第九十三話
「大丈夫ですか?ルイさん。回復魔法をかけます」
エリノルがルイの上体を抱き起こすと魔法を詠唱した。
「ん、ん…… き、傷が回復していく。ありがとうエリノルさん」
「まったく無茶ですよ。ほんと、あと少しやられていたら死んでましたよ……」
「ええ、でも、私、エリノルさんを信じていましたから……」
「ルイさん……」
傷が回復したルイは立ち上がった。
「さあ、先を急ぎましょう。王女たちが心配です」
「はい」
二人は双子を倒した時に開いた扉に向かった。
「そういえば、もし、妹の方も姉と一緒に『暴走』モードになっていたら私たちに勝ち目はなかったでしょうね……」
双子の死体を見ながらエリノルが言うと、ルイは頷いた。
「ええ、二人とも最初から私たちを舐めてかかってきてましたから。全力を出すまでもないと思ったのでしょう……」
エリノルとルイはエーリカとカルラの死体を尻目に部屋を出て行った。
――――――
エリノルとルイが戦った部屋にて、エーリカとカルラの死体が横たわっている。二人はまるで寝ているようだった。
そして部屋の中は物音ひとつ聞こえない静寂が室内を包み込んでいる。
だが突如、その静寂が意外な形で破られた。
「はぁ〜あ。よく寝た」
なんと驚くことに先ほどエリノルに倒されたカルラがまるで眠りから目覚めたように起き上がった。
「あれ? なんだ、お姉ちゃんまでやられちゃったの」
カルラが姉のエーリカの死体のそばに寄る。
「ちょっと、お姉ちゃん。起きて、な〜に死んでんのよ」
カルラが姉の体を揺さぶるとエーリカがあくびをしながら目を開ける。
「はぁ〜あ。よく寝た」
「なに、私と同じこと言ってんの? お姉ちゃんもやられちゃったの?」
「やられたわぁ。思ってたよりやるわね。あの二人、命が一つ無くなっちゃった」
「どうすんの? 追いかけても一回戦う?」
「そんなめんどくさいことしなくていいんじゃない? ジャン様も無理して別に倒さなくてもいいって言ってたし、私たちの目的はあの二人を足止めすることでしょ? それにあの二人を倒すには私たちが本当の姿にならないと倒せないよ。それは今はまずいでしょ?」
「そっか…… じゃあ、どうする?」
「目的は成功したんだし、ジャン様と合流しましょう。今頃きっとジャン様も目的を果たしているでしょう」
「そうね。了解!」
エーリカとカルラはエリノルとルイが出た扉とは反対の方へ歩くと壁に手をかざした。すると、ボウっという音と共に扉が現れた。
エーリカが扉を開くと双子はその扉の中に入っていった。




