094_巫女
「よぉ来たのぉ、第8勇者よ」
「あんたが、巫女か?」
「左様。このヴァナヘイム神国の巫女じゃ」
「名前とかないのか?」
「名など無い、巫女。それ以上でもそれ以下でもない。巫女になるとはそういう事なのじゃ」
「そうなのか・・・」
俺はゆっくりと天蓋へと近づいていく。
「小僧、言葉には気をつけろ!」
強面のおっさんが怒る。
「構わぬよ、彼は勇者。それはどの国もどの種族も対等に扱われねばなるまい、私だけ特別扱いなどせんでも良い」
「それは助かるよ。俺は気を使えるほど今は余裕がないからな」
「そうじゃろう。報告は受けておるよ、勇者」
「そうか、なら特に俺から言う必要はないだろ?」
「改めて、何があったかなどは聞かんよ。さて、そこにおる賢者とはもう話しておるようだが、他の四聖とはまだじゃろう」
するとインド人が一歩前へ出て、挨拶をする。
「四聖の一人、聖拳士 アキーム。よろしくネ」
こいつ四聖の一人だったのか。
続いて鼻を鳴らし、強面のおっさんが一歩前へ出て挨拶する。
「教皇を仰せつかっている、フューネルだ」
予想はしていたが、この場にいるという事は強面のおっさんも四聖の一人という事だった。
「さて、お主の事はハルエルの坊主が聞いておるよ。今一度確認をさせておくれ、主はこの世界に転生した勇者で良いのか?」
「・・・ああ、俺はこの世界に転生した。だが・・・」
俺は唇を噛み締め、言葉を続ける。
「・・・だが、勇者ではない」
「ふむ、、、そうか」
「そんな、義兄さん。あなたは勇者よ!」
俺の言葉に七乃花は反論する。
「七乃花・・・。俺は勇者じゃない。この世界を救うため、魔王と戦ったり、人々を救済するなんて俺には出来ない!」
「なるほどのぉ。ではこの世界で何を為す?」
「分からない・・・」
「はっはっはっはっは」
突然、婆さんが大声で笑い始める。
「いやすまぬなぁ。おかしくてのぉ。勇者が勇者を否定するとはのぉ」
笑われた事が悔しく感じる。
「そう睨むな、勇者。いや、ここは小僧と呼ばせてもらおうかのぉ」
「好きにしろ、婆さん」
「さて、、、どこから話そうかのぉ。まずはこの国からじゃな」
巫女が何か長話を始めそうな気がしたから、楽な姿勢をとる。
「ヴァナヘイム神国。ここの歴史は長い。私が生まれるより遥か昔、世界が誕生してからしばらくして生まれたとされておる。そしてこの国は第8勇者に縁があると言われておる」
「縁だと?」
「そうじゃ、何度も危機をその代の第8勇者が助けてくれたとされておる」
「そうか、俺には関係がないな」
「まぁそうじゃろう。だが国として、第8勇者が真に勇者足りえる人物ならば助力は惜しまない。それがこの国の考え方じゃ」
「・・・」
「勇者は世界で敬われておる存在じゃが、この国では特に第8勇者が慕われておる。もし仮にお主が街で第8勇者だと名乗ってみぃ、モテモテじゃぞぉ」
賢者のくだらない冗談はこの人譲りなんだろうか。
「羨ましいですねぇ」
賢者が反応する。
「冗談はさておき、そういう事じゃ。ただし主が悪を貫く人物であれば、我らは主に一切従わぬよ。そして、四聖。彼らは元からこの国にあった制度ではない」
「そうなのか?」
「四聖の始まりは、第8勇者じゃ。かつての第8勇者が、他の勇者とは相容れず奴隷を4人買った。そして奴隷を、魔王と戦えるよう鍛え上げ、パーティに加えていた」
四聖が奴隷?
それに他の勇者と相容れないとは、俺みたいだ。
「魔王と戦えるように力を与えられた人物、それが四聖の始祖じゃ。当時の勇者と魔王の戦いに決着が着いた後、第8勇者に力を貸した神国に行き国を支えたとされておる。また四聖に選ばれた人物は始祖の記憶が受け継がれる」
「記憶?」
「ええ、説明すると記憶というよりかは記録に近いでしょうか。それも断片的で、こういう事があった程度ですが」
賢者が巫女の代わりに記憶の継承について説明をしてくれた。
「ハルエルはお前が第8勇者だと会った時に分かっていたそうだ。始祖の記憶から、お前がそうだと信じきっておった」
フューネルが続いて口を挟む。
「と言っても、前の勇者だろ?」
「そうなんですが、彼はそう信じていました。始祖の記憶と言っても、私は賢者の始祖の記憶で、別々の記憶を継承しているのです。彼の記憶では、あなたに繋がる何かを見ていたのかもしれないですね」
「本来、四聖は共に旅をし、自分達を鍛えてくれた勇者への感謝を忘れない為とし、記憶を残したのだが。今ではその記憶を受け継げるのが四聖としての条件へとなってしまっておる。記憶を継承した者は勇者と再び同行出来るように研鑽している者達だが、今では国の要職程度にしか見られておらん」
「悪いが、俺には関係ない事だ」
「すまぬのぉ、年寄りの長話はつまらんかったか。だがのぉ、小僧。これだけは覚えておくといい」
「小僧が勇者を否定しても、運命からは逃れられん。必ずや魔王や他の勇者達は主を見つけ、殺しに来るだろう」
「ああ、肝に銘じとくよ」
「それからいつでも勇者の名乗りを上げる時はわしに言うと良い。この神国の巫女として、小僧が勇者であることを証明しよう」
俺は星天の間を後にする。
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