089_救出3
最初はひどいもんだった。
仕事を始めたばっかは、いつも怒られていた。
覚えが悪い。
話を聞いていない。
周りと合わせない。
何をするにしても怒られていた。
俺は怒られる為だけに入社したのかと錯覚した程だ。
だがそれでも仕事を続ければ、仕事の仕方を覚えてくる。
そうなった頃には、どうすればより待遇が良くなるのかを考え始めていた。
俺はより条件の良い仕事先を見つけ、転々とした。
辞める時はどこの会社でも、うちでやれない奴は他でもやれないと言われたが気にしなかった。
現に俺は上手くやれてた。
大学に行けていないコンプレックスがあったが、それをバネに他の人よりも仕事をこなし給料も上げていった。
まだまだ俺自身が若かったのもある、大企業に入社してもっと上を目指そうと感じていた。
俺は”生きる”事を目標に何でもやった。
人が嫌がる仕事も笑顔で受け、苦に感じる事も苦じゃないように工夫したりと。
俺はそれを対価として、お金を稼いだ。
だがそれでも俺の生活は裕福にはならなかった。
自分が生きる為の生活費、失踪した母が作った借金と奨学金など。
俺は追われるように、毎日を”生き”ていた。
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―七乃花視点―
「義兄さん!義兄さんっ!」
一目見て、私には分かった。
黒い影がまとわりついているが、眼だけははっきりと見える。
風貌は変わり果ててはいるが、間違いないと確信していた。
「七乃花さん、いけないっ!!!」
目の前に壁が作られる。
ナツ様が魔術障壁を張ってくれた。
義兄さんは障壁などお構いなしに突っ込んでくれる。
賢者と呼ばれるだけあり、この一瞬で障壁を多重にしていたが、義兄さんはいともたやすく何枚も障壁を壊していく。
「AAAAAAh!!」
私は義兄さんを助けようと自分の固有スキル【不死鳥の呼び声】を発動しようとする。
「七乃花さん、こいつには七乃花さんの固有スキルは効きません」
「何でです!?」
「アンデッドや状態異常ならともかく、、、これはその類じゃないからですよ!」
「では一体何なんですか!?」
「すみません、、、憶測ですが通常の方法では助けられないでしょう」
「そんな!」
ナツ様はそういうと魔術で攻撃を開始する。
義兄さんは魔術をその身に受けながらも、障壁を壊そうと攻撃を続ける。
最後の障壁が壊れた瞬間、また障壁が張られる。
「これは、おそらくですが[狂化]スキルのせいでしょう・・・」
「狂化?」
「ええ、命と引換に力を得るスキルです。一度発動してしまえば命が尽きるまで狂った怪物、つまりバーサーカーと化すだけです」
「スキルの発動を止められないのですか!」
「スキルの発動は発動者本人でしか、止められません。ですがあのような状態ではスキルの停止を行えないでしょうね・・・」
「義兄さん!義兄さんっ!」
私は必死で名前を叫ぶが、義兄さんは壁を壊すことに夢中だ。
「あそこに落ちているのは、ハルエルの剣。そうですか・・・、この竜との戦いでハルエルは命を落とし、ショックを受けた彼はそこで狂化スキルを得たという事でしょうか」
ナツ様は杖をかざし、別の魔術を発動させる。
「しかし、、、竜とはいえそこまで、あのハルエルが早々遅れを取るとは思えないのですが」
義兄さんの足元の地面が盛り上がり、四方を覆うように土壁が出来閉じ込める。
「義兄さん!」
「離れて下さい、七乃花さん。こいつには時間稼ぎにしかなりません」
「賢者様、お願いです。助けられないのですか!?」
「分かりません・・・、[狂化]スキルなど伝説かと思っていました。私も初めて見たのです。ですが、勇者が[狂化]など・・・。」
土壁にヒビが入り始める。
「それに本来このスキルを発動した者は命と引換にバーサーカーになる。そう長くは生きてはいないのですが、彼はずっと発動したまま生きながらえている。」
義兄さんが内側から破壊しているのだ。
「そんな・・・、では命が尽きるまであのままなのですか!」
「すみません、七乃花さん。可能性はないに等しいでしょう。ですが、彼が動けなくなるまで攻撃をしましょう。話はそこからです。運が良ければですが、、、」
「分かりました」
私は腰に刺したレイピアを取り出す。
「いいですか、七乃花さん。全力で戦って下さい。私でも倒すことが出来るかどうか。彼は痛みを一切感じていません。動けなくなるまで攻撃すればいいのです」
土壁が破壊され、義兄さんが出てくる。
「AAAAAAAAAAAAAAh!!!」
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