031 エリにゃんポイント
「いや、君は戦闘に貢献しているんだ」
「え?」
「頭上の輪っか。ユニークスキルさ」
「それがどう貢献したことになるんですか……?」
ナナはまだ分かっていなかった。
「君はユニークスキルによってボスの居場所を割り出し、俺に教えた。そしてそのまま俺たちはボス戦に突入した。つまり、君の索敵のおかげで戦闘が発生している。有効参加条件はダメージを与えることじゃないと佐伯さんも言っていただろ?」
「なるほど……! そういうことだったんですか……!」
「確信していたわけではないが、自信はあった。無事に取得できてよかったぜ!」
「はい! ありがとうございます、吉岡先輩!」
「礼なんて不要だ。これは吉岡隊の勝利だからな!」
俺たちはボスの魔石を回収し、ギルドに戻った。
◇
ギルドに着いたのは、15時過ぎのことだった。
「吉岡さん、ずいぶんと早いお戻りですね。もう全8攻略したのですか?」
エリナがメガネを上げて俺を見る。
「そうだよー、エリにゃん! 照合して! 換金して! デートして!」
俺は集めた魔石をカウンターに並べる。
「デートをするには、まだエリにゃんポイントが足りませんね」
エリナが笑いながら謎のキーボードを叩く。
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【依頼報酬ログ】
・[通常]白樹モス:200G
・[通常]枝走モンキー:230G
・[通常]樹皮ゴブリン:250G
・[通常]風鳴キツネ:270G
・[通常]苔甲ビートル:290G
・[危険]白樹マンティス:340G
・[危険]白樹アラクネ:450G
・[ボス]白樹トレント:790G
総額:2,820G
所持金:1,816G → 4,636G
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「エリにゃんポイント!? エリにゃん、前よりノリが良くなってる!」
「吉岡さんが毎日無事に帰ってきてくださるからです」
続けて魔石の換金が始まる。
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【魔石換金ログ】
・[通常]白樹モス:10G×6個=60G
・[通常]枝走モンキー:10G×5個=50G
・[通常]樹皮ゴブリン:10G×4個=40G
・[通常]風鳴キツネ:20G×4個=80G
・[通常]苔甲ビートル:20G×3個=60G
・[危険]白樹マンティス:60G×1個=60G
・[危険]白樹アラクネ:80G×1個=80G
・[ボス]白樹トレント:340G×1個=340G
総額:770G
分配人数:2人
分配後:385G / 残余:0G
所持金:4,636G → 5,021G
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「吉岡先輩、一気にお金が増えましたね!」
「そうだな! 俺でさえ5,000Gに到達したんだ。ナナは7,000G近くあるんじゃないか!?」
「いえ、さすがにそこまでは……! ただ、レベルは1から3にあがりました! もうすぐ4になります!」
「実に素晴らしい! NEW吉岡隊は絶好調だ! エリにゃん、転移3日目にしてデュオで第2階層攻略ってすごくない?」
「そこは素直にすごいです。早ければいいというものでもありませんが、吉岡さんの場合は怪我もしていませんし、非の打ち所がありません」
「だよね! それもこれもエリにゃんの癒やし効果のおかげかな? おかげだよ!」
「ありがとうございます。そうおっしゃっていただけると、エリにゃんも嬉しいです」
エリナが俺の目を見て微笑む。
「エリにゃん、今後も期待しておいてくれよ! このまま活躍して、エリにゃんポイントを貯めたらデートに誘うから!」
「はい。楽しみにお待ちしております」
「よーし、ナナ! メシを食いに行こう! 祝勝メシだ!」
「はい!」
俺たちは食堂に移動した。
◇
食堂は中途半端な時間のせいか空いていた。
ホールスタッフも暇そうに注文を待っている。
「吉岡先輩、祝勝メシはノーマルセットですか?」
「当たり前だ。メインは焼き肉だ!」
「じゃあ、私も焼き肉にします!」
俺は手を挙げてスタッフを呼び、ノーマルセットを頼む。
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【支払ログ】
食事:ノーマルセット
支出:700G
所持金:5,021G → 4,321G
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注文した時点でログが表示される。
「あー、腹が減ったなぁ! 早くこねーかなぁ!」
「ボスまで倒したあとのご飯っていいですね! 達成感があります!」
向かいに座っているナナが声を弾ませる。
「思ったんだけど、ナナはどうして向かいに座っているんだ?」
「え?」
「隣においでよ。せっかくだから並んで食べようぜ!」
「いいんですか?」
「おうよ! 隣のほうがイチャイチャできるし、隣に来ない手はないだろ!」
ナナの顔が赤く染まる。
「そういう言い方をされると行きにくいのですが……」
「じゃあ、来ない?」
「いえ! 吉岡先輩の隣に行きます!」
ナナは立ち上がり、すっと俺の隣に座り直した。
「これでお触りできる距離になった!」
俺はニヤリと笑い、ナナの肩を抱き寄せる。
「よ、吉岡先輩……! お触りって……?」
「またまたー! とぼけちゃって! この距離、この雰囲気! カップルみたいにイチャつくって意味に決まってるだろ! 君もそのつもりだろ?」
「それは……」
「違うの?」
「違わないです……」
「だよね!」
ということで、俺とナナはさながらカップルのようにイチャついた。
ホールスタッフが「場をわきまえろよ」と言いたげな目でこちらを見ている。
その視線に、ナナは最初、恥ずかしそうにしていた。
しかし、次第に周囲のことなど忘れていき――。
「キスしていい?」
「……はい」
「目を閉じて」
「……んっ」
――ついにはキスまでしてしまった。
◇
「「ごちそうさまでした!」」
イチャイチャも食事も終わった。
時刻は16時を過ぎている。
「さて、報告会の時間だ!」
「はい! でも、その前に一つだけいいですか?」
立ち上がったところで、ナナが言った。
「一つじゃなくて、二つでも三つでも四つでも五つでもいいよ?」
「い、いえ、一つだけです……!」
「聞こう! 言ってみ?」
「じゃあ……!」
ナナはしばらくもじもじとしたまま口を開かなかった。
顔を真っ赤にして、「あー」「えっと」「その」を繰り返している。
その時点で、俺は大体の用件を察していた。
それでも、ナナが切り出すまで待った。
「もし、吉岡先輩が嫌じゃなければ、その……今日の夜は、私と泊まっていただけないでしょうか……!」
案の定、ナナの用件は夜のお誘いだった。
「昨日、一昨日と、俺はユズと個室宿で過ごしている。それは知っているよね?」
「……はい」
「君の誘いに応じたら、ユズはきっと嫉妬して頬を膨らませるよ?」
「……分かっています」
「それでも誘うんだ?」
「吉岡先輩が嫌じゃなければ……お願いします……!」
ナナは目を潤ませながら、それでも真っ直ぐに俺を見た。




