060 サキっぱい
「速っ! てか、強っ!」
サキが吹き出すと、ユズも「なに今の!」と驚いた。
「吉岡くんが突っ込んでいって大太刀をブンッてしたと思ったら、次の瞬間には後ろに戻ってたんだけど!?」
「これがレジェンド級の剣術&戦技だ! 圧倒的だろう! がーはっはっは!」
初戦は難なく勝利した。
◇
俺は背負い袋を返却したため、魔石を持てない。
そこで、魔石はサキとユズに半分ずつ持ってもらった。
それはさておき、大事なのは戦闘だ。
次の敵は枝走モンキーと苔甲ビートルだった。
どちらも周囲の樹木を巧みに利用する。
---------------------------
【戦闘結果ログ】
討伐:枝走モンキー×5 / 苔甲ビートル×3
PT:3人 人数補正:80%
獲得:240G / 200EXP
所持金:6,717G → 6,957G
レベル:Lv.12
経験値:372 → 572/1,000EXP
依頼進捗:枝走モンキー討伐 5/5・達成
依頼進捗:苔甲ビートル討伐 3/3・達成
---------------------------
――が、問題なかった。
サキとユズが果実爆弾を投げつつ敵を捌いた。
俺も連携の練習がてら魔法や戦技を適当に使い、10秒足らずで戦闘終了だ。
「いやあ、二人とも本当に強くなったな! 霧島隊での頑張りがよく分かるぞ!」
本当だ。
前に組んだ時と比べて、二人は明らかに動きが良くなっていた。
ユズは爆弾を投げすぎる癖こそ抜けていないが、戦闘技術は向上している。
敵の動きに合わせて槍で突き殺せていた。
特に目を見張ったのはサキだ。
昨日、一人で第4階層のワイバーンを処理した実力は伊達ではない。
索敵能力は俺よりも高く、戦闘時の冷静さも相当だ。
ユニークスキルの使い方も上手い。
「吉岡くんも前より強くなってる……というか、私らがかすむくらいに強くなりすぎだから。魔法と戦技が加わったらここまで変わるんだって思い知らされたよ」
サキが苦笑する。
「俺はオールレジェンドの吉岡だからな! 強くて当然! それでこそ俺だ!」
「私もそろそろ何か覚えようかなー。補助魔導具を買いたくないし、戦技にしよっかな」
「サキも戦技に興味あるんだ! じゃあ、今日の夜、二人で見に行く?」
「二人で行くの? 吉岡くんは?」
サキが笑いながら尋ねると、ユズは「連れて行かない!」と即答した。
「なんで俺だけのけ者なんだ!?」
「だって、使いこなせるようになってから吉岡くんを驚かせたいじゃん!」
「そういう理由か」と納得する。
話していると、遠くから「シャア!」という鳴き声が聞こえた。
白樹マンティスが突っ込んでくる。
「俺に任せたまえ! でええええい!」
〈バースト・ステップ〉からの一振りで真っ二つにする。
その後、アラクネとボスも魔法でサクッと潰した。
---------------------------
【戦闘結果ログ】
討伐:白樹マンティス×1 / 白樹アラクネ×1 /
白樹トレント×1
PT:3人 人数補正:80%
獲得:728G / 496EXP
所持金:6,957G → 7,685G
レベル:Lv.12 → Lv.13
経験値:572 → 68/1,060EXP
依頼進捗:白樹マンティス討伐 1/1・達成
依頼進捗:白樹アラクネ討伐 1/1・達成
依頼進捗:白樹トレント討伐 1/1・達成
---------------------------
「第2階層攻略完了! 戻ったら昼メシを食って、それから第4階層に行こうぜ!」
ユズが「了解!」と敬礼する。
「やっぱり吉岡くんと一緒だと、吉岡くんが強すぎて燃えないなー。吉岡くん、もう少し弱くならない? 手加減されたらそれはそれでテンション下がるから、なんか普通に弱体化されてほしい」
サキは笑いながらボスの魔石を拾った。
「すまんな、サキ……。ご要望に応えたいが、この強さこそ俺なんだ……!」
「わかってるよ。だから、今日はたくさん稼がせてもらう日って割り切ってる! この後も期待してるからね?」
「おう! そういうことなら任せてくれ! しっかり稼がせてやろう! 次は第4階層だしな!」
俺たちはギルドに向かって歩き出した。
◇
ギルドに着いたのは12時過ぎのことだ。
ひとまず魔石の換金を済ませようと思ったが――。
「すげー混んでるな。あとで一括精算しよう」
どの窓口にも長蛇の列ができていたので、俺たちは食堂に向かった。
食堂もお昼時で混み合っていたが、どうにか席を確保する。
壁際のカウンター席で、右から順にユズ、俺、サキと並んで座った。
「二人とも、頼むのはノーマルセットだぞ! メシはケチらない! それが吉岡隊だ!」
「そうだよ、サキ! 吉岡隊ではご飯はケチらない! たくさん食べること!」
なぜかユズが偉そうに言う。
その顔には嬉しそうな笑みが浮かんでいて、サキも「はいはい」と笑った。
そして、俺たちは三人揃ってノーマルセットを注文した。
---------------------------
【支払ログ】
食事:ノーマルセット
支出:700G
所持金:7,685G → 6,985G
---------------------------
ギルドの食堂にあるノーマルセットは、いつも同じ構成だ。
白米、味噌汁、サラダ、小鉢、メインのおかずの五品である。
