018 オオカミの群れ
「吉岡先輩! アルファウルフが若葉ウルフを従えていますよ!」
「ああいうパターンもあるんだな。吉岡隊、戦闘態勢!」
俺たちは休憩を終えて武器を構えた。
「吉岡くん、ゴーレムも前に出すよ」
カホがゴーレム兄弟を最前線に上げる。
「このまま林から出てきてくれたら問題ないが――」
俺たちのいる川辺付近は開けている。
オオカミの群れと戦うなら、林の中よりこっちのほうがいい。
林の中では木が視界を遮るため、相手の機動力が強みになる。
「――やっぱり出てくる気はないようだな」
アルファウルフは近づいてきていたが、林の中で止まった。
20メートルほどの距離を保ってこちらを睨んでいる。
若葉ウルフは少しずつ左右に展開していた。
「吉岡くん、どうするの?」とサキ。
「相手は5体、こっちは5人。数は同じだ! 一人1体ずつ受け持とう! 連携では向こうに分がある! アルファウルフは俺に任せておけ!」
「その作戦、大丈夫なの? 危険個体に一人で挑むなんて」
当然ながらカホは不安視した。
「じゃあ、代案は?」
「それは……」
「よし、カホの代案なし! 作戦決定! ユズ、爆弾を5個つくれ! カホのゴーレム兄弟、サキ、早川にそれぞれ1個ずつ渡すんだ! で、最後の1個は君自身の分だ!」
「了解!」
ユズがさっそく【ボム・フルーツ】で果実爆弾を量産する。
その間、俺はというと――。
「ひゃっ! 吉岡くん! なんでいきなり胸を揉むの!?」
「伝統だ! ユズっぱいヨーシ!」
ユズの胸を左手で鷲掴みにして、大きく上下に振った。
心なしか戦闘力の向上を感じる。
「ユズっぱいを揉んだんだから、怪我しないでね!」
「それはこっちのセリフだ! 爆弾は行き届いたな! 戦闘開始だ!」
俺はアルファウルフに向かって突っ込んだ。
「左端の奴、俺が倒します! ユニークスキルは吉岡先輩と俺自身にかけます!」
早川が【スピード・ブースト】を発動する。
「サシでの戦いだけど、油断は禁物だよね。私は右端のやつもらうよ」
サキが【ミラージュ・ドレス】で自身の幻影を作り出す。
「じゃあアルファウルフの左にいるのはユズ隊員ね!」
「残っている右のは私とこの子たちで倒すわ」
走りながら誰がどの敵を狙うのか決めていく。
「早川、相変わらずいいスキルだ! これなら負ける気がしないぜ! 吉岡流トンファー術! その9! フライニーーーーーードルッ!!!!!!」
そう叫びながら、俺は必殺のフライニードルをアルファウルフに放つ。
「吉岡先輩、それただの跳び蹴りじゃないっすか!」
「トンファー関係ないじゃん! 吉岡くん!」
早川とユズが笑っている。
しかし――。
「ギャオッ……!」
俺のフライニードルは的確にアルファウルフの顔面を捉えた。
それでも危険個体なだけあって即死はせず、すぐさまカウンターを仕掛けてくる。
「ガォオオオオオオオオ!!!!!」
大きな図体とスピードを生かし、俺を押し倒して噛みつく算段だ。
「遅い遅い遅い! その牙、もらった!」
アルファウルフが口を開けていたので、覗いている大きな牙にトンファーを叩き込む。
バキィ!
