太ももを確認した。
それからハッとして武器を探す。
「なんだ、その小さなクロスボウは!」
アヤの腰には、小型のクロスボウが左右に一つずつ装備されていた。
ナナのクロスボウより遥かに小さく、片手で扱うためのサイズだ。
「この小型クロスボウは『ハンドクロスボウ』って言うんだけど、その二刀流だから『デュアルクロスボウ』って呼ばれてるよ。反動が弱くて威力は及第点。ただ妨害向けで決定力には欠けるかな。一応、セット武器だよ」
「へぇー! どうやってリロードするの? 両手が塞がってたらつらくない?」
俺が尋ねると、アヤは「ぶっちゃけ普通につらい」と笑った。
「だから、左のクロスボウは緊急用として基本は使わない。右のハンドクロスボウだけで戦って、左手でリロードする感じ」
「なるほど、常時二刀流ってわけじゃないのか」
「そういうこと」
「んじゃ、サキ隊は任務に行くよー。早川、私が隊長になったからには怪我なんてさせないからね。がっつり稼ぐよ」
「了解です! サキ先輩! アヤ先輩にも見られているし、俺、普段以上に頑張ります!」
「私に見られていると力がみなぎるんだ?」
「そ、そうですよ! それに今日は退院後ですから!」
「ユズ隊員も忘れないでね! サキ隊のエースだから!」
サキが「またね」と俺に手を振り、隊員を連れて窓口に向かう。
「吉岡さん、私たちも手続きをしに行きましょう」
スミレがそっと俺の腕に両手を添える。
「おう! 君の戦技と俺の新武器、そのお披露目だ! あと、成長した俺の姿を見せてやろう! まずは第4階層からだ! そのあと、第5階層も全8攻略するからな!」
「1日に第4と第5の二つ……本当に行くのですね」
スミレが目を丸くする。
「不安かい?」
「少しだけ……。ですが、吉岡さんが守ってくださると信じています。それに、私だって守られているだけではありません。戦技を覚えましたから。今日は、一昨日よりも戦います」
そう話すスミレの目には、いつも以上の気合いが感じられた。
◇
エリナが不在だったので、適当な受付嬢と話して手続きを済ませた。
武器は変わったが、背負い袋は依然としてレンタルしない。
大鎌も使わないときは背中に担いでいるからだ。
背負い袋があると、引っかかって邪魔になる。
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○第4階層
・[通常] Lv.8 麦穂マウス:6体(260G)
・[通常] Lv.9 風切りホーク:5体(290G)
・[通常] Lv.10 丘ゴブリン:4体(320G)
・[通常] Lv.11 跳ね角シープ:4体(350G)
・[通常] Lv.12 風草スライム:3体(380G)
・[危険] Lv.12 鎌羽グリフォン:1体(430G)
・[危険] Lv.13 暴風ワイバーン:1体(580G)
・[ボス] Lv.14 風車オーガ:1体(1,010G)
○第5階層
・[通常] Lv.11 赤砂スライム:6体(290G)
・[通常] Lv.12 砦ラット:5体(330G)
・[通常] Lv.13 錆剣ゴブリン:4体(360G)
・[通常] Lv.14 赤土ハウンド:4体(390G)
・[通常] Lv.15 石盾コボルト:3体(420G)
・[危険] Lv.15 破城ボア:1体(490G)
・[危険] Lv.16 赤砦ウォーロード:1体(650G)
・[ボス] Lv.17 赤砦サイクロプス:1体(1,140G)
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これが今日の討伐対象だ。
対する俺たちのレベルはというと、俺が14で、スミレが8だ。
細かく計算するまでもなく、スミレは第5階層でレベル差補正を受ける。
これは先に第4階層を全8攻略しても変わらない。
もしかすると、第4階層のボス戦でもレベル差補正が発生するかもしれない。
そのため、スミレの安全には気を配る必要があった。
「――ということだから、並んで歩こう! ただし、武器を振り回せるように少し距離を開けるぞ! 慎重に進もう!」
「わかりました」
話しながらポータルに向かい、第4階層に転移した。
もはや見慣れた麦畑が広がっている。
「……いるな。見られている」
俺にピキンッと電流が走る。
「え、敵ですか? どこでしょうか?」
スミレが慌てて槍を構える。
「すまん、今のはそれっぽいことをしてみたかっただけだ。敵がいるかはわからん!」
「驚かさないでください」
スミレが呆れ顔で俺を見た。
怒ってはいないが、かすかに頬が膨らんでいる。
「そんなに可愛い顔で睨まないでくれ。お詫びにすごいものを見せてやろう」
「すごいもの?」
「大鎌を極めし者だからこそ使える、レジェンド級の鎌テクニックだ!」
「レジェンド級の鎌テクニック……?」
「よーく見ていろ!」
俺は腰を落とし、鎌を両手で構えた。
体を思い切りひねると――。
「これが吉岡死神殺法その1! 鎌ブーメランッ!!!!!」
――鎌を全力で投げた。
シュルシュルシュルッ!
大鎌が凄まじい速度でコマのように回転しながら飛んでいる。
前方の麦がバッサバッサと刈られていく。
「吉岡さん、武器を投げて平気なんですか?」
「問題ない! あの鎌はブーメランのように戻ってくる! ……ただ、思ったより飛んでるな」
鎌の最大飛距離は約10mにも及んだ。
そしてその間に――。
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討伐:麦穂マウス×4、丘ゴブリン×3
PT:2人 人数補正:90%
獲得:216G / 216EXP
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魔物も切り刻まれて死んでいく。
「本当にいましたね、敵」
「だが、戦闘結果ログが出ていない! まだ潜んでいるぞ!」
大鎌がこちらに戻ってくる。
往路とは違う軌道を辿り、戻る途中でも麦を刈りまくりだ。
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討伐:風草スライム×2
PT:2人 人数補正:90%
獲得:108G / 108EXP
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「どうやら今回はスライムまで近くにいるようだな」
俺は戻ってきた鎌を手で掴んだ。
「鎌ってそういう使い方をするものなんですね……」
スミレが目を丸くしている。
「俺の場合はそうだ! 習熟度がレジェンドだからな! 頭に思い描いたことは基本的に再現できる! もちろん、何でもできるわけじゃないぞ? この鎌を宇宙まで投げる……なんて芸当はできない! だが、多少ぶっ飛んだことができるのは見ての通りだ!」
俺はドヤ顔で説明しつつ、二投目の準備に入る。
しかし、スミレが「待ってください」と止めた。




