063 転移6日目の報告会
「ランクの高い技能ほど、習得までに時間がかかるんだ。俺はユニークスキルのおかげで一瞬で習得できるが、君らはそうもいかないからな!」
「吉岡さんの意見は正しいです。参考までに、Fランクの技能は習得までに約8時間、Eランクで10時間、Dランクで12時間程度と言われています」
「その情報、たしか〈始祖の塔〉で配布された冊子にも書いてあったよね」
サキが背負い袋から冊子を取り出し、該当ページを開いて「ほら!」と俺たちに見せた。
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【技能習得にかかる訓練の目安時間】
・Fランク:約8時間
・Eランク:約10時間
・Dランク:約12時間
・Cランク:約16時間
・Bランク:約20時間
・Aランク:約24時間
・Sランク:約30時間
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「本当だー! サキ、よく覚えてたね!」
「足がつったせいでセラの説明を受ける羽目になったからね」
「そういえばそうだった!」とユズが笑う。
「補足しますと、こちらはあくまでも目安時間です。相性の良い技能であれば、目安時間の半分ほどで習得に至ることもありますし、逆に倍以上かかることもあります」
「この補足の仕方……佐伯さんか!?」
俺が光の速さで振り返ると、そこには知らない男の冒険者が立っていた。
「……誰だ、あんた?」
「いや、お前が誰だ。さっさと手続きを終えろよ。俺もエリナと喋りたいんだ。後ろもつかえている」
男が親指で背後を指す。
凄まじい行列ができていた。
「吉岡さん、今の補足は私がしました」
エリナが困惑した様子で言う。
「今の声、どう考えても後ろじゃなくて正面から聞こえていたでしょ! しかも佐伯の声じゃなかったじゃん! 吉岡くん、急に笑いを取ろうとするのやめて!」
サキが腹を抱えて笑う。
「とにかく、ランクの高い教本を買うなら訓練時間を意識しようってことだ! では、後ろの野郎どもが怖いので俺たちは失礼しよう! またね、エリにゃん!」
「はい、今後も無事に帰還してくださいね」
「エリにゃんも変わらず素敵なままでいてくれ!」
俺たちは窓口から離れて集合用スペースに向かう。
「私とサキがいるのに、吉岡くんの欲張り!」
ユズが頬をパンパンに膨らませながら後に続く。
エリナに対する嫉妬を隠そうともせず、槍の石突き――後端の部分――で床をゴンゴン突いている。
「16時かー。相良隊とリカ隊は戻っていそうだね」
サキが時計を見る。
「ま、じきにわかるさ」
そう言うと、俺はアンチテーゼの区画に入り、いつものセリフを言った。
「戻ったぜ! 野郎ども! イイ女たち!」
「おかえりなさい、吉岡さん」
最初に反応したのはスミレだった。
俺がいつも座っている中央付近とリカ隊の間あたりに座っている。
「お疲れ様、吉岡くん。声の様子から察するに、今日も無傷だったか」
そう言ったのは相良だ。
「受付でずいぶんと騒いでいたじゃない。ここまで声が聞こえていたわよ」
リカがワインレッドの髪を掻き上げる。
「よーし、霧島隊以外は全員揃ってんなー! 報告会の時間だ!」
俺はいつもと同じ席に座った。
右隣にユズが座り、左隣にサキが座る。
「結果を先に話すと、相良隊とリカ隊はどちらも第3全8だ。負傷者はなく、見ての通り装備も更新済みだ」
相良が涼しい顔で言った。
たしかに、誰も〈始祖の塔〉で配布された武器や防具を装備していない。
「でも、今日は相良隊の勝ちね。こっちは負傷していないけど、ボス戦で少し危ない場面があったから」
リカが余裕ありげに、それでいて悔しそうに笑った。
「ちゃんと差が出てるじゃないか! 詳しく聞かせてくれよ! まずは相良から頼む!」
俺はユズとサキの肩を抱き寄せた。
二人は嫌がることなく、俺のほうに体を傾ける。
ユズは誇らしげな顔でスミレとナナを見ていた。
「うわー、吉岡くん、そうしているとすっごい偉そう。悪徳プロデューサーって感じ」
アヤが笑った。
「なら、まずは俺の隊から話そう。ボスまでは三船のユニークスキル【アラーム・ベル】が活躍した」
「そういえば、三船のユニークスキルって知らないな。どういう効果なんだ?」
俺が尋ねると、三船は体をビクッとさせたあと、「えっと……」と話し始めた。
