↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
45/108

045 均等な愛作戦

 みんなの視線がスミレに集まる中、スミレは言った。


「いえ、冗談ではありません。吉岡隊に移籍してもいいと考えています」


「それだったら俺と組もう! 宮坂隊だ! 俺も隊長になる!」


 宮坂が立ち上がった。


「落ち着け、宮坂」と黒瀬が宮坂を座らせようとする。


「お前は何で落ち着いているんだよ、黒瀬! スミレが吉岡隊に行こうとしているんだぞ!」


「スミレが決めたことだ。口を挟む権利はない」


「またそれか! 大人ぶりたいだけじゃねぇかよ! それでスミレが吉岡に奪われるまで見てるつもりか!」


「そうは決まっていない。スミレは吉岡隊に行ってもいいと言っただけだ。吉岡との私的な関係については触れていない」


「宮坂くん、黒瀬先輩のおっしゃるとおりです。私は『吉岡隊に移籍してもいい方は挙手してください』とのお声がけに対し、手を挙げただけです」


 スミレが困ったような顔で宮坂を見る。


「私とミオも手を挙げたんだけど、もうスミレで決まりな空気だね」


 アヤが笑うと、ミオはこくりと頷いた。


「そしてカホが手を挙げていない! 俺たち結構いい雰囲気だったじゃん!」


 俺が喚くと、カホは「まぁね」と笑い、続けて言った。


「吉岡くんのことが嫌なわけじゃないよ。今はリカ隊にいるほうが貢献できると思っただけ。吉岡くんに教わり、それから自分でも改良したゴーレム兄弟のロープ戦術、すごく役に立ってるの」


「カホ……つまり、吉岡ハーレムランドに入国する意思は変わらないが、今はあえて離れるわけだな! あえて!」


「ハーレムランドへの入国意思は今のところ未定だけど、大体そんな感じ」


「ならば、よかろう! 残る三名から決めよう! しかし、早川の負傷を考慮し、アヤは今回のハーレム選考から除外とする! 傷に響くと困るからな! よってミオかスミレのどちらかとナナのトレードだ!」