激しい音が響き、牙が派手に折れた。
「キャウンッ!」
フライニードルより効いたようで、アルファウルフが露骨に痛がった。
甲高い悲鳴を上げて後方に跳ぶ。
「逃がすか!」
ここで俺の習熟度レジェンドが役に立つ。
脳内でアルファウルフとの間合いを詰めて顔面を殴るイメージをする。
すると、全く同じタイミングでイメージどおりに体が動いた。
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討伐:牙群れアルファウルフ×1
PT:5人 人数補正:60%
獲得:72G / 66EXP
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「え、吉岡くん、もう倒したの!?」
戦闘中のユズが驚く。
「早すぎっすよ! 吉岡先輩!」
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討伐:若葉ウルフ×1
PT:5人 人数補正:60%
獲得:24G / 18EXP
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「二番手はサキちゃんがいただきましたー!」
サキが槍を掲げて勝利を宣言する。
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討伐:若葉ウルフ×1
PT:5人 人数補正:60%
獲得:24G / 18EXP
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「私は3位ね」
カホも戦闘を終える。
ゴーレム兄弟も失っていない。
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討伐:若葉ウルフ×1
PT:5人 人数補正:60%
獲得:24G / 18EXP
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「嘘!? サキだけじゃなくてカホにも負けたの!?」
と言いつつ、ユズも若葉ウルフを倒す。
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討伐:若葉ウルフ×1
PT:5人 人数補正:60%
獲得:24G / 18EXP
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「俺、自分にスキルつかったのに……」
早川も危なげなく勝利する。
ただし、倒した順では最下位だった。
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【戦闘結果ログ】
討伐:若葉ウルフ×4 / 牙群れアルファウルフ×1
PT:5人 人数補正:60%
獲得:168G / 138EXP
所持金:2,563G → 2,731G
レベル:Lv.3
経験値:30 → 168/570EXP
依頼進捗:若葉ウルフ討伐 4/4・達成
依頼進捗:牙群れアルファウルフ討伐 1/1・達成
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「思ったよりあっけなく勝っちゃったねー」
サキが涼しい顔で近づいてくる。
「吉岡くんが危険個体を一人で倒したからね。それにユズの爆弾も大きかった。二つもくれてありがとう」
カホも「ふぅ」と安堵の息を吐く。
「たしかにユズ先輩の爆弾、助かったっす!」
「ユズ隊員は4位だったけど、みんなの戦闘に貢献したから!」
ユズは誇らしげな顔で俺を見る。
すごく褒めてほしそうなので、俺はユズの頭を撫でてやった。
「よく頑張ったな! さすがはユズ隊員! みんなの戦いにも貢献して立派だ!」
「でしょ! 立派な隊員なのです!」
「みんな、怪我はないよね?」
カホが言い、全員の無事を確認する。
「人間は五人とも無傷だが、カホのゴーレムが片方負傷しているな」
ゴーレムの片割れが胴体に噛み傷を負っていた。
血は流れていないが、かなり強く噛まれたようだ。
「うん。私を守ろうとして一発くらっちゃった」
「大丈夫なのか?」
「治癒能力とかはないから回復しないけど、まだ戦えるよ」
「オーケー。なら、とりあえず残る危険個体の大牙ボアを探して倒そう」
「そうだね。ボスと戦うかはまだ未定だけど、非ボス7まではいきたい」
カホが当たり前のように「非ボス7」という言葉を使う。
内容から察するに「ボスを除外した敵7種」のことだろう。
ボスまで含めると「全8」なので、ボスを除外して「非ボス7」だ。
(ユズや早川が反応していないところを見ると、冊子に書いてある言葉なのかな)
冊子の情報はあまり覚えていない。
なぜなら、ユズと宿屋でどう過ごすかを考えるのに夢中だったからだ。
「いたよ、大牙ボア!」
話しながら歩き回っていると、10分足らずで大牙ボアを見つけた。
しかし、場所が悪かった。
「丘の途中にいるじゃん!」
ボスの草冠トロルがいる丘――。
その途中に、大牙ボアはどっしり構えていたのだ。
こちらには気づいていない。
「あの巨体が下り坂の勢いを利用して突っ込んでくるの? それはちょっときついかも」
サキが難色を示す。
他のメンバーも「場所が悪い」という意見で一致していた。
「クソー! 早川じゃなくて梶原を選んでいれば! 奴の風刃で攻撃できたのに!」
「吉岡先輩、ひどいっす! 俺だって弓ありますよ! 矢も補充しましたから! 無料のやつですけど!」
早川が腰に装備しているショートボウをこちらに向けた。
「じゃあ、早川が釣って、林で迎え撃つ?」とサキ。
「それがいいかも」とカホが頷く。
「えー! でもそれだけだと、吉岡っぽくないよなぁ!」
今度は俺が難色を示した。
「吉岡くんの妙なこだわりが出た!」とサキが笑う。
「林で迎え撃つのはいいんだけど、もう一手間加えていい感じに仕上げたいよな!」
「吉岡くんっぽくない=地味って意味なのかな。でも、安全度が上がるなら私は賛成するよ」
カホはあくまでも安全第一だ。
「で、どうするのさ? 吉岡隊長! 吉岡くんっぽい案出して!」
サキがニヤニヤしながら俺を見る。
「爆弾のクールタイムは終わってるよ!」とユズ。
早川が「俺もユニークスキルいけるっす!」と続く。
「いや、ユニークスキルは不要だ。美しくない」
「今度は美しさ!?」
「吉岡くんのこだわり半端ないって」
ユズとサキが笑い、カホが呆れる。
そんな中、俺は周囲を見回し――。
「よし、閃いたぞ!」
画期的な案に思い至った。