そのうち、メインはいくつかの中から選ぶ形式だ。
俺はお気に入りの焼き肉を注文した。
熱々の鉄板に、カルビのような肉が盛られている。
鉄板の上でタレが蒸発し、ジュージューと音を立てるのもたまらない。
香りも最高だ。
「私はこれ! サキちゃんは卵料理が好きだからね!」
サキが選んだのは卵焼きだ。
「焼き肉は昨日も食べたし……今日はお刺身にしてみたの!」
ユズは刺身盛りをメインに選んでいた。
「二人のメイン、思ったよりいい感じだな!」
サキの卵焼きは、とにかくジャンボサイズだ。
焼き肉と並んでメインを張るだけのことはある。
一方、ユズの刺身盛りも量が多かった。
日本でも見かける舟盛りスタイルで、謎の刺身がてんこ盛りだ。
「異世界で刺身とか、ユズは怖い物知らずだね。カホが知ったら喚くよ?」
サキがニヤニヤしながら言うと、ユズは「大丈夫!」と笑みを浮かべた。
「仮にお刺身に当たっても、その時は治療所に行けば治るもん!」
そう言うと、ユズは刺身に醤油をべったりつけ、米と一緒に食べた。
米にバウンドさせてから口に運ぶ食べ方は、マナー的には微妙なところだ。
しかし、本人が幸せそうに「美味しー!」と笑うのでよしとしよう。
それに、この食べ方は俺もやるから、人のことは言えない。
実際、今も焼き肉をご飯にバウンドさせてから頬張っている。
最高だ。
「なんかユズの食べっぷり見てたら、私も刺身盛りが食べたくなってきたじゃん! ていうか、こういうところのメインで刺身盛り選んで舟盛り来るとか日本じゃありえないって」
そう言いつつ、サキも卵焼きを「うんまっ!」と頬張っていた。
◇
食事が終わり、俺たちは第4階層にやってきた。
「陣形はさっきと同じ感じでオッケー?」とサキが確認してくる。
「おう! サキ、ユズ、ガンガン進んでいいぞ! 遠慮するな! でも油断するな! 戦いは怪我なく優雅に勝ってこそ美しい! 吉岡隊、前進!」
ユズが「ぜんしーん!」と槍を掲げながら歩き出す。
サキも「うぇーい!」と進む。
二人が並んで前を歩き、俺が後ろから安全を確保する。
完璧な布陣だ。
「いたよ、サキ! マウスだ!」
「こっちも確認した。丘ゴブリンも茂みに伏せてるね。幻影でかく乱する。私は左の敵をとるね」
「じゃあ、私は右! 前から敵が来ないように煙幕を焚いておくね!」
敵を見つけるなり、二人が慣れた様子で話す。
まずはユズが白い果実爆弾を前方に投げて煙幕を張った。
それを合図に、サキもユニークスキルを発動して幻影を走らせる。
二人の連携によって、綺麗に敵が分断された。
「えいっ! それっ!」
ユズはサキの幻影1体と協力しつつ、軽やかにマウスを倒していく。
---------------------------
討伐:麦穂マウス×3
PT:3人 人数補正:80%
獲得:72G / 72EXP
---------------------------
「甘いね。ほいよっと」
サキも軽快な動きでマウスやゴブリンを捌く。
---------------------------
討伐:麦穂マウス×1 / 丘ゴブリン×1
PT:3人 人数補正:80%
獲得:56G / 56EXP
---------------------------
そんな中、俺はというと――。
「うおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!!」
煙幕に向かって〈スター・ストライク〉を連射していた。
敵が見えないので、二人に当たらない範囲でひたすら撃ちまくる。
---------------------------
討伐:麦穂マウス×2 / 丘ゴブリン×3
PT:3人 人数補正:80%
獲得:144G / 144EXP
---------------------------
よくわからないが、敵を一気に倒せた。
「吉岡くんのその魔法、本当にFランク? 強すぎなんだけど」とサキが笑う。
「これがレジェンド級だ! 常人にはたどり着けない伝説の境地である! なーはっはっは!」
---------------------------
【戦闘結果ログ】
討伐:麦穂マウス×6 / 丘ゴブリン×4
PT:3人 人数補正:80%
獲得:272G / 272EXP
所持金:6,985G → 7,257G
レベル:Lv.13
経験値:68 → 340/1,060EXP
依頼進捗:麦穂マウス討伐 6/6・達成
依頼進捗:丘ゴブリン討伐 4/4・達成
---------------------------
「吉岡くん、今日も絶好調だね! ユズっぱいを揉んでいないのに!」
ユズがニコニコ顔で言う。
「そういえば、ユズっぱいを揉み忘れていたな……」
意識した瞬間、俺はもう我慢できなかった。
「せっかくなので、失礼……!」
右手を伸ばし、ユズっぱいを揉む。
厳密には揉むというより掴んでいる。
その状態で上下にブンッと振って、「よし!」と頷いた。
「だから、その『よし』は何の確認なの!」
ユズが顔を赤くしながら笑う。
すると――。
「吉岡くん、こっちにサキっぱいもあるよ?」
サキがニヤニヤしながら言った。
わざわざ胸当てを緩めて調整まで済ませている。
「マジで!? サキっぱいOKレッツゴー!?」
もちろん俺は食いついた。




