第七十八話
僕はマリー王女ら四人の戦闘状況を確認した。マリー王女は二匹同時に戦っているが全然問題なく戦っている。
が、エリノル・水口コンビは少し手間取っているようだ。理由はエリノルさんだ。彼女は水口さんに遠慮をして一歩攻撃が遅れる。すると、水口さんは彼女のテンポに惑わされて攻撃が遅れてしまう。そして、さらに遠くから援護している姫野さんも攻撃魔法がしずらくなり、魔法を撃てずにいる。
まずいな…… 僕は姫野さんに声をかけた。
「姫野さん、とりあえず。援護はマリーさんの方へ頼む! 彼女を後ろから攻撃するエレメントスライムを水魔法で攻撃してくれ!」
「わかった!」
姫野さんが返事をすると、魔法の詠唱を始めた。そしてすぐに発動すると氷柱が勢いよくエレメントスライムへと飛んでいく。
ドゴン!という衝撃音が聞こえるとマリー王女を後ろから攻撃しようとしたエレメントスライムに直撃した。
「おっと! サンキュー遥!」
吹っ飛んだエレメントスライムを見てマリー王女は姫野さんにお礼を言うと目の前にいるエレメントスライムに斬りかかっていく。
「エリノルさん! 君は一旦下がって水口さんの援護に回れ!」
僕の指示に少し傷ついた顔をしたエリノルさんだったが、素直に後ろに下がると水口さんが前に出て戦う。どうやら先ほどと違い戦いやすくなったのか水口さんの動きに鋭さが増す。
「タァーー!!」
水口さんが二刀流でエレメントスライムをズバズバ斬っていく。
よし! これで大丈夫だ。安心した僕は姫野さんが吹っ飛ばしたエレメントスライムに向かって行き攻撃をする。
「氷柱槍!」
僕が放った氷柱が直撃するとエレメントスライムはポンと浮き上がる。それを間髪入れずマリー王女が飛び上がりながら斧で真っ二つにする。
「よっし! ナイスだ。黒羽! 私はルイの援護に行く!」
「頼む!」
マリー王女が援護に向かうと水口さんの動きがさらに速くなる。慣れている仲間で戦っているからだろう。どんどんと阿吽の呼吸で敵を倒していく。
残りの敵はマリー王女と水口さんであっという間に倒してしまった。僕はマリー王女、水口さん、エリノルさんの元へと向かう。
「よかった。全員、無事だ」
そして姫野さんが僕達の方へ向かってきた。
「姫野さん。ナイスサポート。それと僕達二人はレベルが上がったみたいだね」
「うん、私、二つ魔法を使えるようになったわ。下位の土魔法と中位の火魔法」
「お!良かった。この調子でいけばジャンと戦う頃には結構なレベルまでいくかもね」
「うん」
「よし、みんな。先に進もう」
「すみません。ちょっと待ってください」
僕が先に進もうとするとエリノルさんが呼び止めた。
「ん? どうしたんですか?」
僕が聞くとエリノルさんは申し訳なさそうな顔をして全員の顔を見回す。
「すみません、私…… 山を降ります。やっぱり私では皆さんの足を引っ張ってしまいます……」
どうやら先ほどの戦いで自信を無くしてしまったようだ。
「エリノルさん。大丈夫。僕らは出会って間もない仲間だ。さっきみたいになるのはしょうがないよ」
「で、でも……」
エリノルさんは伏し目がちになる。う〜ん、どうしたら良いかなぁ。僕は悩んでいると水口さんが口を開く。
「……黒羽殿、先ほどの戦い方では今後、私自身も不安がある。この先、もっと強い魔物が出るだろう。一瞬の判断ミスが命取りになることもあり得る……」
そ、そっか、でもどうしたらいいのか…… 僕はしばらく考えこんでいると今度はマリー王女が口を開いた。
「確かにルイの心配はもっともだ。しかし、無事に敵を倒す事ができた。それは先ほどの戦いで黒羽が的確な指示を出したからだ」
「お、おう」
急に褒められたので恥ずかしくなってしまったが、マリー王女はお構いなしに話を続けた。
「私の役割はタンクなのでどうして味方に指示を出すというのは苦手だ。なので、今後は黒羽が戦いの指示を出して私たちを使ってくれ。そうすればきっと上手くいくはずだ」
まあ、これでも元勇者だからな。よく考えたらこの中で一番、戦闘経験が豊富なのは俺だったわ。
「わかった。今後は俺に指示にしたがってくれ。みんな戦闘能力はピカイチだ。その内連携も取れてくるだろう。それとエリノルさん、とりあえず一人で山を降りるのは危ないし、君の戦闘力は僕らの助けになる。だからお願いだ僕達にこれからも力を貸して欲しい」
僕が頭を下げるとエリノルさんは少し悩んでいたがすぐに思い直したようだ。
「わかりました。黒羽さんの指示通り戦えばなんとかなるかもしれません。それにこれは教会からの正式な依頼です。なので途中で辞めることはできません。すみません弱気なことを言って、これから皆さんのお役に立てるよう頑張りますのでよろしくお願いします」
エリノルさんが頭を下げると僕は彼女にお礼を言う。
「エリノルさん、ありがとうございます。そんではよろしくお願いしますね!」
僕が親指を立て笑顔で言うと彼女も笑顔を返した。
「よし! みんな!改めて出発だ!」
僕らは先の道を急いだ。




