第九十話
ルイはエーリカ、エリノルがカルラと分かれて戦っている。
ルイは自身の武器『氷焔の双剣』を目にも留まらぬ速さで袈裟斬り、逆袈裟斬りと連続的に繰り出している。その速さは剣を繰り出す度に残像が残るほどだった。
ルイの職業『影騎士』は卓越したその素早い動きが特徴の職業だ。
が、敵のエーリカも負けてはいない。大剣『龍蛇剛剣』をグルグルと回転させて、ルイの攻撃を全て防いでいた。
「ダークスティンガー!」
エーリカの強さを見てルイは単純な剣のみ戦いでは勝負がつかないと判断し。素早くスキルを発動。短剣の形をしたオーラが無数、ルイの双剣から飛び出す。が、エーリカも同じことを考えていたのか同時にスキルを発動。
「ドラゴンワイルド!」
エーリカの大剣から荒れ狂う龍のオーラが飛び出しルイのスキルとぶつかり合う。
二人のスキルは互いに拮抗し、そしてしばらく綱引き状態が続く。
バン!と大きな音をなると両者のスキルが粉々となった。が、一本だけルイの短剣が壊れずエーリカに飛んでいく。
短剣はエーリカの肩に突き刺さると彼女は痛みに歪んだ顔をしながら肩口を押さえる。
「さすが、マリー王女のしもべね。スキルの強さはあなたの方が上のようだわ」
エーリカは素早く傷回復薬を飲み干し傷は回復させた。
スキルの強さを自分の方が上と簡単に認めながらも余裕な態度のエーリカにルイは訝しがる。
(この、エーリカって女、私のスキルに押し負けたのに随分と余裕の態度ね…… 何か切り札を隠し持ってる?)
ルイはチラリとエリノルの方を見る。どうやらエリノルが優勢のようだ。
――――
「はあ!」
エリノルは退魔剣を振り上げ真直ぐに切り下ろす。その剣筋は疾風の如く、ヒョンと風を切る音が聞こえた。
しかし、敵のカルラも負けてはいない。エリノルの剣を『蛇龍柔剣』で華麗に受け流している。
そしてしばらくエリノルの剣とカルラの剣が交差しぶつかり合う。
キン、キンと金属がぶつかる音が聞こえ火花が散る。しばらく互角の戦いをしていたが、だんだんとエリノルが押し始める。
(どうやら、剣の腕は私の方が上…… よし!スキルで駄目押し!)
エリノルがスキルを発動。
「バーンブレスト!」
退魔剣から光の刃が飛び出す。しかし、カルラはそれを読んでいたようだ。彼女も同時にスキルを発動した。
「スネークコール!」
カルラの細剣から無数の蛇の形をしたオーラが飛ぶ出した。蛇のオーラはクネクネとランダムな動きをしながらバーンブレストをかいくぐり、エリノルの向かっていく。
エリノルはその無数の蛇を退魔剣で弾き返していく。弾かれた蛇は部屋の壁にぶつかるとガラガラと音を立てて壁が崩れる。その崩れた壁の煙がエリノルを包んだ。
「くそ! 見えない!」
エリノルは煙に包まれ辺りが見えなくなる。すると包んだ煙の一部がブワッと形が変わる。そしてそこから蛇のオーラが飛び出してきた。エリノルは咄嗟のことで叩き落とせず蛇のオーラに肩を噛まれてしまう。
「きゃあ!」
膝をつくエリノル。
(しまった!)
エリノルを包んでいた煙が徐々に晴れてきた。エリノルはカルラの追撃に用心した。
だが、カルラもバーンブレストの攻撃をくらいエリノル同様肩を押さえて膝をついていた。
(あ、危なかった。もし、もう一度、スキルを放たれていたら避けるのは不可能だった)
二人はすぐさま傷回復薬で傷を回復する。
傷が回復した二人はスクッと起き上がる。
しかしエリノルが苦しそうに頭を押さえた。エリノルはハッとした顔をする。
「こ、これは……もしかして毒!」
エリノルの言葉にカルラはニヤッと口角をあげる。
「フフ、正解。私のスキルには毒効果が付与されているのよ。しかもその毒は速効性ですぐに効果が現れるわ」
毒で苦しんでいるエリノルにチャンスと見たカルラが襲いかかる。
カルラの連続攻撃を放つ。エリノルは毒で苦しみながらも左腕に装着された『摩祓の盾』でそれを受ける。
「あははは、その体でいつまで私の攻撃を受けれるかしら」
エリノルはかろうじてカルラの剣を受けるが毒の効果で体が痺れてきたのか、小刻みに体を震えていく。
「もらった!」
カルラが飛び上がりながらエリノルに向かって剣を振り下ろす。