051 エリにゃん査定システム
「残念だが、俺は誰にも言わないぞ! 二人きりの秘密にしておこう!」
「それも悪くありませんね」
その後も、俺とスミレは会話を楽しみながら狩りを進めた。
第1階層なので危ない場面はなく――。
「これで終わりっと!」
――草冠トロルも倒し終えて戦闘終了だ。
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【戦闘結果ログ】
討伐:青芽ネリュム×6 / 草角ラビット×5 /
青羽コッコ×4 / 若葉ウルフ×4 /
土くれゴブリン×3 / 大牙ボア×1 /
牙群れアルファウルフ×1 / 草冠トロル×1
PT:2人 人数補正:90%
獲得:1,323G / 1,008EXP
所持金:4,947G → 6,270G
レベル:Lv.9 → Lv.10
経験値:619 → 797/880EXP
依頼進捗:青芽ネリュム討伐 6/6・達成
依頼進捗:草角ラビット討伐 5/5・達成
依頼進捗:青羽コッコ討伐 4/4・達成
依頼進捗:若葉ウルフ討伐 4/4・達成
依頼進捗:土くれゴブリン討伐 3/3・達成
依頼進捗:大牙ボア討伐 1/1・達成
依頼進捗:牙群れアルファウルフ討伐 1/1・達成
依頼進捗:草冠トロル討伐 1/1・達成
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「第1階層でも稼げるものなんですね」
スミレがボスの魔石を拾う。
「それが2人PTの強みだ。お金も貯まってきたし、今日の夜にはパワーアップできるぞ!」
敵を倒して得られる討伐報酬は、PTメンバーの数が増えるたびに10%ずつ減る。
ソロなら100%、2人PTなら90%……と減っていき、6人PTなら50%だ。
「第4は攻略できなかったのに、経験値とゴールドはしっかり稼ぐ……吉岡さんらしいです」
「だろー! では、戻ろう。ギルドでの手間を省くため、ポータルに戻ったら即第2に行くぞ!」
「わかりました。ですが、私の背負い袋はもう、魔石でいっぱいです」
「第2で手に入る魔石は俺のほうに入れればいいさ。幸いなことに、背負い袋はまだ返却していない」
俺は自分が背負っているぺたんこの背負い袋を叩いた。
「先ほど返却しなかったのは、この流れを見越してのことだったのですね。さすがです」
「これこそオールレジェンドの吉岡だ! ……と言いたいが、本当は忘れていただけだ」
「ふふ、そこは素直なんですね」
「俺はいつだって素直だぜ? 欲望に忠実な裏表のない男だ!」
スミレは「たしかに」と笑った。
◇
事前の取り決めどおり、俺たちはギルドに戻るなり第2階層に向かった。
ここでも何ら問題は起きず、〈スター・ストライク〉の連射で制圧する。
前回、俺と接戦を演じたマンティスだが――。
「ジャスパアアアアアアアア!!!!!!!!!!」
ブンッ!
