093_呪い
それから数日経ち、動けるようになった。
まだ体が痛むが何とか歩いて、移動出来る。
ここは神都の大聖堂の一室だそうだ。
神都の大聖堂は他の国で言うところの城の役割を持っている。
民が祈りを捧げる礼拝堂はもちろん、執務室や客室などたくさんある。
そして俺は今、怖そうな顔持ちのおっさんに調書を取られている。
隣にはニコニコした童顔賢者も話を聞いている。
「龍・・・、本当か?」
「嘘は言っていない」
「それに魔王とは・・・」
俺は何があったかを一つ一つ思い出しながら話をした。
王国で城を抜け出し、師匠に会ったこと。
公国で冒険者になったこと。
帝国でレイルーシアに協力し暗殺者になったこと。
そして神国国境で魔王と龍に遭遇し、師匠が死に、俺がバーサーカーになったことを。
「急ぎ、まとめて巫女に報告する」
おっさんは出て行く。
「京さん・・・、よくその状況で生きながらえていましたね」
「ああ、良かったのか悪かったのか・・・。七乃花のおかげだ」
「ええ、彼女はずっとあなたの心配をしていましたよ」
自室で七乃花から、これまでの事を聞かされた。
俺は転生した日に、自分が京八でいる事を話しておけばと後悔した。
「すみません、ところでこの剣ですが、持ってってもらえませんか?」
賢者が指差すと不気味な剣が立てかけられている。
しかし、見たことがある剣だ。
「まさか、俺の剣か?」
「ええ、そうなんですよ。どうやら[狂化]のせいか、瘴気のせいか分からないのですが、呪われてしまってるようでして・・・」
俺は自分の左手を見る。
黒い龍の鱗に覆われた左手。
「それも何の影響でしょうか、ひどい有様ですね」
「全くだ。左手は俺の意思じゃ動かない」
仕方なく、俺は右手で剣を持とうと掴む。
だが、剣が俺を拒み、すぐに手を話す。
「何だこれ!」
「あぁ、、、駄目でしたか。呪いの元凶であるあなたなら持てるかと思ったのですが」
「俺で試すなよ」
この賢者は本当に食えない男だ。
物は試しと、左手で掴もうとする。
手の感覚がないのに掴める訳は・・・掴んだ。
「くそっ・・・!」
左手が俺の意思とは関係なく、剣を振るおうとする。
「おいおい、、、どんな厨二病の腕だよ!」
俺は右手で左手を掴み、机の角に叩きつける。
何とか剣を手放してくれた。
「呪われた剣に、呪われた腕。京さんは勇者離れしてますね」
「はぁ、笑い事じゃないよ」
賢者は仕方なしと、神々しい布を取り出し剣を包んで抱える。
聖骸布という遺物の一種で呪いを無理やり封印しているとの事だった。
「何だ最初からそうしてくれよ」
「呪いが強固すぎて、布を変えねばならないのですよ。聖骸布はたくさんある訳ではないので、これを神国に置き続けるのは困りましたね」
そういう俺を見てくる。
「はぁ、、、分かったよ。俺が預かればいいんだろ」
「さすがです、京さん。それにこれはあなたの持ち物ですから」
賢者と別れ、自室へと戻る。
この剣もそうだが、左手を元に戻さないとまずい。
部屋に戻ると俺は剣を壁に立てかける。
そしてベッドに転がる。
大きくため息をつく。
「はぁ」
こうして助けられたのは良かったが、俺はこの先どうしたらいいのか分からない。
七乃花と賢者の話では、王国にいた勇者はみんなバラバラに他の国へ行ったそうだ。
二神が帝国を乗っ取った話をしたが、すでに師匠が神国へ届けていたのかそこまで驚かなかった。
扉がノックされる。
「どうぞ」
七乃花かと思ったら、強面なおっさんだった。
「何か?」
「巫女がお呼びだ、ついてこい」
おっさんはそう促すと、先へ進む。
まだ体の調子が痛むのに構わず、おっさんは歩む速度を緩めようとはしない。
「早く来い」
「分かってる。こっちはまだ病み上がりだ」
おっさんが扉の前で待っている。
俺はやっとたどり着くとおっさんはこちらを向いて話す。
「ここからは星天の間。巫女がいる玉座だ。ここへ入室出来るのは限られた者だけ、無礼のないように」
「はぁ、分かったから扉を開けてくれ」
扉が開かれ、俺は中に入る。
おっさんも続いて入っていく。
「よぉ来たのぉ、第8勇者よ」
声の方向を見ると天蓋に覆われた巫女と呼ばれた存在がいた。
横には既に来ていたのか七乃花と賢者。
そして見たことある顔が一人いた。
怪しい商人だったインド人だ。
まさかこんなところで会うなんて・・・
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