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第五十六話


 剣を向け圧力をかけながら僕はジリジリと間を詰めていく。だが、ヴァンパイア・ルガトはニヤニヤと薄笑いを浮かべながらただジッと立っているだけだった。


 フン、随分余裕じゃないか。ならこれをくらってみろ!


「おりゃ!」


 僕は思いきり飛び上がると落下する勢いを利用して剣を振り下ろす。ビュンと風切り音が鳴ると鋼の剣がヴァンパイア・ルガトの脳天に直撃した…… かに見えたが、残念ながら直撃したのはルガトの残像だった。


 斬った残像は蜃気楼のように消えていく。しかし、剣の攻撃を避けれることは想定内だった。僕はルガトが鋼の剣による攻撃を紙一重で避け超スピードで後ろに回り込んだ事がわかっていた。


 すぐさま僕はクルリと振り返りそのまま剣を水平に振った。そして今度こそ鋼の剣はルガトの腹部を切り裂いた。


「よし!」


 僕は切り裂いたルガトの腹部から血が吹き出し姿を想像した。だが、残念なことに斬ったと思ったルガトはまたも残像だった。


「な……」


 流石にそれは想定外だった。僕は一瞬何が起きたのかわからず固まってしまった。しかしそれが命取りとなる。僕は気配を感じ後ろを振り向くと自分の胸に衝撃を感じ吹っ飛んだ。


「ぐあっ!」


 吹っ飛んだ僕はゴロゴロと地面を転がる。なんとか起き上がろうとするが胸に強烈な痛みを感じ息が出来ず苦しくて起き上がれない。どうやらルガトの掌底攻撃をくらってしまったようだ。


「大丈夫か、龍斗」


 神父が僕にすかさず回復魔法をかける。


「あ、ありがとう、神父」


 僕は胸を抑えながら起き上がると再び剣を構えジリジリとルガトに向かっていく。すると姫野さんが呼び止めた。


「待って黒羽くん。闇雲に向かっていってもやられるだけよ。私たちと連携して戦いましょう」


「姫野さん……」


 確かにそうだがルガトの強さは桁違いだ。この戦い、前に戦ったゴーレム二体以上の苦戦を強いられる。正直、姫野さん達と連携しても太刀打ちできないだろう。ならば僕が奴に少しでもダメージを与えないと……


 そんな事を考えているとヴァンパイア・ルガトがゆっくりとこちらに近づきながら僕ら全員の顔を見回しながら話し始めた。

 

「フフフ、この程度の実力でこのダンジョンに入れたという事は勇者の封印が解けたというこか。面白い。さっさとお前たちを殺して外に出て行き『蒼目族』の奴らを皆殺しにしてやる」


 僕はルガトの言葉を聞いて思わず聞き返した。


「なに!『蒼目族』だと!」


 ルガトが僕の方をニヤケながら見る。


「ほう、知っているのか。そうだ、この地下ダンジョンは元々は我々魔物の住処だったのだ。ここを拠点にしながら時に人間の村に出向き、そして誘拐し食料としていた。しかしある日、突如、『蒼目族』が勝手に私達の住処の周りに村を作り始めた。無論、我々は抵抗したが戦闘民族の『蒼目族』には敵わず白旗をあげた、以来、私たちは地下ダンジョンから出ることを許されず人間を襲うことができなくなった。が、それから数年後、『蒼目族』の人口だどんどん減っていったのを知るとそれを機に反撃に出ようとした、だが、ある日、年老いた勇者がこの村に来て『蒼目族』の代わりに我々を再びこのダンジョンから出られないよう封印をしたのだ」


 僕はルガトの話に衝撃を受けた、僕はそんな事をしていたのか…… それにモンジュ村の人たちは『蒼目族』だったとは…… って事はクレアさんも……


 僕はチラリとクレアさんの方を見た。彼女はルガトの言っている事が理解できていないようだ。


「な、なんですか…… その『蒼目族』って私たちの事ですか?」


 どうやらクレアさんが自分が『蒼目族』とは知らないようだ。すると姫野さんが僕に質問をしてきた。


「黒羽くん、なんなの? 『蒼目族』って」


「うん。『蒼目族』は非常に高い戦闘能力を持った民族で、その能力を『覚醒』させると目が蒼く光るから『蒼目族』と呼ばれていたんだ。そしてそのあまりの強さにまだ魔王がいる時代、王国の人間達が無理やり『蒼目族』を魔族相手に先陣を切って戦わせたんだ。そのため、多くの『蒼目族』に死者が出てしまいそれをキッカケに彼らの人口はどんどん減っていったという話だ。きっとその生き残りがモンジュの村を作ったのだろうね。そして魔族との戦いに疲れた彼らは自分達が『蒼目族』というのも子孫達に隠し外部との関わりを絶って生きていったのかも。なるほど、だからあの村が高齢者ばかりで寂れていたのか。これで理由がわかった」


「フフフ、どうやらその小娘は『蒼目族』のようだな。丁度いい。長年の恨み、お前で少し晴らしておくか」


 そう言うとルガトはクレアさんに向かって走り出した。


「まずい!」


 僕は咄嗟にクレアさんの前にたちそして剣を向かってくるルガトに振り下ろした。しかしそれよりも先にルガトの右手が僕の首を掴んだ。ルガトは僕の体を持ち上げると口角を上げ左手を手刀の形にする。するとガシャという音と共に爪がグンと伸びる。


「フン、まず小娘を血祭りにあげよと思ったがお前が邪魔するなら先に殺してやる」


 ルガトは舌舐めずりをしながら伸ばした爪を思いっきり僕の腹に突き刺した。


「ぐはっ」


 僕の腹と口から大量の血が流れる。


「きゃあああ」


 悲鳴を上げるクレアさんと姫野さん。ルガトは僕をゴミのように放り投げた。


「うう……」


 僕はあまりのダメージに意識を失いそうになったが最後の力を振り絞り立ち上がろうと必死にもがいた。


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