101 狩りと訓練の両立
時間を気にせず朝食を済ませ、俺たちはギルドにやってきた。
すると、そこには――。
「あ! エリにゃんだ!」
朝からエリナを見かけるのは久しぶりだ。
しかも、今日は誰も並んでいない。
もしかしたら、交代したばかりなのかもしれない。
俺は光の速さで窓口に滑り込んだ。
少し遅れて、ミオが静かに近づいてくる。
「おはようございます、吉岡さん。朝から元気ですね」
「そりゃ元気だよ! だって、エリにゃんを見られたんだもん! エリにゃんも元気!? 毎日お疲れ様!」
「ありがとうございます。おかげさまで、私も元気です。朝なので、討伐依頼の受注でしょうか?」
エリナが謎のキーボードに手を掛ける。
「そうそう! あとPT申請も頼む! 俺と可愛いミオの二人PT! 討伐依頼はとりあえず第4と第5でお願い!」
「……吉岡くん、今日も第5に行くの? 今日は一人で戦うのに」
ミオが尋ねてきた。
エリナは入力を進めず、俺たちのやり取りを見ている。
「おう! 実はソロで腕試しをしたいと思っていてな! 大丈夫、無理はしないさ!」
「……なら、いい。でも、怪我をしたら、怒る」
「第4と第5でよろしいですか?」
エリナが確認してきたので、俺は「おう!」と頷いた。
それからミオの頭を撫で、「任せろ!」と胸を張る。
「……信じてる」
俺たちが話している間に、エリナが謎のキーボードをカタカタする。
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○第4階層
・[通常] Lv.8 麦穂マウス:6体(260G)
・[通常] Lv.9 風切りホーク:5体(290G)
・[通常] Lv.10 丘ゴブリン:4体(320G)
・[通常] Lv.11 跳ね角シープ:4体(350G)
・[通常] Lv.12 風草スライム:3体(380G)
・[危険] Lv.12 鎌羽グリフォン:1体(430G)
・[危険] Lv.13 暴風ワイバーン:1体(580G)
・[ボス] Lv.14 風車オーガ:1体(1,010G)
○第5階層
・[通常] Lv.11 赤砂スライム:6体(290G)
・[通常] Lv.12 砦ラット:5体(330G)
・[通常] Lv.13 錆剣ゴブリン:4体(360G)
・[通常] Lv.14 赤土ハウンド:4体(390G)
・[通常] Lv.15 石盾コボルト:3体(420G)
・[危険] Lv.15 破城ボア:1体(490G)
・[危険] Lv.16 赤砦ウォーロード:1体(650G)
・[ボス] Lv.17 赤砦サイクロプス:1体(1,140G)
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「手続きが完了しました。吉岡さん、怪我をしたら怒るのは、ミオさんだけではありませんからね」
「わかってるよ! エリにゃん査定システムで減点されるもんな!」
「はい。ですから、無理はしないでください」
「無理はしないさ。これでも慎重な男なんだ、俺! じゃあ、行ってくる! またね、エリにゃん!」
「いってらっしゃいませ、吉岡さん、ミオさん」
俺とミオは頷き、ポータルに向かった。
◇
まずは第4階層から攻略することにした。
「予定通り、ミオはここで訓練だ。まずあり得ないとは思うが、もし敵に襲われたら応戦せずにギルドへ戻ること」
「……了解」
俺は進む前にステータスを確認した。
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【名前】吉岡
【レベル】18 EXP:1,135/1,460
【所持金】10,337ゴールド
【ユニークスキル】オール・レジェンド(P)
【技能①】[F]スター・ストライク(レジェンド)
【技能②】[E]バースト・ステップ(レジェンド)
【技能③】[E]デコイ(レジェンド)
【武器】[E]吉岡デスサイズ(レジェンド)
【防具】[F]ブルファムレザーの軽装備
【補助魔導具】[E]ブレスレット
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第4はもはや、俺にとっては格下だ。
ボス以外は現状ですらレベル差補正が生じている。
ボスと戦う頃には、ボスとのレベル差も5になっているだろう。
「では、作戦開始だ!」
俺は〈デコイ〉を発動し、太郎、次郎、三郎を召喚する。
そのうち、太郎を前方の麦畑に突っ込ませ、隠れている敵を炙り出した。
「マウスとゴブリンか。ザコだな」
歩みを止めることなく、〈スター・ストライク〉で皆殺しにする。
