102 第5ソロ
ホワイトアウトした視界が戻り、ギルドの光景が広がる。
次の瞬間、俺とミオは掛け時計を確認した。
――時刻は13時12分だった。
「ミオ、やるなー! 君の勝ちだ!」
「……やった」
ミオが嬉しそうに笑う。
「では、メシにしよう! 吉岡隊の昼はノーマルセットだから、メインの内容を考えておくように!」
「……ノーマルセット、700Gする。いいの?」
「いいよ! メシを奢る約束だ! なんだったらデラックスセットかゴージャスセットにするか? もっと高いぞ!」
「……それは、ダメ。ノーマルセットがいい。メインは、吉岡くんに任せる」
「オッケー!」
俺たちは食堂に移動した。
◇
食堂はほどほどに席が埋まっていた。
時間を考えれば妥当な混み具合だ。
「あ、吉岡くん、ミオ」
席を探して歩いていると、声が聞こえた。
カホだ。
同じ席に、戸塚と佐伯の姿もある。
三人はシンプルセットを食べていた。
「これはこれは、戸塚隊の面々じゃないか!」
「隣のテーブル、空いてるよ」
そうカホが言ったので、「では、そこにしよう!」と返す。
座るなり店員を呼び、ノーマルセットを二人前注文する。
メインはどちらも刺身盛りにした。
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【支払ログ】
食事:ノーマルセット×2
支出:1,400G
所持金:12,245G → 10,845G
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「今日は吉岡くんの奢りですか」
店員が去ったあと、佐伯が言った。
「……勝利の報酬」
ミオが微笑んだ。
「何の勝負かはわからないけど、おめでとう」
カホが笑みを浮かべ、味噌汁を飲む。
「ミオ、大丈夫か? 汗の跡がすごいけど」
戸塚は心配そうにミオを見る。
「……大丈夫。訓練をしていただけ」
喋っていると、俺たちのノーマルセットが運ばれてきた。
相変わらず、この食堂は提供スピードが速い。
大手の牛丼屋に匹敵するレベルで出てくる。
「そうそう、佐伯さん、今回は面白いことを試しているんだ!」
「面白いこと、ですか」
佐伯が興味深そうな顔で眼鏡をくいっと上げる。
「カホが聞いたら危険だのなんだのと喚きそうだけどな!」
「危ないことなんだ?」とカホ。
「俺はそう思わないが、まぁ聞いてくれ! さっき第4階層に行ってたんだけど――」
俺は訓練しつつ稼ぐ案について話した。
「なるほど。ダンジョンに転移していれば、経験値とゴールドが手に入る。討伐依頼を受けていれば、依頼報酬も稼げる。吉岡くんらしい合理的な案ですね」
「だろー、佐伯さん! 名付けて吉岡式訓練プログラムだ!」
「たしかに合理的だけど、ミオを一人にするのは危険じゃない? 魔物に襲われるリスクがあるよ」
案の定、カホがリスクを指摘した。
とはいえ、反対しているわけではない。
「二人きりの場合、そこがネックになる! だが、二人きりでなければ話は違ってくるんじゃないか! 例えば四人PTの場合、二人が狩り、二人が訓練と分ける感じだ!」
「攻略する階層を調整する手もあります。第1階層であれば、一人で訓練している最中に襲われても対処できるでしょう」
「ま、その辺は各人のリスク許容度で調整すればいいさ! 大事なのは、吉岡式訓練プログラムが素晴らしいということだ!」
カホと佐伯が頷いた。
「ミオは、無理していないか?」
戸塚が尋ねると、ミオは「うん」と頷いた。
それから、ミオは俺に向かって言った。
「……刺身盛り、美味しい」
「だろー! ここの刺身盛りは絶品だ! 量も多いしな!」
「……食べきれるかな」
「きついなら残していいぞ! 俺が食べる! 佐伯さん、問題ないよな!?」
「はい。制度上の問題はございません」
「だってさ!」
「……よかった。でも、残さない。勝利の報酬だから」
ミオは嬉しそうにノーマルセットを食べる。
その様子を、戸塚は複雑な顔で眺めていた。
◇
食事が終わると、また隊ごとの活動に戻った。
ポータルの前で別れを告げ、それぞれの戦場に転移する。
戸塚隊がどの階層を選んだのかは聞いていない。
逆に、向こうも俺たちが第5に行くことを知らない。
「さあ、ここからが本番だ!」
第5階層に転移すると、俺は鎌を右手で持った。
「……無理は禁物」
「任せな! 敵の待ち伏せを警戒して、慎重に進むとしよう! ここは小さなダンジョンだから、それでも1時間ほどで終わるはずだ! ミオも訓練を頑張ってくれ!」
「うん」
俺は背負い袋を地面に置き、〈デコイ〉を発動する。
「んじゃ、1時間後に! 太郎、GO!」
太郎が走り出し、第5階層の攻略が始まった。
◇
今日の第5階層は、今までで一番楽だった。
というのも、敵の待ち伏せが今までよりぬるかったのだ。
通常種が小分けに攻めてくるだけ。
それが終わったらボアが単騎で突っ込んできた。
昨日の報告会で霧島が話していたような配置だ。