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討伐:白樹マンティス×1
PT:2人 人数補正:90%
獲得:81G / 81EXP
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大太刀によって風とともに切り裂かれ、絶命した。
その後のアラクネやボスも危なげなく倒す。
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【戦闘結果ログ】
討伐:白樹モス×6 / 枝走モンキー×5 /
樹皮ゴブリン×4 / 風鳴キツネ×4 /
苔甲ビートル×3 / 白樹マンティス×1 /
白樹アラクネ×1 / 白樹トレント×1
PT:2人 人数補正:90%
獲得:1,485G / 1,107EXP
所持金:6,270G → 7,755G
レベル:Lv.10 → Lv.12
経験値:797 → 84/1,000EXP
依頼進捗:白樹モス討伐 6/6・達成
依頼進捗:枝走モンキー討伐 5/5・達成
依頼進捗:樹皮ゴブリン討伐 4/4・達成
依頼進捗:風鳴キツネ討伐 4/4・達成
依頼進捗:苔甲ビートル討伐 3/3・達成
依頼進捗:白樹マンティス討伐 1/1・達成
依頼進捗:白樹アラクネ討伐 1/1・達成
依頼進捗:白樹トレント討伐 1/1・達成
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「スミレ、急いでギルドに戻るぞ! 第1階層でのんびりしすぎた!」
第1階層から戻った時点で、時刻は12時50分だった。
第2階層では、体感で2時間は過ごしている。
ここから急いで戻っても30分はかかるだろう。
しかし、戻ったら終わりではない。
依頼報酬の受け取りや魔石の換金といった精算作業が残っている。
エリナがいれば口説く時間も必要だ。
「はい! スミレ隊員、急ぎます!」
「……ん? スミレ隊員だと?」
走ろうとしていた俺の足が止まる。
「実は言ってみたくて……」
スミレが恥ずかしそうに頬を赤らめる。
「このタイミングで言うのか! だが、いいだろう! 言ってみた感想を教えてくれ!」
「……慣れないせいで違和感はありましたが、楽しく感じました」
スミレが照れ笑いを浮かべる。
「なんて可愛い反応なんだ! スミレ隊員!」
俺はスミレに近づくと、顎をつまみ上げてキスした。
「吉岡さん!?」
スミレが顔を真っ赤にして驚く。
「君は言いたいから言った! 俺はキスしたいからキスした! 以上! 文句なら後で聞く! 帰るぞ!」
「文句はありません。嬉しかったです。今のも……二人きりの秘密ですね」
「そういうところ! 本当に男心をわかっているな! 理性のブレーキが効かなくなるからやめろ!」
スミレのペースに嵌まると動けなくなる。
俺は強引に話を切り上げ、「行くぞ! ほら!」と走り出した。
◇
ギルドに着いたのは、15時30分ちょうどだった。
もしかしたら、相良隊が集合用スペースに戻っているかもしれない。
そういう時間帯だ。
「いた! エリにゃん!」
「こんにちは、吉岡さん」
受付カウンターにはエリナの姿があった。
幸いにもフリーだったので、俺は迷わず彼女の前に移動する。
「吉岡さん、第4階層の攻略を途中で中止したんですね。その後、第1と第2の討伐依頼を受けられたようですが、第4階層で何かトラブルでもあったのですか?」
「トラブルってほどでもないさ! むしろ、このままだとトラブルになりそうだから、仕切り直すために中止したんだ! で、こちらにいる俺の可愛いスミレと第1・第2に行ったってわけだ!」
スミレは静かに一礼した。
「そうでしたか。それは、とても良い判断だと思います。ですので、エリにゃんポイントが上がりました」
「ほんと? デート引換券と交換できるくらいポイント貯まった!?」
「ポイントは貯まっていますが、今は引き換えできません」
エリナが笑みを浮かべる。
「なんだってー! どうして!?」
「まず、私は現在、業務中です。デートをするなら業務時間外でなければなりません」
「ごもっとも!」
「次に、吉岡さんは現在、私とのデートを希望していません」
「むむ? それはどういうことかな!?」
「これは私の推測ですが、吉岡さん自身が『今はまだ早い』と感じているのではありませんか? もし、そうでなければ、吉岡さんはきっと私を誘っているはずです。もっとストレートに」
「吉岡さんのこと、完全にお見通しですね」
スミレがクスリと笑う。
「ぐぬぬ……! エリにゃん、君は手強いな! さすがは異世界のイイ女だ! その読みは当たっている! だから今は誘わない! ということで、精算を頼む! 依頼報酬と魔石の換金だ! あと、俺の背負い袋を返却する!」
「わかりました」
