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040 雫石ゴーレム

 念のために後退する。

 すると、震えていた水たまりや足下の水滴に変化があった。

 ボスに吸い込まれるようにして集まっていったのだ。

 集まった水は槍と盾に形状を変え、ボスの武器になった。


「今のは装備を作る動作だったのか」


「むしろ攻める好機だったのかもしれませんね……」


「そのようだ。だが、過ぎたことを嘆いても仕方ない。戦おう! 俺が遠巻きに魔法で仕掛ける。ナナは安全圏から射撃だ! 君は俺と違って走ると転ぶ危険がある。無理はするな!」


「わかりました!」


 俺はトンファーを持ってボスとの距離を詰める。

 しかし、完全には詰め切らない。

 ボスとの距離を〈スター・ストライク〉の射程である約15mに保つ。

 そこから左右に走り、〈スター・ストライク〉で仕掛ける。


 地面は依然として滑るが、俺の足取りに乱れはなかった。

 イメージ通りに体が動く――レジェンド級の習熟度のおかげだ。


「それ! 吉岡式スターアタック!」


 秒間3発程度の速度で星を連射する。


「グォ!」


 だが、その攻撃はボスの盾によって防がれた。

 水の塊である盾は、俺の攻撃を受けてもビクともしない。


「どう見ても俺の魔法が無効化されてるぞ! ゴーレムのくせにちょこざいな奴だ!」


「なら、私が!」


 ナナが側面から距離を詰めて矢を放つ。


 カツンッ!


 矢は何とも言えない音を立ててボスの頭に突き刺さった。


「グォォ」


「おお! 効いてるぞ!」


 ダメージは低そうだが、それでもボスは嫌がっていた。

 俺の魔法を盾で防いでいるときとは違う。


「やりました! 吉岡先輩! 私、貢献できてます!」


「君はいつでも貢献している! だが、無理するなよ! ボスがそっちに向くぞ!」


 攻撃を受けたことで、ボスの狙いが俺からナナに変わった。


「グォォオオオオオオオオ!」


 ボスが水の槍を大きく引いた。


 ナナとの距離は約20メートル。

 全力で腕を伸ばしても届く距離ではない。


(それなのに攻撃態勢に入ったということは……)


