024 編成で問題
「作りたいなら作ってかまわない。ただ、明日のPT編成は食堂でもいいか? 朝にシンプルセットを食べたきりだ。そろそろ何か食べたい」
相良が珍しく自分の空腹を理由に挙げた。
普段なら全体の意見を確認して方針を決める。
よほど腹が減っているのだろう。
「自分の隊が作れるならなんだっていい」
霧島が立ち上がり、食堂に向かう。
それに続いて、俺たちも食堂に移動した。
◇
昨日と同じく、食堂では複数のテーブル席を確保した。
俺の席は四人がけで、隣にユズ、正面にナナと三船が座っている。
俺とユズはノーマルセット、ナナと三船はシンプルセットを食べていた。
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【支払ログ】
食事:ノーマルセット
支出:700G
所持金:5,781G → 5,081G
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「さっそく隊員募集だ。俺の隊はガンガン攻める。戸塚みたいな臆病者はいらねぇ。本気で上を目指す奴だけ来い。多少の怪我は覚悟しろ。効率重視だ。この世界じゃ、多少の怪我は治療所ですぐに治る」
霧島が立ち上がり、水の入ったコップを持って宣言している。
驚いたことに、彼の前にはノーマルセットの料理が並んでいた。
俺がノーマルセットを頼んだため、対抗してきたのだ。
「霧島くんの隊では、軽傷は織り込み済みということですね」
佐伯が言うと、霧島は「そうだ」と迷うことなく頷いた。
(そんな条件で誰がいくんだ……?)
戸塚の顔にはそう書いてあり、俺も同じことを思っていた。
しかし、不思議と希望者はいた。
「俺、入ります!」
真っ先に手を挙げたのは早川だ。
「「本気か?」」
驚いたことに、俺と霧島が全く同じセリフを言った。
「俺だって男ですよ! 吉岡先輩みたいに強くなって活躍したいです! そのために吉岡先輩のそばで戦うのが一番だと思ってたんですけど、それだと戦闘技術が向上しない気がして……」
「まぁ、吉岡隊は吉岡くんが無双するからね」とサキが笑う。
「そうです! そうです! だから、他の隊で腕を鍛えることにしました! それに俺、霧島先輩の軽傷を織り込んで効率重視って考え方に賛成です! だってここは日本じゃなくてメビウスなんですから!」
早川が興奮した様子でまくし立てる。
霧島は嬉しかったようで、かすかに口元が緩んだ。
「そういう理由なら理解できる! よし早川、霧島隊に行ってこい! 吉岡隊からクビだ!」
「クビっすか!? そこは『卒業』とかなんかもう少しマシな言い方してくださいよ!」
皆が笑う。
「これで一人決定だ。他にはいねぇか?」
「俺も霧島隊に入る」
そう言って手を挙げたのは、なんと梶原だった。
「怪我をする気はないけど、ガンガン攻めるのは賛成だから。それと――」
梶原が俺を見る。
「――吉岡に負けたくねぇ」
「え、俺!?」
「当たり前だろ! 自分が主人公ですってツラして、活躍しまくりやがって! それにユズともイチャイチャするし……!」
「要するに嫉妬だな!」
「ああ、そうだ、嫉妬だよ! だから嫉妬しなくて済むようにお前より活躍してやる!」
「梶原、少年漫画の噛ませ犬っぽい!」
ユズが笑いながら言うと、梶原がガクッと傾いた。
「いいじゃん、そういうの。他の隊も経験したいと思ってたし、私も霧島隊に入るよ」
サキが手を挙げる。
「チッ、女か」
霧島が舌打ちする。
「女だからって舐めないほうがいいよ。今日の私、早川より戦えてるから」
「……そうなのか?」と霧島が早川を見る。
「はい……。俺の倍くらい強かったです……」
「ぶっちゃけ、サキは普通に強かったぞ! 害獣駆除の経験があるんだっけ? だからなのか知らないけど、明らかに戦い慣れてた!」
俺が言うと、霧島が「だったらいい」と満足げに頷く。
