第91章 揺れる王宮
王宮の会議室では、
今日も議論が止まらなかった。
重厚な円卓を囲み、
各部署の代表、議会の重鎮、軍の責任者、王宮諮問官たちが顔を揃えている。
空気は重く、
言葉の一つ一つが、国の進路を左右する重さを持っていた。
「——まず、校長と副校長の責任についてだ」
議会側の一人が切り出す。
「学術都市の根幹である学園で、これほどの内部不正が起きた」
「監督責任を問わないわけにはいかないだろう」
即座に反論が上がる。
「だが、前例がない」
「内部から、しかも複数年にわたり巧妙に行われていた案件だ」
「彼ら以上に、現場を把握し対処できる人材がいるのか?」
一瞬、沈黙。
それが答えだった。
校長と副校長は、
知識、魔力、経験、そのすべてにおいて学園の象徴である。
「予防できなかったのは事実だが」
「だからといって、即座に更迭すれば混乱は拡大する」
その結論には、異論は少なかった。
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次に議題となったのは、禁忌呪文の使用許可だった。
「精神介入を伴う禁忌呪文は、前例を作る危険がある」
軍担当者が、硬い声で言う。
「一度許せば、次も、また次もと要求される」
「軍ですら慎重になっている術だ」
「しかし」
別の諮問官が食い下がる。
「真実を明らかにしなければ、再発は防げない」
「すでに七十名以上の被害者が出ている以上——」
「それでもだ」
軍側は譲らない。
「“正義のため”という理由で、禁忌を軽々しく使う国にはなれない」
議論は平行線を辿った。
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さらに、問題は山積している。
犯人たちへの処遇。
どこまでを“個人の罪”とし、どこまでを“制度の欠陥”とするのか。
被害者、そしてその関係者への補償。
失われた時間、壊された心は、金や地位で埋められるものではない。
そして、対外的な公開範囲。
「どこまで、他国に知らせる?」
「隠せば、いずれ不信を招く」
「だが、すべてを公にすれば、学術都市の信用は地に落ちる」
学園は、
この国にとって単なる教育機関ではない。
各国から留学生が集い、
研究成果が国力に直結する、まさに“根幹”だった。
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長い議論の末、
一つだけ、静かに合意が取られた点がある。
「内部から起きた問題である以上」
「まずは、内部で立て直す」
校長と副校長は、引き続きその任に当たる。
監督は厳しくなるが、排除はしない。
禁忌呪文については、
引き続き審議。
公開と補償については、
段階的に、慎重に。
結論は出たようで、
何も終わっていない。
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会議の終盤。
誰かが、ぽつりと漏らした。
「……今回の件」
「本当に、これで終わりなのか?」
誰も、即答できなかった。
内部から生まれた歪み。
それを見逃し、育ててしまった土壌。
学園は、守られた。
だが——
同時に、
大きな問いを突きつけられていた。
知を集める場所とは、
いったい何を生み、何を壊すのか。
王宮の灯りは、夜更けまで消えなかった。




