↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
106/112

106 技能の普及

「いや、その逆だ! 今日は下手を打っていない! だが、皆の反応を見てわかった! どうやら戸塚隊の三人は、吉岡式訓練プログラムの件を共有していないようだな!」


「佐伯くんは共有しようとしていたけど、私が止めたの。吉岡くんの性格的に、自分で話したがると思ったから」


 カホが笑いながら言った。


「よくわかっているじゃないか! さすがはカホ! イイ女だ! その通り! 今日は吉岡式訓練プログラムの共有をするため、俺が報告することにした!」


「吉岡くん、その訓練プログラムというのは何だ?」


 相良が好奇心に満ちた目を俺に向ける。


「まず前提条件を話そう!」


 俺は立ち上がり、右手の人差し指を立てた。

 誰かが「吉岡くんの演説タイムだ」と呟いた。

 ユズかサキだろう。


「前提として、ミオは昨夜、Dランクの戦技〈パリィ〉を購入した! 敵の攻撃を武器で弾き、1回無効化するって戦技だ!」


「便利そうな戦技だ」と黒瀬。


「俺もそう思っている! だが、技能は教本を買うだけでは使えない! 訓練する必要がある! かといって、訓練所で訓練していては稼げないだろ? そこで俺が編み出しました! 訓練をダンジョンで行い、その間に他のPTメンバーが攻略を済ませる! これによって訓練しつつ収入も確保する! 一石二鳥の名案! その名も吉岡式訓練プログラム!」


「同じダンジョン内にいる場合、離れていても討伐報酬は入り、討伐依頼も進みます。ただし、離れた場所で訓練しているだけでは、攻略証明の有効参加条件は満たせません。攻略済みのダンジョンなら関係ありませんが」


 佐伯が補足する。


「ズルじゃん!」と梶原。


「ズルではない! 仕様だ! ルールに則った効率的な訓練プログラムだ!」


「技能の習得に必要な訓練は、訓練所以外で行っても大丈夫なのか?」


 相良は佐伯とスミレに向かって言った。

 どちらでもいいから答えてくれ、という意味だ。


「はい、訓練場所の制限はありません。私が訓練所を選んだのは、吉岡式訓練プログラムを知らなかったことに加え、武器の訓練も受けたかったからです」


 スミレが答えた。


「なら、吉岡くんの案は一石二鳥の名案で間違いないな」


「リスクはあるが、コントロールできるものだ」


 黒瀬が腕を組みながら言った。


「チッ、そんなネタまで隠してやがったのかよ」


 霧島が面白くなさそうに舌打ちする。


「そんなわけで、今日の吉岡隊はミオが訓練に励み、その間に俺がダンジョンを攻略していた!」


「そこまではわかった。で、どこを攻略してたんだ? 実質ソロだろ。なら第4か?」


 霧島が素晴らしい振りをしてくれたので、俺は上機嫌で演説を続けた。


「第4にも行った! しかし、それだけで終わる吉岡隊ではない! 第5も攻略した! どちらも全8だ!」


 場に衝撃が走った。


「吉岡くん、ソロで第5を攻略したの?」


 サキが目を丸くする。


「マジかよ」


 霧島はそれしか言えなかった。

 梶原は「冗談きついわー」と苦笑している。


「吉岡くん、昨日はミオの【サイレンス・ドーム】をつかってやっとの勝利じゃなかった? 一日でずいぶんと成長したようね」


 リカが見せつけるように脚を組み直す。

 黒パンストで引き締まった長い脚が大きく動くだけで、俺は笑顔になった。


「俺はレジェンド吉岡だぞ! 日進月歩で爆速成長だ! それに、ソロにはソロの戦い方がある! どちらかといえば、ウォーロードやサイクロプスより道中のザコ戦が不安だった! しかし、今回の第5は配置がぬるかった! 昨日の霧島隊みたいなものだ! 故に楽勝だった!」


「俺、あんな奴と同じレベルなの? なんか急に自信なくなってきたんだけど」


 梶原が苦笑しながら、隣のスミレに話しかける。

 スミレが何か言う前に――。


「梶原、スミレを口説くな」


 なぜか宮坂がキレた。

 なお、彼の位置は霧島隊の中で最もスミレから離れている。

 俺から見ると、右から順にスミレ、梶原、霧島、宮坂だ。


「宮坂くん、私は口説かれていませんよ」


 スミレが困ったように宮坂を見る。

 しかし、その口元には笑みが浮かんでいた。

 悪い子だ。


「吉岡くんはソロで第5を攻略できる実力があるわけか」


 相良が話を戻す。


「俺自身が強いっていうより技能のおかげかな。ナナが選んでくれた〈スター・ストライク〉は今回も大活躍だった。ユズが選んでくれた〈バースト・ステップ〉も火球を避けるのに役立った。吉岡式訓練プログラムを生かして、皆さんも技能をガンガン習得してはいかがかな!?」


