049 空の敵
「そういえばそうだったな。では、今の話はナシだ。すまない。忘れてくれ」
「いえ、話自体はアリです……。ただ、まだ承諾していないというだけで……」
スミレが恥ずかしそうに俯く。
その反応を見て、俺はスミレの言いたいことを察した。
「要するに合意形成を軽んじず、段階を踏みなさいという話だな! 失礼した! では、魔物の殲滅後、ここでイチャイチャしよう! 君を押し倒して、子供向けの番組では映せないあんなことやこんなことをしたい! いいかな?」
「はい……それならかまいません。お察しいただきありがとうございます」
スミレが頬を赤くしたまま微笑んだ。
「やれやれ、変わった女だな! そういうところは順序を大事にするのか!」
「私が言っても説得力がないかもしれませんが、誰でもいいわけではございませんので……」
「だが、俺とはそこまで話したことないだろう! 俺の下の名前も知らないはずだ!」
「それでも、キスはもうしました。十分ではありませんか?」
スミレが挑発するような目で俺を見る。
「その目! やっぱり君はいい女だ! ますます気に入った! さあ、話は以上だ! 敵を倒すぞ! まずはあそこにいるザコからだ!」
前方に豚ほどの大きさのネズミ型モンスターがいた。
数は6体で、比較的近い距離に集まっている。
この素晴らしい場所にそぐわないその魔物は――。
「麦穂マウスっぽいですね」
「というか、そうに違いない! 討伐依頼のうち、6体いるのはそいつだけだ!」
「どういう風に戦いますか?」
「俺の大太刀で薙ぎ払ってくる。スミレ、君は後ろで観戦していなさい」
「わかりました」
「では、行くぞ! うおおおおおおおおお!!!!!!!」
俺は太刀を鞘に収めたまま駆け出した。
大太刀なので、脇ではなく背中に担いでいる。
さらに、その上から背負い袋を背負うという独特のスタイルだ。
俺が突っ込むと――。
「ゴブゥ!」
マウスの少し手前にゴブリンが伏せていた。
予想外の事態だったが、こうしたトラブルは想定済みだ。
「ふん!」
俺の体が自然に動き、背負っている大太刀を抜く。
そのまま流れるような剣捌きで、伏せていたゴブリンをまとめて倒した。
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討伐:丘ゴブリン×4
PT:2人 人数補正:90%
獲得:144G / 144EXP
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「一振りで4体まとめてですか……!」
スミレが驚いている。
「カッコイイだけじゃないんだぜ! この剣は! キエエエエエエエエエエイ!!!!!!!!」
そのまま当初の狙いだったマウスとの戦闘を開始する。
「食らえ! 燕返し!」
実際の燕返しを知らない俺は、独自の燕返しを繰り出した。
まずは右上から左下に向かって振り抜く。
そこから刃を上に向けて大きく切り上げる。
これが吉岡流の燕返しだ。
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討伐:麦穂マウス×5
PT:2人 人数補正:90%
獲得:135G / 135EXP
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武器のリーチを利用して、ここでも一気に倒す。
しかし、まだ1体残っていた。
ぎりぎりのところで刃に当たらなかった個体だ。
「ふん!」
軽く突き刺して仕留める。
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討伐:麦穂マウス×1
PT:2人 人数補正:90%
獲得:27G / 27EXP
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これで戦闘終了だ。
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【戦闘結果ログ】
討伐:麦穂マウス×6 / 丘ゴブリン×4
PT:2人 人数補正:90%
獲得:306G / 306EXP
所持金:2,303G → 2,609G
レベル:Lv.8 → Lv.9
経験値:652 → 178/830EXP
依頼進捗:麦穂マウス討伐 6/6・達成
依頼進捗:丘ゴブリン討伐 4/4・達成
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さっそくレベルが上がった。
実にいい滑り出しだ。
「さて、魔石の回収っと」
敵の死体が魔石になったので拾おうとする。
だが、ここで予期せぬ事態が起きた。
「吉岡さん、背負い袋が邪魔そうですね」
「うむ……。鞘が突っかかってかがみにくいな」
カッコイイ大太刀が、魔石を拾うという行為の妨げになっていた。
すかさずスミレが動き、代わりに魔石を集める。
「魔石は私が持ちますね」
「助かる。見た目的にも美しくないし、ギルドに戻ったら背負い袋を返却するか。大太刀を使う間、俺は背負い袋を持たずに戦う!」
「吉岡さんらしい判断だと思います」とスミレが笑う。
「さあ、この調子でガンガンいくぞ! 早く済ませて、君を麦畑に押し倒したい!」
「そういう理由ですか……」
スミレが頬を赤らめながら「でも、わかりました」と頷いた。
