第七十五話
僕達が教会の中に入るとベネディクト神父ではなくエリノル・シュパネバーグさんという若い修道女が対応してくれた。彼女は少しオドオドしながら僕の質問に答えた。
「すみません、ベネディクト神父は今、体調が悪くて二階で休んでいます」
「なんだと!」
「ス、スミマセン……」
僕が驚きの表情にビックリした女性が思わず謝った。
「あ、いや、君を責めているわけじゃないよ。こちらこそごめん。それよりベネディクト神父に会うことはできるかな?」
「申し訳ありません、関係者以外は二階は立ち入り禁止です」
「なら、私なら大丈夫だろう?」
マリー王女がズイッと前に出ると女性は驚愕の表情をする。
「ま、まさか、あなたはマリー王女?」
「ああ、わけあって今はこの者たちと一緒に行動している。悪いが緊急事態なんだ。ベネディクト神父に合わせてくれ」
「わ、わかりました。こちらへどうぞ」
僕達は二階に行くと女性からベネディクト神父の部屋を案内してもらう。女性は扉をノックした。
「すみません。ベネディクト神父。よろしいでしょうか?」
「エリノルか? あ、ああ。構わない」
部屋の中から苦しそうな神父の声が聞こえた。僕たちは静かに部屋に入った。
「お、なんだ。龍斗と遥ちゃんか。どうした?」
神父は額にタオルを当てている。そして熱があるせいか真っ赤な顔をしていた。
「なんか辛そう…… ベネディクトさん、大丈夫ですか?」
「ああ、最初に比べたら大分、楽になったよ。ありがとう」
ベネディクト神父が姫野さんにお礼を言うと僕の方を見る。
「で? なんか用があったんだろ? どうした?」
「いや、実は頼み事があってきたんだが、その様子だと、やっぱり無理か……」
「俺に頼み事だと……」
そう言いながら神父が辛そうに体を起こした。すると、僕の後ろにいるマリー王女に気づいたようだ。
「な、マリー王女。なぜ、こんな所に!」
「ベネディクト神父。久しぶりだな」
僕達はベネディクト神父に事情を説明した。
――――――
「なるほど、あの、ジャン・ドラットルに……」
「ああ、それで神父の助けが必要だと思い、ここに来たんだが……」
「王女、申し訳ありません。王女の頼みなら是非ともお受けしたいと思うのですが……」
「いや、ベネディクト神父。気にするな。病気なら仕方がない」
無念な表情をしてる神父を王女は慰めの言葉をかけた。
「それにしても神父、どうしたんだ? 風邪か?」
僕が神父の病状が気になり尋ねると神父は首を左右に振った。
「いや、実はお前たちと一緒にダンジョンに行った際に『蒼目の力』を解放しただろう、その力を使うと反動で高熱が出ちまうんだ。まあ、一週間ほど休めば治るんだがな」
「……なんと、あの力にはそんなリスクがあったのか…… 知らなかった」
「すまねぇな。龍斗」
「いや、大丈夫だ。でも、これからどうすればいいのか…… 神父、誰かヒーラーで腕の立つ人物は知らないか?」
僕はダメ元で聞いてみると神父は指を顎に当て何やら考えている。そして何かを思い出しようにハッとする。
「いる、一人だけ……」
「なに! 本当か!」
「ああ、そいつならヒーラーとしての能力は申し分ない」
「誰だ? 紹介してくれ!」
僕はベネディクト神父に頼むと神父は僕の後ろにいる女性を指差す。
「お前だ。エリノル 。お前が龍斗と王女の仲間に加わるんだ」
僕達は後ろを振り返るとここまで案内してくれた女性が驚いた顔でベネディクト神父を見ていた。
「ええ! 私ですか? む、無理です!」
「む、無理じゃねー。お前、俺よりレベルは上だろう。大丈夫だよ」
「そんな、私、ベネディクト神父以外の人と仲間を組んだことないので不安です」
エリノルと呼ばれた女性は何度も僕達の仲間になるのを断った。しかし、ベネディクト神父が折れなかったため最後は諦めて首を縦に振ることとなった。しかし、彼女で大丈夫なのだろうか? 正直、僕は不安になった。
「えっと、エリノル・シュパネバーグさんでよかったですか? 突然、申し訳ありません。もしよかったらステータスを見せてもらってもよろしいでしょうか?」
「は、はい」
彼女は不安な顔でステータス画面を表示した。
名前:エリノル・シュパネバーグ Lv24 種族:人間(女)
職業:エクソシスト聖騎士 役割:ヒーラー
HP:350/350
MP:400/400
SP:60/60
力:10P
魔力:23P
敏捷:4P
耐久力:5P
器用さ:3P
魔法:ヒールLv3:9P エンターヒールLv3:9P
プロテクトLv3:9P エンタープロテクトLv3:9P
スキル:バーニングブレストLv2:6P
装備:エクソシストモンク:25P:魔防+5 降魔の手袋:2P:MP+20
所有ポイント:0P
Ex:2407
「おっ! 剣も扱えるのか。確かにすごいな」
シュパネバーグさんは背は僕と同じぐらいで女性にしては背が高い。それによく見ると結構筋肉質な体つきをしている。見た目のオドオドした雰囲気とは裏腹になかなかの実力者のようだ。僕が感心してシュパネバーグさんを見ると彼女は僕の視線に恐縮していた。
ん?よく見るとシュパネバーグさんは目がぱっちりして顔が小さくとても可愛らしい顔をしているなぁ。そんな僕の下心に気づいたのか、彼女は恥ずかしそうに目を伏せた。それに気づいた僕も恥ずかしくなり思わず目を背けた。
「あ、ありがとうございます。でも、私なんてまだまだです。本当に私なんかでお役に立てるのでしょうか? 不安です……」
「大丈夫よ! シュパネバーグさんなら大丈夫! よろしくお願いしますね!」
根拠もなく姫野さんが太鼓判を押した。僕は正直、不安だ。なんか自信なさげだが大丈夫なのだろうか?
「ありがとうございます。遥さん。私のことはエリノルと呼んでください」
エリノルさんが嬉しそうに姫野さんにお礼を言った。
「エリノル。頼んだぞ。王女を守ってくれ」
ベネディクト神父が言うとエリノルさんはぎこちなく頷いた。
「よし、それじゃあ。エリノルの装備も武器屋で整えよう。それが終わったらアウザ山に出発だ!」
マリー王女の言葉に皆が頷くと早速、僕らは武器屋へと向かった。




