037 リカ隊発足
「私の指揮に問題がありましたか?」
佐伯が目を細めた。
「いいえ、佐伯、あなたの指揮に問題はなかったわ。ただ、元々、黒瀬が隊長を務めることに宮坂が反発して、代わりにあなたが引き受けたんでしょ?」
「そのとおりです」
「なら、別にあなた以外の人間が隊長をすることに問題はないはず。経験を積むという意味でも、悪くない案だと思うけど、どうかしら?」
「こちらは問題ございません」と、佐伯が相良を見る。
「……隊員の目星はついているのか?」
相良はわかりやすく嫌そうだった。
「そうね……とりあえず、女だけの隊にしようかしら。カホ、ミオ、アヤ、スミレよ」
リカは口元に笑みを浮かべながら名前を呼んでいった。
その瞬間、ある男が大興奮で「おい!」と叫んだ。
「めっちゃイイ匂いのしそうなPTじゃん! 俺も入れてハーレムPTにしようぜ!」
そう、俺だ。
「吉岡先輩、私がソロになってしまいます」
ナナが頬を膨らませて、俺の脇を肘で突いてくる。
「なら白瀬さんとは僕が組みます!」
三船がウキウキで立ち上がる。
「三船くん、私は今、そういう話をしているのではありません」
「はい……」
一瞬で撃沈した。
「吉岡くんを入れると面白そうだけど――」
リカがそう言った瞬間、相良の眉間に皺が寄る。
それを見て、リカが笑った。
「――相良が嫉妬するからダメね」
「嫉妬はしない」
「拗ねるだけかしら?」
「拗ねもしない」
明らかに拗ねていた。
「熟年夫婦のような雰囲気はよせ! リカ、俺は君のお尻をペンペンしたい! 相良が拗ねようと知ったことではない! だが、今はナナと同じPTであり、今日のメインヒロインは俺の輝く一等星ちゃんことナナだ! だからこの話、お断りさせていただく!」
「私が断った側よ、吉岡くん」
「細かいことはいい!」
「リカが隊長でもいいけど、男女で分けたら俺とスミレが組めないだろ。傍にいなければ守れない」
次に反発したのは宮坂だ。
「宮坂くん、私は大丈夫です」
「俺が大丈夫じゃない」
「お前の都合をスミレに押しつけるな」
「お前は黙ってろ、黒瀬。大人の魅力を見せてるつもりだろうが、ダセェんだよ」
黒瀬が無視したので、リカが話を進めた。
「リカ隊、決定でいいわね? それとも女は男に守られるべきだとでも言うつもりかしら?」
「……問題ない。明日は男女で分ける」
相良が渋々……本当に渋々承諾して、以下の編成に決まった。
【転移4日目の編成】
・吉岡隊:吉岡、ナナ
・霧島隊:霧島、梶原、ユズ、サキ、早川
・相良隊:相良、黒瀬、佐伯、戸塚、宮坂、三船
・リカ隊:リカ、カホ、ミオ、アヤ、スミレ
「ところで、他の人ってレベルいくつあるんだ? 報告会でレベルの報告はしていなかったよな! ちなみに俺はレベル5だぜ! ユズと早川のレベルが5になっていなければ、おそらく俺が単独トップだ!」
「もうレベル5かよ」
宮坂が吐き捨てるように言った。
戸塚も「すごいな」と驚いている。
「推定にはなりますが、報告内容から計算できます」
佐伯がおもむろに紙とペンを取り出した。
あえて入手経路は聞かないでおく。
「こちらが皆さんのレベルと経験値の推定値になります。もし推定結果と異なる場合、報告内容に誤りがあります。その場合はもう一度、第1日目の活動内容から報告内容の検証を――」
「佐伯、そこまでしなくていい。推定結果だけで十分……いや、十分すぎる」
相良が苦笑すると、佐伯は「わかりました」とうなずいた。
「全員で簡単に目を通そう。合っているかどうかは口にしなくていい。佐伯が止まらなくなる」
相良の指示により、佐伯の紙を静かに確認することになった。
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【吉岡隊】
・吉岡:Lv.5 363/640EXP
・ナナ:Lv.3 462/570EXP
【霧島隊】
・霧島:Lv.3 48/570EXP
・梶原:Lv.4 307/600EXP
・ユズ:Lv.4 594/600EXP
・サキ:Lv.3 380/570EXP
・早川:Lv.4 594/600EXP
【相良隊】
・相良:Lv.3 27/570EXP
・黒瀬:Lv.2 502/530EXP