「すげーじゃん、霧島! お前の隊に早くも旧吉岡隊のメンバーが集結してるぞ! 引き抜きの帝王だな、霧島!」
「引き抜かれているわりには楽しそうね、吉岡くん」とリカが笑う。
「俺、早川、梶原、サキで4人だ。他に希望する奴はいないか?」
霧島の口調が先ほどよりも優しくなる。
メンバーが集まったことで機嫌を良くしているのだ。
非常にわかりやすい。
まさに俺の大好きな霧島そのものである。
(悪くないメンツだけど、もう一枚いないと相手にならないなぁ)
俺も食事を続けながら、霧島隊へのさらなる加入希望者を待つ。
しかし、残念なことに後に続く希望者は現れなかった。
(仕方ない、こうなったら……)
俺は食事を終え、ユズを見た。
幸せそうな顔でトンカツを食べていたユズは、俺の視線に気づくと箸を止めた。
「吉岡くん、トンカツがほしいの? あげないよ!」
「いや、トンカツは不要だ! そうではない!」
「なら、どうしたの?」
「ユズ隊員、君も霧島隊に行こう!」
「「えっ」」
反応したのはユズと梶原だ。
「ぶっちゃけ、今の霧島隊は物足りない。サキは優秀だ。梶原も頑張っている。でも霧島は若葉ウルフに負けるザコだし、早川はもう少し経験を積む必要がある」
「誰がザコだって? ああ?」
「霧島、お前だ! ザコはお前! まさしくザコ!」と俺は満面の笑みで霧島に返す。
「なんだと!」
霧島がテーブルを叩いて吠えるが、俺は無視してユズに言った。
「吉岡隊がどうなるかわからないけど、今のままだと君は我が隊に残るだろ?」
「うん」
「それだと強すぎるんだよなぁ。俺は競争を楽しみたいんだ! だから、君のその強さを霧島に貸してやってもらえんかな? つまり、俺と勝負しようって話だ!」
「吉岡くんとの勝負……それ、面白そう!」
ユズの顔がパッと明るくなる。
「でも、勝負するからには本気で倒しにいくよ!」
「もちろん!」
「私が勝ったら、罰として何でも一つ言うことを聞いてもらうね!」
「何でもは難しいかな! 死ねと言われても死ねない!」
「吉岡くんの今の線引きは妥当です」と佐伯。
「佐伯先輩、そこは妥当性云々じゃないって!」
ユズは笑いながらツッコミを入れる。
「とはいえ、ユズ、可能な限り言うことを聞こう! そして、無理な場合は別の希望を聞く! とにかく何か一つ、俺に可能な範囲で君の希望を叶える……それでどうかな!?」
「それならいいよ!」
「じゃ、俺が勝ったらユズっぱいを揉み揉みさせてもらう!」
梶原が「はぁ!?」と言いながら睨んでくる。
しかし、昨日の件で学んだ彼は、それ以上は言わなかった。
「わかった! 吉岡くんが勝ったらユズっぱい!」
そう言うとユズは霧島を見て「霧島先輩、ユズ隊員が勝たせてあげる!」と笑った。
「勝手に決めてんじゃねぇ」
「じゃあ、断るのか?」
俺がニヤニヤしながら尋ねると、霧島は「そうは言ってない」と鼻を鳴らした。
「やる気がある奴を拒む気はねぇ。来るなら歓迎する。だが、俺は吉岡と違って女だからって甘くしねぇからな」
「今の霧島語を訳すと、『仲間がいっぱいですげー嬉しい』って意味だ!」
「そんなわけねぇだろ!」
霧島は吠えるが、まんざらでもなさそうだった。
「いやあ、それにしても盛大に引き抜かれたなぁ! 残っているのは俺とカホだけかー!」
そう言うと、カホが「それなんだけど……」と言いにくそうに俺を見た。
「私も他の隊に行こうと思ってるんだよね」
「マジで!? ゴーレムを戦力にカウントしてたんだけど!」
「別に吉岡隊が嫌になったわけじゃないよ。むしろ、思っていたよりもずっと良かった。吉岡くんのおかげで攻略証明を取得できたし、独特の知見も得られた。だから、吉岡隊で学んだことを他の隊にも広めたいの」
「吉岡くんには申し訳ないが、サークルの代表としてはすごく助かる意見だ」と相良。
「そうなると……我が吉岡隊のメンバー、もう誰も残ってないじゃん!」