 早川は顔をパッと明るくした。

 しかし、何か言おうとして何も言わなかった。


「吉岡くん、それは配慮になってるの? それに私、早川とは何もないよ? というか、そもそも配慮すること?」


 アヤがニヤニヤしながら早川を見る。


「ぐっ……! アヤ先輩……! 俺、強くなりますから!」


 早川はそれだけ言った。

 少し会話になっていない気もしたが、気にしないでおこう。


「配慮ではない、考慮だ! アヤ、言葉には気をつけるように!」


「はいはい、考慮ね」


 アヤは笑いながら手を下ろした。


「吉岡……」


 静かに俺の名を呼んだのは戸塚だ。

 ミオが候補に入っていることで、俺たちのユウゴもピリピリしていた。


「……ユウゴ、私もスミレと同じ。移籍してもいいというだけ」


「わかってる」


 宮坂とは違い、戸塚はそれ以上言わない。


「決めるのは吉岡くんよ。ミオにする? それともスミレにする? どちらを選んでも、場がざわつくわよ?」


 リカがニヤリと笑う。


「だが、どちらを選んでも、三船は安堵する。見ろ、あの顔を。すでに安堵している」


 俺の指摘で、全員の視線が三船に向く。

 三船はナナが吉岡隊から外れると知り、露骨に安堵していた。


「三船くん……」


 ナナが呆れた目で三船を見る。


「ち、違います! 僕は別に、何も考えていません!」


「三船、顔に全部書いてあるぞ」と早川が茶化す。


「早川は黙ってろ!」


 三船は顔を真っ赤にして言い返した。


「さて、ひとしきり反応を見たし、今回はスミレにしよう!」


「わかりました。では、明日から吉岡隊の隊員として活動します」


 スミレがこちらに一礼する。


 こうして、明日の編成が確定した。


---------------------------

【転移5日目の編成】

・吉岡隊:吉岡、スミレ

・霧島隊:霧島、梶原、ユズ、サキ、早川

・相良隊:相良、黒瀬、佐伯、戸塚、宮坂、三船

・リカ隊:リカ、カホ、ミオ、アヤ、ナナ

---------------------------


「吉岡、お前、スミレに触れたらタダじゃおかねぇからな!」


「その忠告は聞けないなぁ。同じ隊で活動するんだ。触れることもあるだろう」


 ここまでなら問題ない発言だ。

 しかし、俺はニヤニヤしながら続けた。


「防具の留め具に問題がないか、武器の構え方が大丈夫か、隅々まで丁寧に触れるだろうなぁ……フヒヒ」


「吉岡ァアアアアアア!!!!!!!!!!」


「吉岡さん、隅々まで丁寧に触れられるのは困ります」


 スミレは言葉に反して口元に笑みを浮かべていた。


「その顔! 本当に悪い子だなぁ! しかし、君のことでこれ以上、宮坂をいじるのはやめておこう!」


 そう言うと、俺は体をナナに向けた。


「ナナ、この二日間、吉岡隊で活躍してくれてありがとう! それに昨夜は大変楽しく過ごせた! ユズに負けまいと、あの手この手で俺を誘惑しようとする姿も素晴らしかったぞ!」


「吉岡先輩……! 嬉しいですが、そういう風に褒められると恥ずかしいです……!」


 ナナが顔を赤くして俯く。


「へぇ、ナナ、私に張り合おうと頑張ってたんだ」


「頑張りました……!」


 三船が「白瀬さん……」とダメージを受ける。


「さて! 次の議題だ! 次は俺が今宵、誰と宿屋で過ごすかだが……」


 俺はちらりとスミレを見る。


「吉岡ァアアアアアアア!!!!!!!!!!!」


 それだけで宮坂が反応した。

 両手持ちの大きなハンマーを手に取る。


「おー、こわ。ま、今日は誘わないから安心していいぞ! 今日一緒に過ごす相手はもう決まっている!」


「はい! 私!」とユズが手を挙げる。


「いや、ナナだ」


「私ですか!?」とナナの目が輝く。


「えー! またナナ? 私が最初に手を挙げたのに!」


「そうしょげるな、ユズ太郎! 君とも二日過ごしただろ? ナナとも二日過ごす! 名付けて〈均等な愛作戦〉だ! この作戦は、ユズとの経験から閃いた!」


「私との経験!?」


「昨日、俺がナナと過ごすって言ったら、君は泣いて喚いただろ? あと俺の褒め方が足りないとも言った。そこで俺は二日ごとに隊員を変え、隊員に愛情をたっぷり注ぐことにした! 事前にシステム化することによって、昨日のような悲劇を避ける狙いがある! 吉岡ハーレムランドの建国にも適した方策と言えよう!」