エリナは謎のキーボードを叩いて、素早く処理を済ませた。
彼女は人気だけでなく、受付嬢としての能力も高い。
凄まじい速度でログが流れた。
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【依頼報酬ログ】
○第1階層
・[通常]青芽ネリュム:180G
・[通常]草角ラビット:200G
・[通常]青羽コッコ:220G
・[通常]若葉ウルフ:240G
・[通常]土くれゴブリン:260G
・[危険]大牙ボア:300G
・[危険]牙群れアルファウルフ:400G
・[ボス]草冠トロル:700G
○第2階層
・[通常]白樹モス:200G
・[通常]枝走モンキー:230G
・[通常]樹皮ゴブリン:250G
・[通常]風鳴キツネ:270G
・[通常]苔甲ビートル:290G
・[危険]白樹マンティス:340G
・[危険]白樹アラクネ:450G
・[ボス]白樹トレント:790G
総額:5,320G
所持金:7,755G → 13,075G
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続けて、魔石の換金が行われる。
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【魔石換金ログ】
○第1階層
・[通常]青芽ネリュム:10G×6個=60G
・[通常]草角ラビット:10G×5個=50G
・[通常]青羽コッコ:10G×4個=40G
・[通常]若葉ウルフ:20G×4個=80G
・[通常]土くれゴブリン:20G×3個=60G
・[危険]大牙ボア:50G×1個=50G
・[危険]牙群れアルファウルフ:70G×1個=70G
・[ボス]草冠トロル:300G×1個=300G
○第2階層
・[通常]白樹モス:10G×6個=60G
・[通常]枝走モンキー:10G×5個=50G
・[通常]樹皮ゴブリン:10G×4個=40G
・[通常]風鳴キツネ:20G×4個=80G
・[通常]苔甲ビートル:20G×3個=60G
・[危険]白樹マンティス:60G×1個=60G
・[危険]白樹アラクネ:80G×1個=80G
・[ボス]白樹トレント:340G×1個=340G
総額:1,480G
分配人数:2人
分配後:740G / 残余:0G
所持金:13,075G → 13,815G
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「たしかに、背負い袋もご返却いただきました」
エリナが背負い袋を受け取り、全ての手続きが終了する。
「ありがとう、エリにゃん! 俺がもう少し強くなったらデートに誘わせてもらう!」
「楽しみにしています。ですが、エリにゃんポイントは下がることもあります。エリにゃん査定システムで厳格に管理されていますので、今後も無事に帰ってきてくださいね」
「もちろんだ! エリにゃん査定システム……覚えたからな! またね、エリにゃん!」
「はい。またお会いしましょう、吉岡さん。スミレさんも、お疲れ様でした」
エリナが軽く手を振りながら微笑む。
「さて、たまには煽られる側になるとしようか!」
「煽られて顔を赤くする吉岡さんも、たまには見てみたいですね」
そんな話をしながら、俺たちはギルド奥の集合用スペースに向かった。
間仕切りの札を確認しながら進み、アンチテーゼの区画に入る。
「戻ったぜ! 野郎ども! イイ女たち!」
「おかえりなさい! 吉岡先輩! スミレ先輩!」
「スミレ、怪我はないか? 吉岡に穢されていないか? 無事か?」
ナナと宮坂が同時に反応する。
その場には、相良隊とリカ隊が揃っていた。
霧島隊だけ戻っていない。
「宮坂くん、心配してくださってありがとうございます。私は見ての通り無事です。治療所にも立ち寄っていません」
スミレが宮坂にペコリと頭を下げる。
その発言を聞いて、宮坂は安堵の息を吐いた。
「霧島たちはまだのようだな! では、彼らが戻る前に今日の結果について話そう!」
俺はいつも通り中央寄りの席に座った。
テーブルを挟んだ向かい側には誰も座っていない。
スミレは俺の隣に座り、テーブルの下で袖を掴んでくる。
しかし、アクセルの合図は出してこなかった。
「私の隊は昨日と変わらず第2全8。特に危なげなかったわ」
リカがワインレッドの髪を掻き上げながら言ってのける。
「俺たちも第2全8だ。攻略証明も全員取得している。皆の報告を参考に戦ったので、危険個体やボスは危なげなかった。ただ、序盤に佐伯が怪我をした。その治療をするため、全員で治療所に戻った。帰ってきたのは30分前ぐらいだ」
相良が淡々と報告する。
「慎重な相良が怪我人を出すとは珍しいな」
「しかも序盤でしょ? 何があったの?」
リカが驚いた様子で尋ねる。
どうやら、相良隊の戦果についてはリカ隊も知らなかったようだ。