 すぐに気づいた。


「ナナ! こいつ、遠隔攻撃ができるぞ!」


「え!?」


「グォオオオオオオオ!」


 ボスが槍をナナに向かって伸ばす。

 すると、槍から水の散弾が放たれた。


「きゃあ!」


 ナナが慌てて下がろうとして転倒する。

 しかし、それが奏功した。


 水の散弾はナナの頭上を通り過ぎたのだ。

 立っていたら胴体から頭部にかけてやられていた。


 威力は不明だが、大ダメージは避けられないだろう。

 ナナにはレベル差補正とランク差補正が生じている。


「こいつ! よくも俺の輝く一等星ちゃんを!」


 俺はボスの背後に回り込んで魔法を発動した。

 さすがにこの攻撃は盾で防ぐことができない。


「グァアアアアアアアアア!」


 ボスの悲鳴が響く。


「「効いてる!」」


 俺とナナが同時に叫んだ。


「どうやら盾で防がれなければ通用するようだな!」


 そうと分かればあとは楽勝だ。


「いくぜ! 吉岡式トンファー術! 高速機動!」


 距離を詰めるイメージをして、一気にボスの懐に潜り込む。


「この距離なら盾で防ぐ余裕はねぇだろ!」


 そこからは〈スター・ストライク〉の連発だ。

 ボスの足下をちょこまかと動きながらひたすら攻撃する。


「グォ! グォオオオオオオ!」


 ボスがダメージを受けつつも反撃してくる。

 装備を槍と盾から二刀に変え、振り回してきた。


「遅い遅い遅い! 昨日戦ったマンティスのほうが速かったぜ!」


 ボスと言えども所詮はゴーレムだ。

 動ける速度には限界があった。

 一撃は重いかもしれないが、当たらなければ意味はない。


「すごい! 吉岡先輩、敵を圧倒しています!」


「このまま一気に押し切るぞ! キエエエエエエエエエエエエエエエイ!!!!!!!!」


 そして――。


---------------------------

【戦闘結果ログ】

討伐:雫石ゴーレム×1

PT:2人 人数補正:90%

獲得:693G / 405EXP

所持金:3,597G → 4,290G

レベル:Lv.6 → Lv.7

経験値:659 → 374/730EXP

依頼進捗:雫石ゴーレム討伐 1/1・達成

攻略証明:第3階層・取得

---------------------------


 約15分に及ぶ戦いの末、俺たちは勝利した。


「大勝利! レベル差補正があったから、詰めてからもしぶとかったな!」


「ですが、完封に近い勝利でした!」


「ナナの矢が大きかったな」


「私の矢?」


「ボスの頭にちょこんと当てたあの一発さ。あれのおかげで、盾以外を狙う気になれた」


「じゃあ、私、貢献できたんですね!」


「おうよ! 今日も貢献しまくりだ!」


 ボスの魔石を回収すると、俺たちは安堵の息を吐いた。


 ◇


 約1時間かけてギルドに戻ってきた。


「まだ13時半か」


「今日はいつも以上に早い帰還になりましたね」


 掛け時計を眺めつつ、俺たちは列に並ぶ。

 残念ながら、またしてもエリナの姿がなかった。

 エリにゃんポイントはお預けだ。


「時間に余裕があるし、昼メシを食ったら第1階層の攻略もしておくか」


「え? またダンジョンに行くんですか?」


「第1階層なら魔法を連発すりゃ余裕だ。ナナの攻略証明を取得するのにもちょうどいい」


「そっか。私、第1階層の攻略証明を持っていなかったんだ。じゃあ、吉岡先輩は私のために……?」


「おう! あと、お金を稼ぎたい! 俺の解釈が正しければ、別の階層の討伐依頼は受けられるはずだ。受付嬢に確認してみよう」


「わかりました!」


 話していると、俺たちの番がやってきた。

 まずはいつもどおりに依頼報酬を受け取り――。


---------------------------

【依頼報酬ログ】

・[通常]雫石スライム:230G

・[通常]灰耳バット:260G

・[通常]小爪コボルト:280G

・[通常]水晶モール:310G

・[通常]洞穴リザード:330G

・[危険]裂岩スコーピオン:380G

・[危険]水晶バジリスク:510G

・[ボス]雫石ゴーレム:890G


総額:3,190G

所持金:4,290G → 7,480G

---------------------------


 魔石の換金も済ませる。


---------------------------

【魔石換金ログ】

・[通常]雫石スライム:10G×6個=60G

・[通常]灰耳バット:10G×5個=50G

・[通常]小爪コボルト:10G×4個=40G

・[通常]水晶モール:30G×4個=120G

・[通常]洞穴リザード:30G×3個=90G

・[危険]裂岩スコーピオン:60G×1個=60G

・[危険]水晶バジリスク:90G×1個=90G

・[ボス]雫石ゴーレム:380G×1個=380G


総額:890G

分配人数:2人

分配後:445G / 残余:0G

所持金:7,480G → 7,925G

---------------------------


 相変わらず魔石の収入はしょぼく、依頼報酬がメインだ。


「質問なんだけど、このあと第1階層の討伐依頼を受けることってできるよね?」


 俺が確認すると、受付嬢は「可能です」と即答した。


「複数の階層の討伐依頼を同時に受注することも可能です。冒険者の中には通常種のみ討伐される方もいますよ」


「なるほど! なら、第1全8の依頼を頼む!」


「承知しました。PTはそのままでよろしいですか?」


「よろしいです! あと俺のエリにゃんに『エリにゃんの吉岡は今日も無事に全8だった』と伝えておいて!」


「かしこまりました。では、次の方、どうぞー」


 あっさり流されつつも、依頼の受注は完了した。


---------------------------

・[通常] Lv.1 青芽ネリュム:6体(180G)

・[通常] Lv.2 草角ラビット:5体(200G)

・[通常] Lv.3 青羽コッコ:4体(220G)

・[通常] Lv.4 若葉ウルフ:4体(240G)

・[通常] Lv.5 土くれゴブリン:3体(260G)

・[危険] Lv.5 大牙ボア:1体(300G)

・[危険] Lv.5 牙群れアルファウルフ:1体(400G)

・[ボス] Lv.7 草冠トロル:1体(700G)

---------------------------


「よーし、ナナ、昼メシを食ったら第1階層に行こう!」


「はい! あ、でも……できれば、お昼は第1階層のお魚が食べたいです」


「アユの串焼きか」


「はい。前にユズ先輩の報告を聞いていて、すごく羨ましくて……」


「なるほど! ナナ、君は大人しい後輩の振りをしてなかなか積極的だな! またしてもユズが拗ねるネタを持ってくるとは、スミレとは違った意味で悪い子だ!」


「そ、そんなつもりじゃありません!」


 ナナが慌てて首を振る。

 その顔は真っ赤に染まっていた。


「よかろう! 俺を巡ってイイ女が争う……良きかな良きかな! では行こうぞ!」


 ギルドに戻って間もないが、俺たちは第1階層に向かった。

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▼ 書籍化作品 ▼
【ノクターン】異世界ゆるっとサバイバル生活
~学校の皆と異世界の無人島に転移したけど俺だけ楽勝です~
▼ 代表作 ▼
『異世界ゆるっとサバイバル生活』
異世界ゆるっとサバイバル生活 第1巻 異世界ゆるっとサバイバル生活 第2巻 異世界ゆるっとサバイバル生活 第3巻
異世界ゆるっとサバイバル生活 第4巻 異世界ゆるっとサバイバル生活 第5巻 異世界ゆるっとサバイバル生活 第6巻
『成り上がり英雄の無人島奇譚』
成り上がり英雄の無人島奇譚 第1巻 成り上がり英雄の無人島奇譚 第2巻 成り上がり英雄の無人島奇譚 第3巻
成り上がり英雄の無人島奇譚 第4巻 成り上がり英雄の無人島奇譚 第5巻
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