「なるほど!」


「ずいぶんと吉岡くんにとって都合のいいシステムね」とリカが笑う。


「まあ、今日みたいな感じなら許す! ユズ太郎は吉岡くんの改善の意思を尊重する!」


 ユズが謎のドヤ顔をしている。


「もしかしてユズ、今、『理解できる私、大人の女』みたいなこと思ってる?」


 サキが指摘すると、ユズは「大正解!」と頷いた。


「じゃあ、今日も吉岡先輩といっぱい過ごします! ユズ先輩にも、スミレ先輩にも負けません!」


「ナナちゃん、私は競争に加わっていませんよ。……今は、ですが」


 スミレが含みのある言い方をして笑う。


「今はってなんだ! 今はって!」


 宮坂が速攻で食いつくが、スミレは笑みを浮かべるだけで何も言わなかった。


「吉岡くん、話はまとまったか? 問題なければ今日の報告会を終えるが」


 相良が口を開く。


「おう! 俺の方は問題ない! スミレ、明日の9時にギルドで会おう! 一緒に朝メシを食べるからな! 食堂で待機していてくれ!」


「わかりました」


「じゃあ、私たちリカ隊は防具の新調に行くわ。ナナ、あなたも隊員になったからには付き合いなさい」


「はい! リカ先輩! 吉岡先輩、昨日と同じ宿で21時に……お願いします!」


 リカが立ち上がると、ナナも慌てて立ち上がった。


「あの、リカさん、私は……?」


 スミレがリカを見る。


「スミレは吉岡隊に移籍したから、隊長に決めてもらいなさい」


「スミレ、君も防具を新調したまえ! 武器より防具だ! 明日は第4階層に行くからな! 安全第一!」


「わかりました。では、私もリカさんたちと防具を新調してきますね」


 スミレは立ち上がると、壁に掛かっている槍を手に取った。

 片手用の槍で、ユズやサキの使っているものより明らかに短い。

 左手には、カホと同じタイプの小盾を装備していた。

 防具は、カホと同じ中装備――鋼鉄と革の混合タイプ――だ。


「霧島隊も防具の更新だ。行くぞ。早川は宿屋で休んでいろ。防具は更新済みだし、明日に響くと困る」


「了解です! 明日は怪我しません!」


「吉岡くん、私は明日も無傷で帰ってくるからね! ユズ隊員は明日も大活躍!」


「サキ隊員もね!」


「あー、サキ! 私の真似してる!」


 ユズとサキが話しながら出て行く。

 その後もぞろぞろと席を立ち、霧島隊、リカ隊、スミレがいなくなる。

 スミレの後を追うように宮坂が出て行き、その宮坂を監視するように黒瀬も続く。


「じゃ、俺も失礼する! 皆さん、また!」


 野郎だけの場所に残る理由もないため、俺は足早にその場を後にした。


 この時点で、時刻は19時30分過ぎだった。

 ナナと合流する21時までには少し時間が余っている。


(エリにゃんでも口説こうかな)


 そう考えて受付のあるスペースへ向かう。

 しかし、そこにエリナの姿はなかった。


「うーむ……。微妙な時間が空いたな」


 周囲を見回す。

 複数ある受付窓口の内、受付嬢がいるのは二つだけだ。

 時間が遅いせいか、受付カウンター付近の掲示板の前に冒険者がいない。


 しかし、このフロア自体には数十人の冒険者がいた。

 大半が数人組で、脚の長いイスに座り、小さなテーブルを囲んでいた。

 一仕事を終えた顔で駄弁っている。


(たまには知らない世界の人間と話してみるか)


 この世界には、地球以外の世界からも多くの人間が転移してきている。

 俺たちと同じく、メビウスの神の都合で強制労働を課せられた同業者だ。


(よし、あの冒険者にしよう!)


 数少ないソロの冒険者がいたので、俺はその一人に目を付けた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【コミカライズ作品】
▲ 画像クリックで漫画サイトへ ▲
▼ 書籍化作品 ▼
【ノクターン】異世界ゆるっとサバイバル生活
~学校の皆と異世界の無人島に転移したけど俺だけ楽勝です~
▼ 代表作 ▼
『異世界ゆるっとサバイバル生活』
異世界ゆるっとサバイバル生活 第1巻 異世界ゆるっとサバイバル生活 第2巻 異世界ゆるっとサバイバル生活 第3巻
異世界ゆるっとサバイバル生活 第4巻 異世界ゆるっとサバイバル生活 第5巻 異世界ゆるっとサバイバル生活 第6巻
『成り上がり英雄の無人島奇譚』
成り上がり英雄の無人島奇譚 第1巻 成り上がり英雄の無人島奇譚 第2巻 成り上がり英雄の無人島奇譚 第3巻
成り上がり英雄の無人島奇譚 第4巻 成り上がり英雄の無人島奇譚 第5巻
▲ 各書影をクリックで各巻の公式ページへ ▲
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。