↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
48/108

048 アクセル全開

「吉岡さん……本当に悪いお方ですね……」


 スミレは顔を赤くしたまま笑うと、俺との距離を詰めた。

 もはや互いの肩があたる距離だ。


「風が足りないなぁ……【追い風】がさ……」


 俺がニヤニヤしながら秘密の合図を送る。


「まだですか……」


 スミレは体を俺のほうに傾けてきた。


「スミレ、なにしてるんだ」


 宮坂が困惑したようにスミレを見る。

 黒瀬も唖然とした様子で固まっていた。


「宮坂と黒瀬の反応、たまらんなぁ」


 俺はニヤニヤしながら、スミレにだけ聞こえる声で呟く。


「そうですね。でも、ほどほどにしないとバレてしまいますよ」


 と言いつつ、スミレは俺の袖を二回引いた。

 これにはさすがの俺も驚き、笑いながらスミレの顔をのぞき込む。


「マジで?」


 驚く俺に対し、スミレは「はい」と頷いた。

 恥ずかしそうに頬を赤らめているが、口元は愉快げに笑っている。


「君に対する評価が甘かったようだ。思った以上に悪い子だな」


 俺はスミレの肩に腕を回し、「これでどう?」と尋ねる。


「吉岡、スミレから離れろ」


 宮坂が低い声で言う。

 先ほど相良に注意されたため、必死に声を抑えていた。


「宮坂が怒っているぞ? どうする?」


「困りましたね……」


 スミレは言葉どおり困ったような顔をしている。

 それでも、俺の袖を二回引いた。


「嘘だろ」と、俺は吹き出しそうになる。


 するとスミレは、さりげなく俺の耳元で囁いた。


「吉岡さん、追い風です」


 滅茶苦茶だ。

 俺よりもブレーキが壊れている。

 俺よりもアクセルを踏んでいる。

 最高だ。


「なら、とことん楽しませてもらおう!」


 俺は次の瞬間、座ったままスミレの唇を奪った。

 彼女の後頭部を手で押さえ、唇を重ねて舌を貪る。

 スミレは一瞬驚くが、すぐに舌を絡めてきた。


「「なっ……!」」


 これには宮坂と黒瀬が同じように驚く。

 他のメンバーも驚愕していた。


「吉岡くん、何してるの!?」


 カホも声を荒げる。


「吉岡先輩!?」


「吉岡くん、ずいぶんと見せてくれるわね」


 リカの笑みにも、いつもの余裕がなかった。


「これで満足してもらえたかな?」


 ディープキスを終え、俺はスミレに尋ねた。


「はい……満足しました」


 スミレが真っ赤な顔で俯く。

 これまでと違い、純粋に照れていた。


「吉岡ァアアアアアア!!!!!!!!!!!!」


 宮坂がまたしても爆発する。


 今度は黒瀬も止めなかった。

 彼は宮坂と違って静かだが、目は血走っている。


「宮坂、よせ」


 相良が注意するが、宮坂は「うるせぇ!」と止まらない。


「宮坂くん、今のは私が求めました」


 今度はスミレが言った。

 静かだが、強く、はっきりした声だ。


「スミレが……求めた……?」


「はい。ですから、静かにしてください」


「う、嘘だ。吉岡に言わされてるんだよな……?」


 宮坂が顔を真っ青にして崩れる。


「スミレ……あなた、そういうキャラだったのね」


 リカも苦笑している。


「ユズ先輩がいなくてよかったです。いたら収拾がつかなくなっていました……」


「とかなんとか言って、ナナだって心中穏やかじゃないでしょ? 顔に出てるよ?」


 アヤがニヤニヤしながら茶化す。


「吉岡さんは私の求めに応じただけです」


「そういうことだ、宮坂。すまんな! 青春は甘いだけではない! 苦いこともある!」


「甘い部分しか吸っていない人の言うセリフじゃないわね」


 リカが呆れ顔で笑う。

 次第にいつもの余裕を取り戻していた。


「食事は済んだ。出発しよう。十分すぎるほど目立ってしまった」


 相良が立ち上がり、それに佐伯、三船、戸塚が続く。


「私たちも行きましょう」


「はい! 吉岡先輩、スミレ先輩、またです! スミレ先輩……負けませんから!」


 リカ隊は相良隊と別の方向から出口に向かう。

 去りゆくナナの後ろ姿に向かって、三船が「白瀬さん……」と呟いた。


「宮坂、行くぞ」


「…………」


 黒瀬が声をかけても、宮坂は動かない。

 抜け殻のようになっていた。