「悪くない案だ」


 相良が言うと、霧島も「異論はねえ」と頷いた。


「私も技能に手を出したいと思っていたから助かるわね」


 リカが続く。


「私も異論はないけど、霧島くんは気をつけてね」


 カホが言うと、霧島が「なんで俺だけ名指しなんだよ」と反応する。


「だって霧島くん、吉岡くんに対抗したがるでしょ? 今日の話を聞いた後だと、明日は吉岡式訓練プログラムを導入しながら、第5階層に行きそうだもん」


「……それは、わからねえだろ」


「今の言い方は『わかる』でしょ」


 アヤが言うと、皆が笑った。

 霧島は舌打ちする。


「詳しい話や明日の編成はメシを食いながらにしようぜ!」


 相良が「そうだな」と頷く。


「じゃあ、佐伯さん! 今日もいつものデータをお願いします! 我が吉岡隊の輝かしい記録を確認したいので!」


「かしこまりました」


 佐伯が紙とペンを取り出し、光の速さで書き上げた。


「こちらが本日のデータです」


 その言葉を合図に、全員が立ち上がって佐伯のもとに集まる。

 皆で内容を確認した。


---------------------------

【一人当たりの獲得量】

吉岡隊:3,141EXP、約12,900G

霧島隊:2,443EXP、約11,400G

相良隊:2,610EXP、約13,600G

サキ隊:2,443EXP、約11,400G

戸塚隊:2,688EXP、約10,600G

---------------------------


---------------------------

【ランキング】

01位 吉岡 :Lv.20 1,266/1,650EXP

02位 梶原 :Lv.20 215/1,650EXP

03位 霧島 :Lv.19 936/1,550EXP

04位 宮坂 :Lv.19 468/1,550EXP

05位 ユズ :Lv.18 151/1,460EXP

06位 サキ :Lv.17 737/1,370EXP

07位 早川 :Lv.16 523/1,290EXP

08位 ナナ :Lv.16 13/1,290EXP

09位 スミレ:Lv.15 1,091/1,210EXP

10位 アヤ :Lv.15 982/1,210EXP

11位 ミオ :Lv.15 86/1,210EXP

12位 相良 :Lv.14 311/1,130EXP

13位 黒瀬 :Lv.14 256/1,130EXP

14位 カホ :Lv.14 215/1,130EXP

15位 三船 :Lv.14 199/1,130EXP

16位 リカ :Lv.14 195/1,130EXP

17位 戸塚 :Lv.13 825/1,060EXP

17位 佐伯 :Lv.13 825/1,060EXP

---------------------------


「同じ第4・第5全8でも吉岡隊だけ頭一つ抜けているな」


 相良が腕を組みながら唸った。


「吉岡隊は2人PTなのが効いていますね。PT補正は90%です。一方、霧島隊とサキ隊は4人PTなので、PT補正は70%になります」


「梶原、だんだん差が開いていくな! 同じレベルなのも今日までじゃないか!?」


「何も言い返せねー」


「梶原、降参してるじゃん!」とユズが笑う。


「仕方ないだろ。第5をソロで全8する奴にどう対抗するんだよ。無理ゲーだって」


「レベルの勝負なら勝ち目あるでしょ! レベルは数字! また周回しないと!」


「まぁ、レベルくらい勝ちたいってのはあるよなぁ。第5は慣れたら周回に向いてそうだしな」


 ユズの言葉を受けて、梶原が投げやりな態度を改める。

 チョロい男だ。

 しかし、競争相手がやる気になってくれるのは大きい。

 やる気のない奴に勝っても面白くないからな。


「データも見た! 報告も終わった! 佐伯さん、ありがとう! さあ、メシだ! ミオ、食堂にいくどー!」


「……食堂に、いくどう」


 ミオが復唱しながらついてくる。


「もしかして、『食堂』と『いくどー』で韻を踏んだつもりか? アイツ」と梶原。


「吉岡くんの性格的に、韻を踏むよりギャグのつもりで言ってそう!」とユズ。


「ミオは、ギャグだと思ってる……気がする」と戸塚。


 そんなこんなで、俺たちは食堂に向かった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【コミカライズ作品】
▲ 画像クリックで漫画サイトへ ▲
▼ 書籍化作品 ▼
【ノクターン】異世界ゆるっとサバイバル生活
~学校の皆と異世界の無人島に転移したけど俺だけ楽勝です~
▼ 代表作 ▼
『異世界ゆるっとサバイバル生活』
異世界ゆるっとサバイバル生活 第1巻 異世界ゆるっとサバイバル生活 第2巻 異世界ゆるっとサバイバル生活 第3巻
異世界ゆるっとサバイバル生活 第4巻 異世界ゆるっとサバイバル生活 第5巻 異世界ゆるっとサバイバル生活 第6巻
『成り上がり英雄の無人島奇譚』
成り上がり英雄の無人島奇譚 第1巻 成り上がり英雄の無人島奇譚 第2巻 成り上がり英雄の無人島奇譚 第3巻
成り上がり英雄の無人島奇譚 第4巻 成り上がり英雄の無人島奇譚 第5巻
▲ 各書影をクリックで各巻の公式ページへ ▲
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。