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第五十五話


「いや、まさか龍斗が勇者の生まれ変わりとはねぇ。どうりで色々とモンスターやらアイテムやらに関して詳しいと思ったよ。いやいやおどれーたわ」


 僕が勇者の生まれ変わりだと知ったベネディクト神父が何やら興奮して先ほどからずっと喋りぱなしだ。


「わかったから少し落ち着けよ。ってかこのことは誰にも言うなよ。めんどくさいことになるからな。まあ、僕が勇者の生まれ変わりなんてそんな荒唐無稽なは話、誰も信じないとは思うけどさ」


「いやいや、うちらのラビスト教会は救世主復活や生まれ変わりを信仰しているから普通に信じると思うぞ。現に俺も信じてるからよ」


 そっか、ラビスト教はそうだったな。確か神の子であるラビストが人類を救う為に死から復活するというのを信条としていたっけ。


「う〜ん、ラビスト教は世界で一番信者が多い宗教だ。ってことは僕が勇者の生まれ変わりだと信じる者も結構多いってことかもしれないな」


「そうだよ。まあ、安心しろ。俺とお前の中だからよ、このことは誰にも言わないでやるから」


 何が俺とお前の中だ。そんな中じゃないだろ? どうせあとで黙ってやるから見返りに金でも要求するつもりだろ。僕が困って顔で神父を見ているとクレアさんが申し訳なさそうな顔で僕を見ていることに気づいた。


「すみません、黒羽さん。私がうっかり喋ってしまったせいで……」


 どうやらクレアさんも神父がめんどくさい男だと気づき始めたのか僕が勇者の生まれ変わりだと言ってしまったことを後悔しているようだ。


「いやいや、クレアさん気にしないでください。大丈夫ですから。ええ。それよりも早く先に進みましょう」


 まあ、神父のことあとで考えるとして問題は次の階だな。一体、どんな敵が出てくることやら。


 階段を降りるとやはり他の階と同じような迷路のような道が続いていた。


 僕らはとりあえず進む事にした。その途中、姫野さんが僕に話しかけてきた。


「黒羽くん、そういえば『魔紫菌感染症ましきんかんせんしょう』は魔族が開発したウィルスだって言ってたじゃない? ってことはやっぱり魔王が復活してるんじゃないかな? その魔王の命令でこのウィルスをばら撒き出しだんじゃないの?」


 姫野さんはどうやら魔王が復活していると信じているようだ。だが、僕はその考えを否定した。


「いや、それはどうだろう? 『魔紫菌感染症ましきんかんせんしょう』は名前は大層だけど実際はさほど致死率は高くない上に感染する対象はほとんどが高齢者だったんだ。だから当時もさほど脅威とは思われてなかった。しかし、薬を飲まない限りは回復しない病気なので薬の開発は早急に行われたけどね。まあ、言ってしまえばこのウィルスは失敗作だったんだよ。魔族もそれ以上開発しなかったようだしね。だから復活した魔王がわざわざこんな失敗作を使うとは思えないよ 」


 僕の説明に納得したのか姫野さんは「そっか」とだけ言って黙ってしまった。


 そして何度か道に迷いながらも大きな扉の前に着いた。


「ここか…… いいか、みんな入るぞ」


 僕は皆の方を見て言うと全員が緊張した面持ちで頷いた。僕が扉を開けるとギギギと軋む音を立てながら扉が開く。


 「なんか寒いわ」


 扉の中に入ると部屋中は冷んやりとした空気に包みこまれていた。僕は嫌な予感がしてすぐに刀を抜いた。


「みんな、気をつけろよ。何が出てくるかわからないからな。もし、今の僕らでは歯が立たないような魔物が出たらすぐに部屋を出て逃げるからな」


 僕はあたりを見回した。だが、魔物らしきものは出てこない。


「おかしいな。この部屋には誰もいないのか?」


 神父が拍子抜けした表情で言うと突如、人の声が聞こえた。


「フフフ、この階層に人間がくるとは何百年ぶりだろうか……」


「誰だ!」


 突然の声に驚いた僕は声のした方へ剣を向けながら叫んだ。すると暗闇の中からマントを着た全身黒ずくめの男が出てきた。男は背が高く顔が死人のように青白かった。僕はその男を見て思わず叫んだ。


「お、お前は! ヴァ、ヴァンパイア・ルガト!」


「龍斗、なんかやばそうなのが出てきたな」


 ベネディクト神父が杖を構える。


「ああ、アンデット族の上位モンスターだ。流石に今の僕たちでは勝てない。逃げるぞ!」


 僕が今入ってきた扉を開け皆を逃がそうとした。だが、驚く事にその扉は押しても引いても開かなかった。


「な、なにぃ!! 開かないだと!」


「黒羽くん! 扉が開かないの?」


「ああ、だめだ。硬くてうんともすんとも言わない」

 

 僕が必死に扉を開けようとする姿をヴァンパイア・ルガトが薄ら笑いを浮かべ見ている。そして僕に近づいてくると楽しそうに話しかけてきた。


「ククク、残念、その扉は他の階層とは違い、私を倒さなければ決して開く事はない。諦めろ」


「くそ! なんて事だ」


 僕が悔しそうにしているとヴァンパイア・ルガトがさらに楽しそうに薄ら笑いを浮かべる。


「やべえぞ、どうする龍斗!」


 薄ら笑いを浮かべてるヴァンパイア・ルガトを睨みながら神父が僕に訊いてくる。


「仕方がない。やるしかない!」


 僕は大きく深呼吸をすると剣をヴァンパイア・ルガトに向けた。

 

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