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【戦闘結果ログ】
討伐:麦穂マウス×6 / 丘ゴブリン×4
PT:2人 人数補正:90%
獲得:306G / 306EXP
所持金:10,337G → 10,643G
レベル:Lv.18
経験値:1,135 → 1,441/1,460EXP
依頼進捗:麦穂マウス討伐 6/6・達成
依頼進捗:丘ゴブリン討伐 4/4・達成
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あっという間に戦闘が終了した。
太郎も敵の攻撃を受けなかったため生きている。
(さて、ミオのほうはどうかな)
次郎と三郎に魔石を回収させつつ、後方を確認する。
(訓練をしているようだが……俺にはさっぱりわからんな)
俺から見えるミオは、剣を構えたまま立ち止まっている。
かと思えば、剣を色々な角度で振り始めた。
で、またしても電池切れのロボットみたいに硬直する。
(まあ、いいか。進もう)
魔石の回収が済むと、俺は移動を再開した。
◇
その後も、苦戦することはなかった。
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【戦闘結果ログ】
討伐:風切りホーク×5 / 跳ね角シープ×4 /
風草スライム×3 / 鎌羽グリフォン×1 /
暴風ワイバーン×1 / 風車オーガ×1
PT:2人 人数補正:90%
獲得:1,602G / 1,161EXP
所持金:10,643G → 12,245G
レベル:Lv.18 → Lv.19
経験値:1,441 → 1,142/1,550EXP
依頼進捗:風切りホーク討伐 5/5・達成
依頼進捗:跳ね角シープ討伐 4/4・達成
依頼進捗:風草スライム討伐 3/3・達成
依頼進捗:鎌羽グリフォン討伐 1/1・達成
依頼進捗:暴風ワイバーン討伐 1/1・達成
依頼進捗:風車オーガ討伐 1/1・達成
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あっさりボスまで倒して戦闘終了だ。
ただし、想定していたよりも時間がかかった。
理由は単純で、飛行する敵が多いからだ。
ホーク、グリフォン、ワイバーン……苦戦はしないが、倒すのに時間を要する。
とりわけホークは、通常種ながら連携して飛び回るので面倒くさかった。
「遅くなって悪いな、戻ったぞー!」
俺は第4階層のポータルまで戻ってきた。
ミオは全く同じ場所で、同じように訓練している。
「……おかえり。早かったね」
「そうか? もっと早く済む予定だったんだが。なら走れよって話だが、俺は汗を掻くのが嫌いなものでな!」
第4階層へ転移してから、すでに3時間近く経っている。
走ったとしても、1時間はかかっていただろう。
「……私も、汗は嫌い。でも、今は汗でぐっしょり」
ミオの首筋を、滝のように汗が流れていた。
「進捗はどうだい?」
「……全然。たまに成功するけど、仮習得のまま」
「習得できたかどうかって、どうやったらわかるの?」
「スミレの話だと、ログが出るらしい。あと、ステータスを確認してもわかる」
「ステータス?」
「……習熟度の表示。今は、ビギナーじゃなくて、仮習得」
「なるほど。一度でも発動するとビギナーになるの?」
「……違うと思う。理由は、上手く言えない。感覚的なものだから」
「そっかそっか! とりあえず、戻ってメシにしようぜ! ギルドを発った時刻を確認し忘れたけど、たぶん今は12時半か13時頃だろう!」
「……13時頃だと思う。ギルドを発ったのは、10時頃だから」
「オーケー! では、ここでゲームです!」
「……ゲーム?」
「戻った瞬間に時間を確認する! 予測した時間との誤差が5分以内ならミオの勝ち! もし勝てたら、メシを奢ってあげよう!」
「……奢ること、できるの?」
「できるよ! ただ、メビウスでは面倒くさい法律がある! そのため、形式上は『俺が自分用に二人分買い、うち一つを無償で君に譲る』という形になる! それなら可能って、前に佐伯さんが言ってた」
「……そういえば、そういう話を〈始祖の塔〉で聞いた記憶がある」
「だろ! ちなみに、ミオが外しても罰ゲームとかないから安心してね! さあ、分単位で時間を予測するのです! このポータルをくぐった瞬間に時計を確認する! その時に表示されている時間を言いなさい!」
ミオは「わかった」と笑い、それから真剣に考え込んだ。
「……13時15分」
「よろしい! では13時10分~13時20分なら君の勝ちだ! いいね?」
「うん」
「では、確認タイムだ!」
俺たちはポータルを抜け、ギルドに戻った。




