088_救出2
引き篭っていたのは1年くらいだったろうかと、ふと思い出す。
俺が引き籠り始めてからは、酒浸りだった母親が逆に家を空けることが多くなった。
部屋からほとんど出なかった俺は母親がいるのかいないのかも気付いていなかった。
その時の事はよく覚えていない。
何を考え、どう生活してたとか。
起きたらテレビを見て、パソコンをいじり、携帯をいじる。
時折、玄関を激しく叩く音があった。
母親の知り合いだったのか。
すっかり人が恐くなっていた俺はけして玄関を開けることはなかった。
”死のう”と何度考えた事か。
俺はそれを考える事が当たり前になっていた。
そう思っていた頃から、ネットでよく見かける死にたいという言葉は本当に意味のない言葉だと感じた。
俺は死にたいと考えていたけど、それを誰かに話したり伝えたりしたいと思わなかった。
ただ静かに、ひっそりと消えたかった。
俺はある日、意を決して深夜に家を飛び出した。
家の近くの線路、そこに飛び込もうと決意し向かった。
けど、俺は飛び込まなかった。
死ぬ勇気があるなら、精一杯生きて死ねばいいんじゃないかと。
どうせ自分は死ぬ人間だ。
なら何でもいいやれるだけやろう。
かろうじて携帯とパソコンの回線は使えた。
俺は仕事を必死に探した。
片っ端から出来そうな仕事をリストにして連絡。
そして面接に行きまくった。
良さそうな所はほとんど落ちた。
だがいくつかは内定をもらう事が出来た。
そっからは我武者羅だった。
働いて得た金でまず家を借り、服装を整え、身の回りのものを用意して。
やる事がたくさんあった。
俺は全てを忘れて、”生きる”事だけを目標に生きていた。
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―七乃花視点―
「まずいですねぇ、瘴気です」
「瘴気?」
「えぇ、世界の毒素といいますか、良くないモノですよ」
「その瘴気があるという事は一体何かがあったのでしょうか?」
「間違いないでしょう。幸いにも瘴気は残っているだけみたいですね。溢れてくる感じはないので発生源は既にないかと思われます」
私は瘴気に少し触れようとする。
ナツ様は止めようとされないので、触れても大丈夫だと思い、さらに手を伸ばす。
触れると鳥肌が立つのを感じる。
何か得たいの知れないものがまとわりついているそんな感覚だ。
私はこれに似たものを知っている。
「呪い・・・ですかね」
「えぇ、そんな感じでしょう。おそらくハルエル達はこれを調査してたのではないかと思われます」
「では、この先にいるかも知れないですね」
私は僅かばかしの希望を胸にする。
「・・・かもですけれどね。瘴気は世界にとっての毒。神国としてはこれを放置する訳には行かないのですよ」
「この世界に仇なす悪しき存在よ、神のみ名において振り祓わん、ピュリファイ」
私は瘴気へ向けて、浄化を施す。
すると瘴気は晴れていく。
「お見事です。ですが瘴気は多少ならば触れても問題ありません。この先に何が在るか分かりませんから、魔力は温存された方が良いですよ」
「はい、分かりました。ちょっと瘴気に浄化が通用するのか見たくて、、、先に相談すれば良かったですね」
「いえ、気になさらないで下さい」
私達は先に進むといくつかの遺体を発見する。
「これは、、、冒険者の方でしょうか?」
「・・・・そうでしょう。これを見る限り、全員胸を綺麗に斬られていますね。アンデッドの倒し方と同じです」
「アンデッドだったという事でしょうか?」
「そうなるでしょう。何かの理由で死んでしまい、瘴気に晒されアンデッド化した・・・。近いかもしれませんね、ハルエル達は」
私は義兄さんが冒険者を殺したのではないかと焦ったがそうではないらしい。
ナツが言っている通り、義兄さんに会うのは近いのかもしれない。
「こ・・・これは」
「報告にあった・・・竜」
さらに奥へ行くと黒い竜の死体に出くわした。
「えぇ、そうでしょう。報告は間違いなかった。つまり、ここにいるはずです」
賢者様がそう言うと黒い龍の死体の影から何かが出てくる。
それはこちらに向かってくる。
近づくとその姿が見えてくる。
それは黒い影に覆われた人だった。
「AAAAAh」
「”黒き狂った魔人”・・・」
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