第七十七話
「ここから歩きだ」
僕が馬車を止めると幌の中にいる仲間に言う。ここはアウザ山の麓だ。
「さて、みんな。ここからアウザ山の頂上を目指すが、途中、魔物がウヨウヨいる。気をつけろよ」
マリー王女の言葉に僕達は頷くと山道を慎重に歩きだす。ここは今は立ち入り禁止だが、魔物が出るまでは普通の登山道だった。なので道はかなり綺麗に整備されていて非常に歩きやすかった。
しばらく山道を進んでいると広い場所に出た。すると、早速魔物が出てくる。
「いたぞ。エレメンタルスライムだ」
マリー王女が指を差すと人の大きさほどの炎が七体プカプカと浮かんでいた。エレメンタルスライムは炎の形をした魔物だがその炎はスライムのような弾力性があるという不思議な魔物だ。
エレメンタルスライムが僕達に気づいたようだ。炎から顔が浮かび上がるとこちらを睨みつける。そして両脇からニョキッと炎が腕のように伸びた。
「気をつけろ。あの腕に殴られると火の中位魔法『烈炎弾』を食らのと同じぐらいのダメージがあるぞ。まずはタンクである私があいつらを引きつける。隙が出来たら援護してくれ」
マリー王女が背中にある大きな斧を抜くと前に出る。
「さてと、久しぶりにこの『バサラアックス』でひと暴れしちゃいましょうかね。どりゃーー!!」
大きくジャンプしながらマリー王女は斧を振り下ろす。
グシャ
潰れるような音がすると、いきなり一匹のエレメンタルスライムがその斧の犠牲となった。王女の斧が斬り潰されるとエレメントスライムは悲鳴のような声を上げそのまま蒸発して消えていった。
「よし! まずは一匹」
おお! さすが王女。うん、俺も負けられん。
「俺は右から王女を援護する。エリノルさんと水口さんは左から。姫野さんはそこから魔法攻撃だ」
僕は皆に指示を出すと走り出した。と、突然、体が一瞬、土色のオーラに包まれた。そしてすぐに赤いオーラが僕の体を包んだ。
エンタープロテクトか! どうやら水口さんが防御強化魔法を唱えたようだ。それに確か彼女はバッファーだったな。続いて赤いオーラが僕の体を包んだって事は魔法に攻撃力UPのバフが付与されてるな。
うん!いいぞ!
「おおおおお!」
マリー王女は残り六体のエレメントスライムと一度に戦っている。だが、さすがに敵が多いようで彼女はエレメンタルスライムのパンチを斧を盾がわりにして防ぐのが精一杯のようだ。
僕は王女の背中から攻撃しようとしているエレメンタルスライムを後ろから袈裟斬りで攻撃した。
ズバッという音ともにエレメンタルスライムの背中が切れた。
ギャーーー
エレメンタルスライムは悲鳴を上げながらピョンピョンと僕から離れると何やらブツブツと何か言っている。どうやら回復魔法を使えるようだ。エレメンタルスライムはすぐに魔法を発動し背中の傷が回復させると地面にギュッと体を押しつぶしその弾力性のある体を利用して僕に向かって飛び出してきた。
「うお!」
僕はそのスピードの早さに驚きながらも剣でその突進を受けたが結構な威力で剣が飛ばされてしまった。
「お! ヤベェ!」
すぐさま剣を拾おうと走り出したがエレメンタルスライムがそれよりも先に右のストレートを放ってきた。僕はそれをバク宙で避けると魔法を詠唱する。
「氷柱槍!」
魔法を発動すると僕の広げた手の先から40センチほどの氷柱が現れ飛び出していく。
ぎゃあああ
氷柱は見事、エレメンタルスライムに直撃。僕はすぐさま剣を拾い飛び上がりながら剣を振り下ろすと、ブシューという音を立てエレメンタルスライムは真っ二つになり蒸発して消えていった。