・佐伯:Lv.2 390/530EXP
・戸塚:Lv.2 390/530EXP
・宮坂:Lv.2 502/530EXP
・三船:Lv.2 445/530EXP
【リカ隊】
・リカ:Lv.2 445/530EXP
・カホ:Lv.3 314/570EXP
・ミオ:Lv.2 502/530EXP
・アヤ:Lv.2 445/530EXP
・スミレ:Lv.2 390/530EXP
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「佐伯さんのデータが正しいと仮定した場合、大半がレベル2なんだな」
「少なくとも俺はそうだ。このままでは吉岡との差が開いていく」
宮坂が焦った様子で言う。
「宮坂、お前は吉岡と競っていないだろ」と黒瀬。
「でも、スミレを守るには強さが必要だろ。スミレを守るのは俺の使命なんだ。だから武器もFランクにする」
「宮坂くん、私は別に守ってくださいなんて頼んでいませんよ」
スミレが困ったように言う。
しかし、その口元は少し愉快げに笑っていた。
「悪い子だなぁ! 本当に悪い子だ!」
「なんのことでしょうか」
そう返しつつ、スミレは「ふふ」と笑っていた。
「スミレは悪い子なんかじゃない!」
宮坂が興奮するが、黒瀬に「落ち着け」と言われて黙った。
「それじゃ、これで報告会も終わりだよな! ナナ、いこうぜ! 君の武器を新調したら宿屋へGOだ!」
「はい! ……って、私も武器を新調するんですね」
「当然だ! 君のクロスボウの技量は凄まじい! 後ろで見学しているなんてもったいない! Fランク武器にして、俺と一緒に戦いまくろうぜ!」
「わかりました!」
「そんなわけで諸君、さらば!」
「お先に失礼します!」
俺とナナはギルドを後にした。
◇
「吉岡先輩、私、このクロスボウにします!」
ナナの武器は、思ったよりもあっさり決まった。
最初に足を運んだ武器屋に、彼女の気に入るものがあったのだ。
〈始祖の塔〉でもらった武器を50Gで下取りに出し、さっそく購入する。
「これで今日よりも吉岡先輩の戦いに貢献できます!」
「実に楽しみだ! それにしても新しい武器ってのはいいな! 俺も明日は武器を買うぞ!」
武器屋を出た俺たちは、その足で宿屋を見て回る。
いつの間にやら夜になっており、多くの冒険者が宿屋に入っていく。
「新しいトンファーも楽しみですね!」
「いや、トンファーはクビだ」
「え?」
「もう満足した! そろそろ次の武器に進むときだろう! 俺には【オール・レジェンド】があるからな! どんな武器でもレジェンド級だ! 同じジャンルの武器にこだわる必要はない!」
「なるほど! じゃあ、どんな武器を選ぶのか楽しみですね!」
「だな! ――さて、ここにするか」
足を止めたのは、落ち着いた見た目の個室宿だ。
ユズと利用しているラブホみたいな宿とは、明らかに雰囲気が違う。
「ここは……その、そういう用途でも大丈夫なのでしょうか……?」
「聞いてみりゃいいさ! ダメなら違うところにいこう!」
俺は堂々と中に入った。
「らっしゃい。うちは一般個室宿だよ」
店主は若い男だった。
若いといっても30歳くらいだ。
俺たちよりは明らかに年上である。
「男女での利用は可能かい?」
「もちろん可能だ。ただ、ウチは風呂が狭いぞ。防音は……まぁ悪くないほうだ」
店主がニヤリと笑う。
明らかにこちらの意図を察している。
ナナは顔を真っ赤にして俯いた。
「狭くても風呂があるなら問題ないさ」
俺とナナは折半で支払いを済ませた。
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【支払ログ】
宿泊:一般個室
支出:1,400G
所持金:4,321G → 2,921G
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「部屋は3階の角部屋だ。楽しむのは結構だが、床が抜けない程度に頼むよ」
「配慮しよう!」
店主から部屋の鍵を受け取ると、俺はナナと手をつないだ。
指を絡めて、満面の笑みで言う。
「では行こうか! お楽しみの時間だ!」
ナナは恥ずかしそうな顔でコクリと頷いた。




