027 スター・ストライク
「ほう? 〈スター・ストライク〉とな……?」
ナナの選んだ教本は、Fランク魔法〈スター・ストライク〉だった。
名前からは今ひとつ効果がわからない。
さっそく開いて、1ページ目を確認してみた。
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【名 前】スター・ストライク
【ランク】F
【種 類】魔法
【効 果】前方に光属性の星を飛ばす。星の直径は約45cm。
【制 限】クールタイム:10分
【習熟度】
・ビギナー :【クールタイム】10分【威力】極小【射程】5m
・ノーマル :【クールタイム】5分 【威力】極小【射程】7m
・エリート :【クールタイム】5分 【威力】小 【射程】10m
・マスター :【クールタイム】2分 【威力】中 【射程】10m
・レジェンド:【クールタイム】0秒 【威力】中 【射程】15m
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「総合的な使いやすさをメインに考えました! レジェンド級であれば、クールタイムがなくなるので連射できます! 射程も伸び、威力もそれなりにあります!」
「たしかに」
「ふっ、レジェンド級の項目なんざ当てにならないよ。レジェンド級は天賦の才を誇る者が、並々ならぬ努力の果てにたどり着ける境地さ。前提として見るのは間違いだよ」
老婆が老婆心から口を挟む。
俺のユニークスキルを知らないので、当然の反応だ。
「でも理想は大事だろ! いいんだよ、これで! お姉さん、俺はこの教本を買うぜ! ナナが自分のユニークスキル【スター・レーダー】と関連付けて選んでくれたんだ! 効果も十分だし文句はねぇ!」
「吉岡先輩……! バレていましたか……!」
ナナの顔がますます赤くなる。
「おうよ! でも、能力もちゃんと見て選んだんだろ?」
「はい! 名前に惹かれたのは確かですけど、能力もこれが一番だと思いました!」
ナナが自信を持って言う。
「なら完璧だ!」
ということで、俺は教本を購入した。
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【支払ログ】
教本:[F]スター・ストライク
支出:3,000G
所持金:5,081G → 2,081G
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「まいどあり。念のため使用方法を説明しとくけど、手に取って念じれば終わりだ」
「さすがはメビウス! 何でも念力で解決だな!」
さっそく教本を使用し、魔法を習得することにした。
老婆に言われたとおり念じると――。
ポンッ!
手に持っていた教本が消え、俺の体が一瞬だけ光った。
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習得:[F]スター・ストライク
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表示されたログは、「仮習得」ではなく「習得」になっていた。
俺だからなのか、他の人もそうなのかは不明だ。
それよりも――。
「お! 魔法の使い方が体感でわかるようになったぞ!」
「おお! 本当に使用した瞬間に習得できるんですね!」
「仮習得だけどね」と老婆が笑う。
「ついでに技能枠のセット方法も分かるぜ! 念じれば解決だ!」
忘れる前に〈スター・ストライク〉をセットしておこう。
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【名前】吉岡
【レベル】3 EXP:426/570
【所持金】2,081ゴールド
【ユニークスキル】オール・レジェンド(P)
【技能①】[F]スター・ストライク(レジェンド)
【技能②】未登録
【技能③】未登録
【武器】[G]初期配布のトンファー(レジェンド)
【防具】[G]初期配布の軽装備
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「これで準備万端だ! ナナ、明日は頑張ろうな! 朝の10時に食堂集合だ! 一緒に朝メシを食べるぞ!」
ユズとの合流時間が迫っているため、ナナと解散することにした。