「僕の【アラーム・ベル】は、頭上に半透明の鐘を召喚する索敵系のスキルです。白瀬さんのスキルに似ていますが、【スター・レーダー】のように敵の位置を明確に特定できるわけではなく、近くに潜んでいる敵を音で知らせます。この音は冒険者にしか聞こえません」
「つまり、精度はナナのスキルに劣るが、ナナのスキルと違ってPTメンバーも音で把握できる感じなのか?」
「はい。あと、敵の奇襲攻撃に対し、自動的に衝撃波を発生させて防ぐことができます」
「まとめると、簡単な索敵と奇襲対策の効果を併せ持つスキルです」と佐伯。
「第3階層は知っているとおり洞窟だ。入り組んだ地形で、敵が見えにくい。また、水晶モールは地中から攻めてくる。そうした敵に三船のスキルが大きく役立った」
相良の言葉に、俺は「なるほどなー」と頷いた。
「ちなみに三船、君のユニークスキルってクールタイムはどうなってるの?」
「鐘本体のクールタイムは、白瀬さんの【スター・レーダー】と全く同じです。ただ、それとは別に、衝撃波には10分のクールタイムがあります」
「警鐘はダメージを受けない限り鳴らせるが、衝撃波は10分に1回ってことか」
三船が「はい」と頷いた。
それを確認すると、相良が話を進めた。
「危険個体は2体同時にいたが、全員のユニークスキルを駆使して倒した。そのあと、クールタイムが終わるまで休憩してから、全員でボスを倒した」
「全員といっても、ボス戦は実質的に相良のワントップだ。俺は【シャドウ・チェイン】で動きを封じ、佐伯もユニークスキル【ビジョン・アイ】で支援した。戸塚と三船は敵をかく乱していただけで、攻撃はしていない」
黒瀬が補足した。
「相良、単独でボスを倒せるの!? すごすぎだろ!」
俺が驚くと、相良は「単独ではない」と苦笑した。
「たしかに、ボスに攻撃していたのは俺だけだ。しかし、全員で戦っている。完全なソロだったら、勝てていない」
「でも、安定していたんでしょ? 黒瀬が認めているくらいだし、たまには『俺の功績だ』って胸を張ったら?」
リカが笑いながら茶化すと、相良は嬉しそうに口元を緩めた。
「そういえば相良のユニークスキルも知らないし、今度一緒に組みたいなー! しかし、俺には〈均等な愛作戦〉がある! 相良、どうにかイイ女になれないか?」
「吉岡くん、あくまで自分のハーレム構想が最優先なのね」
リカが面白そうに笑った。
それから、「次は私の番ね」と脚を組み直した。
「こっちも危険個体までは特に問題なかったけど、ボスに苦労したわ」
「でも、カホがいるのに撤退しなかったってことは、そこまで危なげなかったんじゃないのか?」
「吉岡くんと組んだ時と一緒だよ。撤退判断が出た瞬間にボスが死んだの」
俺の問いにカホが答えた。
それからリカが「そうね」と頷き、詳しく説明した。
「私たちの作戦は、とにかく私の【紅蓮の審判】の円環にボスを閉じ込めること。そのために、アヤとミオのユニークスキルを使った。あと、カホのゴーレム兄弟にボスを押さえてもらった。相良隊では戸塚と三船がかく乱要員だったみたいだけど、ウチは全員でかく乱していた感じよ」
「いい作戦じゃないか。アヤとミオのユニークスキルは知らないけどな!」
「二人のスキルについて話してもいいけど、脱線するから報告を続けるわね。作戦自体は成功よ。ただ、レベル差補正が影響したのか、思ったよりもボスがしぶとかった。それで最後はボスが円環から完全に出てしまって、カホのゴーレムも1体やられた。だから撤退を宣言したのだけど、その時にナナが放った矢でボスが死んだのよ」
「そういうことか。俺や霧島なら『問題なかった』で片付けそうなところだけど、その状況を『少し危なかった』って表現できるのは立派だな!」
「もう少しボスが粘っていたら、今日の戦果は全8じゃなくて非ボス7だったからね。今日に関しては、相良隊に後れを取ったと認めるしかないわ」
リカが言うと、リカ隊の女性陣が頷いた。
「あ、そうそう、あとね、これは予想外の発見だったんだけど、ミオのユニークスキル【サイレンス・ドーム】で作ったドーム内だと、第3階層のボスは水の武器と盾を作れなくなるみたい」
カホが思い出したように言った。
「そうなのか! では、この流れに乗って聞こう! ミオ、君のユニークスキルについて教えてくれ!」
「……わかった」
ミオは頷くと、俺を見た。




