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異世界まったり冒険者生活 ~女好きの俺、サークルのみんなと異世界に転移する~  作者: 絢乃


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021 奮起の霧島

「そっか、昼過ぎだから退院したんだ。霧島くん、もう平気なの?」


 カホが心配そうに霧島を見る。


「見ての通りだ。傷一つ残っちゃいねぇ」


 その言葉に偽りはなかった。

 俺の見たところ、霧島は元気そのものだ。

 服や装備も綺麗で、血の跡などは残っていない。

 とてもではないが、昨日、血まみれだった人間には見えなかった。


「よかったな! 霧島! メビウスの回復魔法に感謝しないとな!」


 俺がハイタッチを求めて近づくが、案の定、霧島は応じなかった。

 それどころか不機嫌そうに俺を睨んでくる。


「で、吉岡、どうなんだ? 第1階層を攻略したのか?」


「おう! 全8だ!」


 俺はあえて「全8」というワードを使ってみた。

 短縮版コースの霧島も知らないと思ったからだ。

 ところが――。


「二日目で全8……ボスまで倒したのかよ」


 なんとびっくり、霧島は全8を知っていた。

 相良から冊子を受け取ったのかもしれない。

 背負い袋を装備しているため、持っていても不思議ではなかった。


「いや、それがだな、霧島……」


 俺は思わずニヤニヤしてしまう。


「なんだよ」


 霧島の眉間に皺が寄る。


「厳密には、本当に厳密にはなんだけど……」


「もったいぶらずに言えよ、うぜーな」


「実は昨日の時点で第1全8自体は達成してんだ」


「……は?」


 霧島が固まった。


「今日も全8なんだけど、そんなわけだから『二日目でボスまで倒した』という言い方は少し語弊があるかな?」


「初日に全8なんてありえねーだろ」


 霧島の目がカホに向く。

 俺が話を盛ったと思ったようだ。


「吉岡くんの言ってることは本当だよ。吉岡くん、ユズ、梶原くん、早川くんの4人は、昨日の時点で第1全8」


 カホが言いにくそうに答えた。


「マジかよ。……怪我は?」


「梶原が額に軽傷を負っただけだな。それも治療所の回復魔法ですぐに治ったレベルだ」


「…………」


 いよいよ霧島が黙ってしまう。

 わかりやすく悔しそうな顔をしている。

 まさに俺の大好きな霧島だ。


「だから霧島、これだけ言わせてほしい……」


 俺は神妙な顔で言うと、ユズに耳打ちした。


「え? それを私が言うの?」


 ユズが吹き出しそうになりながら俺を見る。


「ユズ隊員、これは隊長命令だ」


「そこで隊長命令! ずるい!」


「嫌な予感がする」とカホが早くも呆れている。


 サキは先の展開を予想できているようで笑いをこらえていた。


「なんだよ。早く言えよ」


 霧島が苛立ち気味に俺とユズを睨む。


「ほら、ユズ隊員」


 俺が笑いながら背中を押すと、ユズは一歩だけ前に出て言った。


「ここでは強い奴が生き残る。じゃあな」


 それは、霧島が始祖の塔で俺に向けて言ったセリフだった。

 話し方まで霧島そっくりである。


「ユズ、お前……」


 霧島の首筋に血管が浮かび上がる。


「違うって霧島先輩! 私は吉岡くんに言わされただけ! 悪いのは吉岡くん!」


 ユズが慌てて俺の後ろに隠れる。


「いや、俺じゃない! 悪いのは霧島、単独で突っ込んでズタボロになって帰ってきたお前だ!」


 俺が笑いながら言うと、霧島は「うるせぇ!」と苛立ち気味に怒鳴った。


「調子に乗るなよ、吉岡。お前はPTだから攻略できただけだろ。こっちはソロで戦わされたんだ。状況がちげぇんだよ。それで勝ったつもりになってんじゃねぇ!」


 その言葉で、俺の顔から笑みが消えた。

 といっても、別に怒っているわけではない。

 むしろ楽しんでいた。


「調子に乗っている点は否定しないが、君の意見には間違いが二つある」


「なんだと?」


 俺は右の人差し指を立てた。


「その1、君はソロで戦わされたのではなく、自分でソロを選んだ。俺は〈始祖の塔〉で、君もPTメンバーにカウントしていた。しかしながら、君が自分でソロを選んだのだ」


「それは……」


 事実なので否定できない霧島。


「その2、俺はソロでも強い。少なくとも若葉ウルフ如きに手も足も出ずに負けることはないだろう! なぜなら俺はオールレジェンドの吉岡だからだ!」


「は? 吹かすのもたいがいにしろよ」


「いや、霧島先輩……吉岡先輩なら、たぶんソロでも余裕だと思います」


 早川が言いにくそうに口を開いた。


「そんなわけねぇだろ」


 霧島が早川を睨む。


「だって吉岡先輩、昨日、危険個体2種を一人で倒したんですよ? それも同時に襲われたのに」


「……危険個体2種を一人でだと?」


「昨日、俺が林の中で危険個体2種と遭遇しちゃって、吉岡先輩に押しつける形になったんです。そのとき梶原先輩は頭の負傷で経過観察中だったからユズ先輩を呼びに行ったんですけど、戻る前に吉岡先輩がどっちも倒しました」


「………………」


 今度こそ、霧島は完全に言葉を失った。


「ありがとう、早川くん! 君のおかげで俺の正しさが証明された!」


「……たまたまだろ」


「そうかもしれないが、今のところ俺が正しい! ということで霧島、悔しかったら結果で示すことだな! 君はソロで戦ったことを言い訳にしたんだ! またソロで戦ったら逃げたチキンボーイとして扱うぞ!」