「わかりました! 明日の朝10時、ギルドの食堂ですね!」
ナナの確認に「おう!」と答え、二人で教本店を後にした。
その足で、まずはナナを宿屋に送り届ける。
「ここです!」
「4人部屋なのか。男女別々なのか?」
俺は宿屋を眺めながら尋ねた。
「はい、別々です。昨日はアヤ先輩、カホ先輩と同室でした。4人目は知らない方でした」
「知らない女!? どんな女だ? イイ女か!? エロそうなタイプ? かわいい系? 胸は大きいか?」
「よ、吉岡先輩……! 反応が激しすぎです……! 残念ながらよくわかりません。私たちが着いた時点で、すでにこちらに背中を向けて眠っておられて……。朝も起きたらすでにいなくなっていました」
「そうか……! 今度イイ女と一緒になったら紹介してくれよな!」
「覚えておきます……! でも……」
「でも?」
「い、いえ、何でもありません!」
ナナは真っ赤な顔をぶんぶんと横に振った。
「もしかして、『イイ女なら目の前にもいますよ』とか言おうとした?」
「……っ!」
ナナが恥ずかしそうに俯く。
先ほどよりも顔が赤い。
なんと図星だったようだ。
「よ、吉岡先輩に合わせて、冗談で言ってみようかなって……」
「いやいや、冗談じゃないよ」
そう言うと俺はナナの顎をつまみ上げて「君もいい女だ!」とニッコリ。
「吉岡先輩……!」
ナナの目にハートが宿る。
完全にメスの顔になっていた。
「しかし残念! 俺は好色家だ! 一人の女を選ぶことはできない! そして! 今まさに! これからユズと魅惑的な一夜を過ごしてくる! そんな俺でもよければいつでも誘ってくれ! 俺は誰のものにもならないが、俺と過ごす権利は早い者勝ちだ!」
俺はナナの頭を撫でた後、「では、また明日!」と走り去った。
◇
颯爽と完璧な解散を決めた俺は、昨日と同じ個室宿にやってきた。
「時間ぎりぎりじゃん!」
ユズは入り口前で待っていた。
「ぎりぎりでもセーフはセーフだ!」
そう言って中に入ると、掛け時計で時間を確認した。
20時58分――本当にぎりぎりだった。
「やっほい、店主! 今日も折半で頼むぜ!」
「はいよ。昨日と同じ部屋だ。好きなだけ楽しみな」
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【支払ログ】
宿泊:一般個室
支出:1,400G
所持金:2,081G → 681G
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「ナナと何していたの? 時間いっぱいまで楽しんでたじゃん」
階段を上がっていると、ユズが俺の腕に抱きついてきた。
「ユズ太郎、君は……わかりやすく嫉妬しているな!」
「うん! だって私は吉岡くんのすごく仲のいい友達だもん! 嫉妬して当然だし!」
「強いな……。ちなみに、ナナと何をしていたかは教えられない! 極秘の作戦を遂行していた!」
「ふーん。じゃあ、空白の時間に何していたか教えてあげないもん!」
「別にかまわないぞ!」
「かまわうでしょ!」
「かまわうってなんだよ」と笑う。
「そこはかまわないと! 吉岡くんも嫉妬してよ! 梶原とイチャイチャしてたかもしれないじゃん!」
「ユズが梶原と?」
俺は笑いながら扉を開け、ユズを先に入れる。
「別に梶原じゃなくても……誰かとそういうのあるかもしれないじゃん! これでも私、結構モテるんだよ?」
「これでもというか、そりゃ普通にモテるだろ」
「え?」
「だってユズ太郎、君は小柄で可愛く、髪は黒のロングで、胸は大きく、黒ニーハイの食い込んだ太ももはエロい。そして何より明るく元気で社交的ときた。つまり君は男ウケの欲張りセットみたいな姿をして、性格まで男ウケがいい! モテないほうがおかしいレベルだ!」
「そ、そういう言い方をされると、嬉しいけど恥ずかしいじゃん……!」
ユズが言葉どおり恥ずかしそうに顔を赤らめる。
「そうやって照れているユズ太郎も可愛いぞ! 嫉妬している姿も悪くない!」
「可愛いって言えば済むと思ってる……! それに私、ユズ太郎じゃないし……ユズだし……!」
「はは、わかってるよ、ユズ」
俺はユズを抱きしめ、唇を重ねた。
それから「今日はどうする?」と耳元で尋ねる。
「……わかってるくせに」
それがユズの答えだった。




