062 風車オーガ
ドゴンッ!
俺たちの投げた爆弾がオーガに命中し、敵の全身を派手に燃やした。
「ゴグォオオオオ……!」
オーガは嫌そうにしているが、大きなダメージにはなっていない。
「ここからはオールレジェンドの吉岡に任せろ! 二人は安全にアシストだ!」
俺は〈バースト・ステップ〉で距離を詰め、目にも留まらぬ速さで斬りかかった。
最高にクールなFランクの大太刀が、敵の左肩から右腰へ斜めに走る。
グサッ!
「手応え、あり! 圧倒的だ!」
オーガが痛そうな悲鳴を上げる。
ハンマーを振り回して俺を仕留めようと必死だ。
しかし――。
「甘い甘い!」
俺は剣を振り抜いた姿勢のまま、追加の〈バースト・ステップ〉で3m下がる。
そして安全圏まで離れると、今度は――。
「これが剣と魔法の吉岡式戦闘術! くらえ! スタスト!!!!!」
お得意の魔法〈スター・ストライク〉の連射を叩き込む。
深手を負ったオーガに避ける術はなく、ダメージが蓄積されていく。
「グォ、グォオオ……」
いよいよオーガが崩れる。
「ユズ! サキ! あのオーガにジェット……いや、三位一体攻撃を仕掛けるぞ!」
「吉岡くん、今何か違う技名を言おうとしなかった!?」
「ユズ、そこは気にしたらダメなやつ! 仕留めるよ!」
「うん!」
ユズとサキが左右に展開し、オーガへ突っ込んで槍を繰り出す。
それに合わせて俺もオーガを縦に切り裂いた。
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【戦闘結果ログ】
討伐:風車オーガ×1
PT:3人 人数補正:80%
獲得:696G / 416EXP
所持金:7,985G → 8,681G
レベル:Lv.13 → Lv.14
経験値:956 → 312/1,130EXP
依頼進捗:風車オーガ討伐 1/1・達成
攻略証明:第4階層・取得
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敵が絶命し、ログが表示される。
「討伐完了! 完全勝利! 圧勝、楽勝、絶好調!」
俺は太刀を鞘に納め、高らかに笑った。
「いえーいっ! ユズ隊員の爆弾も活躍!」
「ていうか、マジで強すぎだからね、吉岡くん。ヤバすぎるって」
サキが苦笑する中――。
「がーはっはっは! はっはっはのはー!!!!!!」
俺の笑い声が平穏なダンジョンに響いた。
◇
ギルドに戻ったのは15時30分頃だった。
エリナはいたが、列が長くてすぐには話せない。
他の窓口ならすぐに済むが、もちろん俺はエリナの窓口を選んだ。
のんびり並びつつ、今日の戦いを振り返った。
「やっぱり移動時間がボトルネックだな」
「徒歩だと時間がかかるよね」とサキも頷く。
今回、どの敵との戦闘も短かった。
第4階層のボス・風車オーガですら1分もかかっていない。
つまり、攻略時間の大半を移動に費やしている。
「吉岡隊は帰りもゆっくり歩くもんね」
ユズが言った。
「その言い方だと、霧島隊は走っていたのか?」
「うん! 行きは歩くけど、帰りは走る! 魔物がいないから!」
「スタミナを付けるためってのが霧島の考え方。私は好きだったなー」
「サキの理想は暴走しない霧島が率いる霧島隊だもんな!」
「そうそう! でも、戦闘の考え方とかは吉岡くんのほうが好きなんだよね」
俺は「ほう」と笑みを浮かべた。
「吉岡くんって、あれだけ強いのに戦闘になるとチーム全体を考えてるじゃん?」
「そうか?」と俺はユズを見た。
ユズは「考えてる! たぶん!」と笑顔で頷いた。
「例えば私が初めて第1に行った時、私とカホに戦闘経験を積ませたでしょ?」
「そんなこともあったな!」
「吉岡くんは目立つのが大好きだし、やたら叫ぶけど、戦闘になるとチームの強さをベースに考えてる。でも、霧島はそこまでは考えていない。個人の集まりとしか見ていないから、チームでどうこうって考えが弱いのよ」
「でも、理想は暴走しない霧島なんだよな?」
「だって吉岡くん、強すぎるんだもん。ぶっちゃけ、今って私らは足手まといになってるんだよね。効率だけを考えるなら、吉岡くんはソロのほうが絶対にいい」
サキが真面目な顔で言った。
「足手まといとは思ってないけどなぁ」
「わかってるよ。ただ、私はそう感じるって話。で、私も霧島と同じで効率重視。だからね、吉岡くんと組むと『今、吉岡くんの効率を落としちゃってるな』とか考えて申し訳なくなるわけ」
「サキ、そんなことまで考えていたんだ……。私、吉岡くんと同じPTで嬉しいって思ってただけだったよ」
ユズが驚いたように言うと、サキは「それでいいじゃん」と笑った。
「吉岡くんは効率至上主義じゃないし、ユズだってそうでしょ。人によって考え方が違うから、人間って面白いんじゃん?」