「やれやれ」


 黒瀬は放心状態の宮坂を強引に立たせる。


「スミレ、吉岡とは……いや、いい。ただ、悪趣味なことは控えてくれ。君には似合わない」


 黒瀬は困惑した様子でそう言うと、宮坂を連れて去って行く。


「今の黒瀬の意見は、誰がどう聞いても正しい! しかし、君に悪いことは似合う! なぜなら君は悪い子だ! しかも、とびきりの畜生である!」


「畜生だなんて……吉岡さんはひどい方ですね。ですが、私がそういう人間だとしたら、吉岡さんは幻滅されますか?」


「まさか! 許容範囲だ! 全員が笑顔なんてあり得ない! 日常は戦争だ! 笑顔の裏には涙がある! 君は残酷で冷酷だが、俺も吉岡ハーレムランドなどと謳っている以上は同類だ! いわば同じ穴の狢である! 気に入ったぞ!」


「同族嫌悪にはならないのですね」


「どちらかといえば悪友だ! さあ、行こうぞ! 清楚でお淑やかな仮面を被った悪い子よ!」


「わかりました」


 俺たちも立ち上がり、受付に向かった。


 ◇


 残念ながら、今朝の受付嬢もエリナではなかった。

 昨日もそうだったが、彼女は遅番に回っているのだろうか。


「PT申請と第4階層の討伐依頼ですね、かしこまりました」


 そんなこんなで、受付嬢を口説くことなく討伐依頼を受注した。


---------------------------

・[通常] Lv.8 麦穂マウス:6体(260G)

・[通常] Lv.9 風切りホーク:5体(290G)

・[通常] Lv.10 丘ゴブリン:4体(320G)

・[通常] Lv.11 跳ね角シープ:4体(350G)

・[通常] Lv.12 風草スライム:3体(380G)

・[危険] Lv.12 鎌羽グリフォン:1体(430G)

・[危険] Lv.13 暴風ワイバーン:1体(580G)

・[ボス] Lv.14 風車オーガ:1体(1,010G)

---------------------------


「この階層は飛行タイプの魔物が多そうだな」


 スミレとポータルに向かって歩く。


「ですね。私は飛行モンスターに対する攻撃手段がありません。近づいてきた敵を迎撃するか、吉岡さんの魔法にお任せする形になりそうです」


「相手の動き方次第だが、俺が対処する! 魔法もそうだが、俺には最強の大太刀があるからな!」


 今日はFランク武器〈雫石の大太刀〉を実戦投入する日でもある。

 トンファーでは攻撃が届かなかった敵にも、この大太刀なら届く。


「令和の佐々木小次郎……でしたっけ?」


「おう! 必殺の燕返しが敵を切り裂くぜ!」


「ふふ、それは楽しみです」


 俺たちは巨大なポータルの前に着くと、いつも通りに念じてダンジョンに転移した。


 ◇


 第4階層〈風車の丘陵〉。

 青い空の下に麦畑が広がり、その名の通り、雰囲気のいい風車が等間隔に並んでいた。


「すごく美しい場所ですね」


「だが、ここはダンジョンだ。イチャイチャするのは魔物を掃討してからにしよう!」


「イチャイチャするのですか?」


「おう! こんないい場所なんだぞ! できれば今すぐ麦畑に君を押し倒したいくらいだ!」


「吉岡さん……私、吉岡隊に移籍してもいいとは言いましたが、そういうことまで承諾した覚えはありません」


 俺の顔から笑みが消えた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【コミカライズ作品】
▲ 画像クリックで漫画サイトへ ▲
▼ 書籍化作品 ▼
【ノクターン】異世界ゆるっとサバイバル生活
~学校の皆と異世界の無人島に転移したけど俺だけ楽勝です~
▼ 代表作 ▼
『異世界ゆるっとサバイバル生活』
異世界ゆるっとサバイバル生活 第1巻 異世界ゆるっとサバイバル生活 第2巻 異世界ゆるっとサバイバル生活 第3巻
異世界ゆるっとサバイバル生活 第4巻 異世界ゆるっとサバイバル生活 第5巻 異世界ゆるっとサバイバル生活 第6巻
『成り上がり英雄の無人島奇譚』
成り上がり英雄の無人島奇譚 第1巻 成り上がり英雄の無人島奇譚 第2巻 成り上がり英雄の無人島奇譚 第3巻
成り上がり英雄の無人島奇譚 第4巻 成り上がり英雄の無人島奇譚 第5巻
▲ 各書影をクリックで各巻の公式ページへ ▲
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。