◇
次の戦いも順調だった。
角の生えた羊と、可愛らしいスライムが相手だ。
「吉岡術草刈りアタック! さらにスタスト!」
俺は大太刀を振り回し、魔法もぶっ込んだ。
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【戦闘結果ログ】
討伐:跳ね角シープ×4 / 風草スライム×3
PT:2人 人数補正:90%
獲得:378G / 306EXP
所持金:2,609G → 2,987G
レベル:Lv.9
経験値:178 → 484/830EXP
依頼進捗:跳ね角シープ討伐 4/4・達成
依頼進捗:風草スライム討伐 3/3・達成
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あっさり終了だ。
「これで残るのは風切りホークと危険個体とボスか」
「ボスのオーガ以外、空を飛ぶ敵ばかりですね」
「つまり、上を向いていればいいわけだ!」
大太刀の間合いにスミレが入らないよう、少し距離を空けて歩く。
こうしておけば、敵が来ても即応可能だ。
そして、この考えは正しかった。
「吉岡さん、空から来ます!」
「あれは風切りホークだな! 迎撃するぞ!」
前方の空から、5体の鷹型モンスターが隊列を組んで迫ってきている。
かなりのスピードだ。
「この距離だと当たらなさそうだが……食らえ! スタスト!」
まずは〈スター・ストライク〉で仕掛ける。
当たればラッキー、外れたら太刀で仕留める二段構えだ。
「キュイッ」
案の定、ホークたちは俺の攻撃を避けた。
さらに左右に展開して、俺とスミレを同時に襲う。
俺に3体、スミレに2体で仕掛けるつもりだ。
「スミレ、いけそうか?」
「はい! 平気です! ただ、倒せる自信はありません!」
「それは俺に任せろ!」
俺はまず、スミレを狙う2体に魔法を連射した。
それから、その隙を突こうとした残り3体を大太刀で返り討ちにする。
敵は素早かったが、レジェンド級の剣術をもってすれば対処可能だ。
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討伐:風切りホーク×3
PT:2人 人数補正:90%
獲得:108G / 81EXP
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「残るはお前たちだ!」
俺は魔法と大太刀で残りを仕留めようとする。
しかし、これには思ったよりも手こずった。
「こいつら……! 逃げまくりやがって!」
俺の強さに恐れおののいたのか、敵が守りに入ったのだ。
大太刀の間合いから完全に抜けて、魔法の射程ギリギリを保っている。
「ええい! ちょこまかと!」
魔法を連射しながら敵に突っ込む。
その時だった。
「きゃあ!!!!」
スミレの悲鳴とともに、彼女のユニークスキル【聖花の結界】が発動した。
俺の周囲に白い花の結界が現れる。
「スミレ!?」
慌てて振り返ると、スミレは危険個体に襲われていた。
見た目から察するに、おそらく鎌羽グリフォンだ。
「こいつ! スミレから離れろ!」
俺は慌てて引き返し、グリフォンに魔法を放つ。
「キュイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ!!!!」
グリフォンは甲高い声で鳴くと、スミレから離れた。
その際、俺の魔法を二発受けたが、死にはしなかった。
一気に高度を上げていく。
「大丈夫か!?」
「はい! 私は大丈夫です! ……! 吉岡さん、後ろ! ホークが来ています!」
今度は風切りホークの残党だ。
俺の背後を突こうとしていた。
「お前らは逃がさん!」
すぐさま太刀で返り討ちにする。
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討伐:風切りホーク×2
PT:2人 人数補正:90%
獲得:72G / 54EXP
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「あとはグリフォンか?」
そう言って顔を上げるが、グリフォンの姿はなかった。
よくよく探すと、かなり遠くを飛んでいることに気づいた。
こちらに背を向けて、一心不乱に逃げている。
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【戦闘結果ログ】
討伐:風切りホーク×5
PT:2人 人数補正:90%
獲得:180G / 135EXP
所持金:2,987G → 3,167G
レベル:Lv.9
経験値:484 → 619/830EXP
依頼進捗:風切りホーク討伐 5/5・達成
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「すみません、吉岡さん……」
スミレが申し訳なさそうに謝る。
「いや、今のは俺のせいだ。視野が狭くなっていた」
ここでナナの存在の大きさを思い知る。
彼女の【スター・レーダー】があれば、グリフォンが迫った時点で気づき、奇襲を防げただろう。
「幸いにも敵は離れていきました。クールタイムの終了まで待ったら進みましょう」
スミレがホークの魔石を集めながら言う。
しかし、俺の判断は違っていた。
「進まない。撤退する」