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【戦闘結果ログ】
討伐:赤砂スライム×6 / 砦ラット×5 /
錆剣ゴブリン×4 / 赤土ハウンド×4 /
石盾コボルト×3 / 破城ボア×1
PT:2人 人数補正:90%
獲得:1,125G / 972EXP
所持金:10,845G → 11,970G
レベル:Lv.19 → Lv.20
経験値:1,142 → 564/1,650EXP
依頼進捗:赤砂スライム討伐 6/6・達成
依頼進捗:砦ラット討伐 5/5・達成
依頼進捗:錆剣ゴブリン討伐 4/4・達成
依頼進捗:赤土ハウンド討伐 4/4・達成
依頼進捗:石盾コボルト討伐 3/3・達成
依頼進捗:破城ボア討伐 1/1・達成
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あっさりウォーロードとボス以外を倒し終える。
「問題はここからだな」
ウォーロードとサイクロプスのコンビは今日も健在だ。
ウォーロードは早くも杖をこちらに向けている。
射程圏に入り次第、火球をぶっ込んでくるだろう。
まずは戦う前に戦闘の流れをイメージする。
今回は実質ソロで挑むわけだが、それによる利点もある。
仲間を気にしなくていい、ということだ。
例えば火球や投石を避ける時に、仲間の位置を考えなくていい。
好きな方向に避けられる。
そもそも、後ろに仲間がいれば、火球を避けたせいでそちらに当たってしまう。
「よし、イメージはできた。狩りの時間だ」
大きく息を吸うと、俺は〈デコイ〉を発動した。
「行け! 囮三兄弟!」
まずは囮をばらけさせて突っ込ませる。
「グォオア!」
「グォオオオオ!」
すぐにウォーロードとサイクロプスが迎撃を始めた。
次郎と三郎が名誉の死を遂げた。
それを確認して、俺も突撃する。
最初に狙うのは、ウォーロードだ。
そのため、残る太郎はサイクロプスへ突っ込ませた。
「グォオア!」
ウォーロードが二発目の火球を放つ。
太郎ではなく俺を狙っている。
「おせぇ!」
俺はすぐさま〈バースト・ステップ〉で横にスライドして回避する。
さらに距離を詰め、下手投げによる鎌ブーメランでウォーロードを切り裂く。
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討伐:赤砦ウォーロード×1
PT:2人 人数補正:90%
獲得:180G / 171EXP
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縦回転する鎌は、敵を切り裂くと俺の手に戻る。
その間に、太郎はサイクロプスに殴り殺されていた。
距離を詰め切っていたため、投石ではなく顔面にグーパンだった。
「サシならお前なんざザコ同然だぜ! チェストォオオオオオオオ!!!!!!!!!」
あとはワンサイドゲームだ。
前回と同じく〈スター・ストライク〉で岩を破壊し、ボスを崩す。
それから鎌で巨大な一つ目を切り裂いてトドメを刺した。
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【戦闘結果ログ】
討伐:赤砦ウォーロード×1 / 赤砦サイクロプス×1
PT:2人 人数補正:90%
獲得:1,062G / 702EXP
所持金:11,970G → 13,032G
レベル:Lv.20
経験値:564 → 1,266/1,650EXP
依頼進捗:赤砦ウォーロード討伐 1/1・達成
依頼進捗:赤砦サイクロプス討伐 1/1・達成
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「よーし、楽勝!」
傷がないことを確認する。
これならミオとエリナから怒られることはないだろう。
クールタイムが終わると、俺は再び〈デコイ〉を発動した。
太郎たちに魔石を拾わせつつ、ミオのもとへ戻る。
「……おかえり、吉岡くん。ボス、一人で倒したんだね。すごい」
ミオはまたしても汗だくになっていた。
「今日は配置がぬるかったからな! 1時間もかからなかったぜ!」
「……ううん。たぶん1時間以上かかってる」
「マジで!?」
「……たぶん、魔石の回収に時間をとられた」
「あー、なるほど! あり得る……というかそれだ!」
戦いの激化に備えて、背負い袋を残していった。
そのせいで、魔石を持ち帰るのに時間がかかった。
「時間切れで〈デコイ〉が解除されるたび、魔石がその辺に散らばったからなぁ」
敵との戦いよりもフラストレーションが溜まる作業だった。
結果論になるが、今日の配置なら囮に背負い袋を持たせるべきだった。
「……私が一緒なら、持てたのに」
「気にするな! 吉岡式訓練プログラムの弊害だ! それより、〈パリィ〉は習得できたか? 目安が12時間だったから、さすがにまだかな?」
俺は集めた魔石を背負い袋に入れながら尋ねた。




