表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
境界に立つ者たち  作者: 麻婆豆腐


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

66/70

第64章 王族専用の休憩室で

王族専用の休憩室は、

学園の奥まった一角にあった。


厚い石壁。

結界。

外からは、誰が中にいるのか分からない。


防犯上の理由で設けられた場所だが、

フローラとカリックスは、普段ほとんど使わない。


この学園に来た理由は、

「守られるため」ではなく、

「交わるため」だったからだ。


それでも——

今日は、ここにいた。



「……やっぱり、変よ」


フローラが、窓辺で立ち止まりながら言った。


可憐な横顔。

向日葵のような笑顔で知られる彼女だが、

今はその表情が、わずかに硬い。


「魔法が、ずっとピリピリするの」


「種類は分からない」

「でも……」


胸元に、そっと手を当てる。


「肌で感じるの」

「この頃、学園全体が」


「張り詰めてる」



カリックスは、黙って聞いていた。


黒髪を指で払うと、低く息を吐く。


「……実はな」


視線を落とし、続ける。


「俺の“影”からも、妙な報告が来ている」


フローラが、はっと顔を上げた。


「影が?」


「ああ」


「生徒が——減っているらしい」


一瞬、室内の空気が凍る。


「ただし」

「誰が消えたのかは、分からない」


「名簿上は問題なし」

「周囲の記憶も、曖昧だ」


フローラは、思わず拳を握った。


「……それって」


「俺も、同じことを考えた」


カリックスは、淡々と続ける。


「だから、母国にはすでに報告した」

「だが、証拠がない」


「影も、“違和感”以上のものは掴めていない」



沈黙。


学園の鐘の音が、遠くで響いた。


フローラは、窓の外を見つめながら、ぽつりと言った。


「魔法を学ぶ場所だから」

「魔法が多いのは、当たり前」


「でも……」


言葉を選ぶ。


「これは、学びの気配じゃない」


「そうだな」


カリックスも、同じ方向を見る。


「誰かが」

「“気づかれないように使っている”感じがする」



フローラは、深く息を吸った。


「……私」


「この学園で、何かが起きてる」


向き直り、まっすぐに言う。


「しかも、静かに」

「とても、静かに」


カリックスは、わずかに口角を上げた。


それは笑みではなく、

覚悟の形だった。


「だろうな」


「そして多分——」


視線が、遠くへ向く。


「もう、偶然じゃない」


二人は、しばらく言葉を交わさなかった。


王族専用の休憩室は、

今日も静かだ。


だがその静けさは、

守られた平穏ではなく、嵐の前の無音だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