サキがいい感じに言うと、なぜかユズの頬が膨らみ始めた。
「サキ、なんかずるい! 大人の女って感じがする! 私や吉岡くんと同じ二年なのに!」
「でしょー? これでもサキちゃん、大人な一面があるんだよね! なんてね、あはは!」
そうこうしていると、俺たちの番がやってきた。
「次の方、ど――」
「やっほい、エリにゃん、こんにちは! 今日も登場! エリにゃん大好き吉岡くんだよ!」
「こんにちは、吉岡さん。今日も元気ですね」
エリナが微笑む。
「むむぅ……!」
ユズは腕を組み、頬を膨らませてエリナを睨んでいる。
「あの……ユズさん、どうかなさいましたか?」
「気にしなくていいよー。この子、吉岡くんのことが大好きだから、エリナに嫉妬してるの」
サキが笑いながら左手を振る。
するとエリナは「そうでしたか」と安堵したように微笑んだ。
「そんなわけでエリにゃん、第2階層と第4階層の依頼報酬ならびに魔石換金を頼む! 二人とも、魔石を並べよ!」
ユズが「ふんっ」と拗ねた様子で応じる。
サキも「はいはい」と苦笑しながら魔石をカウンターに置いた。
「では、精算手続きを開始しますね」
エリナがいつものように謎のキーボードをカタカタと叩く。
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【依頼報酬ログ】
○第2階層
・[通常]白樹モス:200G
・[通常]枝走モンキー:230G
・[通常]樹皮ゴブリン:250G
・[通常]風鳴キツネ:270G
・[通常]苔甲ビートル:290G
・[危険]白樹マンティス:340G
・[危険]白樹アラクネ:450G
・[ボス]白樹トレント:790G
○第4階層
・[通常]麦穂マウス:260G
・[通常]風切りホーク:290G
・[通常]丘ゴブリン:320G
・[通常]跳ね角シープ:350G
・[通常]風草スライム:380G
・[危険]鎌羽グリフォン:430G
・[危険]暴風ワイバーン:580G
・[ボス]風車オーガ:1,010G
総額:6,440G
所持金:8,681G → 15,121G
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凄まじい速度でログが流れていく。
さらに――。
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【魔石換金ログ】
○第2階層
・[通常]白樹モス:10G×6個=60G
・[通常]枝走モンキー:10G×5個=50G
・[通常]樹皮ゴブリン:10G×4個=40G
・[通常]風鳴キツネ:20G×4個=80G
・[通常]苔甲ビートル:20G×3個=60G
・[危険]白樹マンティス:60G×1個=60G
・[危険]白樹アラクネ:80G×1個=80G
・[ボス]白樹トレント:340G×1個=340G
○第4階層
・[通常]麦穂マウス:10G×6個=60G
・[通常]風切りホーク:10G×5個=50G
・[通常]丘ゴブリン:10G×4個=40G
・[通常]跳ね角シープ:30G×4個=120G
・[通常]風草スライム:30G×3個=90G
・[危険]鎌羽グリフォン:70G×1個=70G
・[危険]暴風ワイバーン:100G×1個=100G
・[ボス]風車オーガ:430G×1個=430G
総額:1,730G
分配人数:3人
分配後:576G / 残余:2G
所持金:15,121G → 15,697G
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魔石換金ログも表示された。
「残余が2Gありますね。どう分配されますか?」
「ユズとサキに1Gずつ頼む!」
「わかりました」
エリナが残余の処理も済ませ、精算が完了した。
「やっぱり吉岡くんと一緒だと儲かるわー! 一気にお金が貯まった!」
サキが声を弾ませる。
ユズも「一気にお金持ちになったね!」と嬉しそうだ。
「俺は15,697Gある! これならEランクの武器と教本を買っても余裕があるな!」
Eランクの武器は8,000G、教本は5,000Gだ。
二つ足しても13,000Gだ。
「私はもう少し少ないけど、それでも12,000G以上あるから、Dランクの教本までなら買えるはず!」
サキが言うと、エリナが頷いた。
「Dランクの教本は10,000Gですから、購入できますね。戦技なら補助魔導具も必要ありません」
「あー、そっか! 戦技ならいきなりDランクもありなんだ! 私、Eランクの武器とFランクの戦技を買うつもりだったけど、Dランクの戦技もありかも!」
「だが、Dランクの戦技に飛びつく前に、気をつけたほうがいいことがあるぜ!」
俺はニヤリと笑い、右手の人差し指を立てた。




