第100章 閉ざされた場所で
合流は、早かった。
アイリスの泣き声が途切れる前に、
リュシアとカイオンが駆けつけていた。
状況説明は短く、断片的だったが、
三人には十分だった。
「……前と同じだ」
カイオンが、低く言う。
「“戻らない”やつの消え方が」
⸻
最初に向かったのは、
あの回廊だった。
以前、揺らぎを見つけ、
失われた生徒たちを発見した場所。
だが——
「……っ」
足を踏み入れようとした瞬間、
空気が、硬く弾いた。
目に見えない壁。
精緻で、分厚く、
意図的に重ねられた防御魔法。
「立ち入り禁止、だな」
フェリクスが、歯を噛みしめる。
ただの封鎖ではない。
**“入らせない意思”**が、はっきりとある。
「無理に突破したら、こっちが捕まる」
リュシアが冷静に判断する。
「……他を探すしかない」
⸻
フェリクスは、アイリスの方を見た。
彼女は、まだ涙の跡を残したまま、
必死に考えている。
「他に……」
「ルームメイトが行きそうな場所」
「何でもいい、思い出して」
アイリスは、しばらく俯き——
はっと顔を上げた。
「……池」
「池の近くの、回廊」
三人の空気が、一気に張りつめる。
「昔の校舎があるの」
「今はほとんど使われてないけど……」
「静かで、人気もなくて……」
言葉が、続かなくなる。
「……実験とかするなら」
「ちょうど、いい場所」
誰も否定しなかった。
⸻
カイオンが、思い出したように言う。
「規則では」
「その校舎、申請なしでは立ち入り禁止だ」
「教授でも、助役でも」
「理由と記録が必要なはず」
「……それでも」
フェリクスが、呟く。
「もし“申請されてることになってる”なら」
「誰も止めない」
その言葉が、
この学園の“弱点”を、はっきり示していた。
⸻
リュシアは、静かに拳を握った。
「行こう」
「まだ、間に合うかもしれない」
誰も「間に合う」とは言い切れなかった。
けれど、
立ち止まる理由も、もうなかった。
池の方角から、
夜風が吹き抜ける。
水面は、静かだった。
あまりにも、静かすぎるほどに。
——その静けさが、
**すでに“何かを隠している”**と、
彼らは直感していた。
四人は、足早に歩き出す。
間に合うかどうか。
それは、
次の一歩で決まる。