「は? 上等じゃねぇか。そこまで言うなら俺だって隊長でも何でもやってやるよ」


 霧島に火がついた。

 俺はその反応が嬉しくて、思わず笑みを浮かべてしまう。


「これで霧島隊の誕生だ! いやあ、競争相手がいるっていいなぁ!」


 霧島は「ふん」と鼻を鳴らした。


「そんなことを言っていられるのは今のうちだけだ。日暮れに奥のスペースで報告会をやるってことは、相良さんから聞いた。そこで霧島隊としてやらせてもらうよう頼む」


 そう言うと、霧島は「覚悟しとけよ」と言い残し、ギルドの外に向かって歩き出した。


「霧島、どこに行くんだ?」


「訓練所に決まってんだろ。狩りに出られないんだ。他にやることねーだろ」


「殊勝な心意気だな! 頑張れよ! ここでは強い奴が生き残るからな!」


「うるせぇ! 次そのフレーズ使ったらマジで殺すからな!」


 霧島は怒鳴りながら去って行った。


「アイツ……まだレベル1だよな? なんかそこそこ強そうな風格出してたけど、若葉ウルフにやられて担架で運ばれたんだよな?」


 俺が笑いながら言うと、カホ以外の三人が吹き出した。


「吉岡くん、霧島のこと煽るの上手すぎでしょ。完全にやる気になってたじゃん」


 サキが腹を抱えて笑う。


「でも、これで霧島先輩が覚醒して吉岡くんより活躍したら、今度は吉岡くんが煽られちゃうよ?」


 ユズがニヤリと笑う。


「霧島に負ける日が来るとは思わないけど、そういう日が来ても面白そうだなぁ。でも俺、負けず嫌いなんだよね。だから負けないように頑張らねーとな!」


 ◇


 それから1時間ほど、俺たちは昨日と同じ集合用のスペースで過ごしていた。

 しかし……。


「おい、誰も戻ってこねーじゃん! 相良隊と佐伯隊はどうしたんだよぉ!」


 待てども待てども、他の隊が戻ってこない。


「思ったより時間がかかってるね。それとも、私たちが早すぎたのかな?」とカホ。


「早すぎってことはないんじゃない? だって私ら、アユの串焼き食べてたじゃん」


「たしかに」


「冊子も読み飽きたし、ユズっぱいも今は揉みたい気分じゃねーし、教本でも見に行くか」


 俺は隣に座っているユズの肩を抱き寄せながら言った。


「ユズっぱいはここ一番で揉んでこそ効果を発揮するもんね!」


「ユズ、すっかりユズっぱいを受け入れてるじゃん」とサキが笑う。


「教本を見に行って、そのあとまだ戻ってなかったらご飯も先に済ませよっか」


 カホも教本を見に行く案を支持した。


 教本とは、戦技や魔法といった【技能】を習得するためのアイテムだ。

 冒険者は技能を最大三つまでセットし、使用できる。


---------------------------

【名前】吉岡

【レベル】3 EXP:426/570

【所持金】5,781ゴールド

【ユニークスキル】オール・レジェンド(P)

【技能①】未登録

【技能②】未登録

【技能③】未登録

【武器】[G]初期配布のトンファー(レジェンド)

【防具】[G]初期配布の軽装備

---------------------------


 ステータスの技能枠が、それに該当する。

 技能をセットする方法は――やっぱり念じることだ。


 四つ以上の技能を習得した場合は、自在に入れ替えられる。

 ただし、入れ替えができるのは都市にいるときだけだ。

 つまり、ダンジョン内で違う技能に変更することはできない。

 同様に、ダンジョン内では空いている技能枠にセットすることもできない。


「Fランクの技能は3,000ゴールド。私とサキは厳しいけど、吉岡くん、早川くん、ユズの三人は買う余裕がある」


「じゃあ、俺、技能を買おうかな? 今日も結局、全然活躍できなかったし……」


 早川が申し訳なさそうにカホを見る。

 トロル戦でゴーレムを盾にしてしまった件が尾を引いているのだろう。


「気にしなくていいよ。あの子たちは自分の仕事をしただけだから。でも、次から気をつけてね」


 カホが優しく微笑む。


「買うかどうかも含めて、とにかく教本を見に行こうぜ!」


「そうですね!」と早川が立ち上がる。


 しかし――。


「佐伯隊、戻りました」


「相良隊もだ。吉岡くんたちももう戻っているな」


 相良隊と佐伯隊が同時に戻ってきた。

 あと、ちゃっかり霧島もその集団に混ざっていた。

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【コミカライズ作品】
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▼ 書籍化作品 ▼
【ノクターン】異世界ゆるっとサバイバル生活
~学校の皆と異世界の無人島に転移したけど俺だけ楽勝です~
▼ 代表作 ▼
『異世界ゆるっとサバイバル生活』
異世界ゆるっとサバイバル生活 第1巻 異世界ゆるっとサバイバル生活 第2巻 異世界ゆるっとサバイバル生活 第3巻
異世界ゆるっとサバイバル生活 第4巻 異世界ゆるっとサバイバル生活 第5巻 異世界ゆるっとサバイバル生活 第6巻
『成り上がり英雄の無人島奇譚』
成り上がり英雄の無人島奇譚 第1巻 成り上がり英雄の無人島奇譚 第2巻 成り上がり英雄の無人島奇譚 第3巻
成り上がり英雄の無人島奇譚 第4巻 成り上がり英雄の無人島奇譚 第5巻
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