086_覚悟
「まだ義兄さんは、、、第8勇者は見つからないのでしょうか?」
「すまないのぉ、七の勇者よ。まだワシの所にも報告は受け取らんよ」
七乃花は神国にやって来てから、定期的に巫女の元へ訪れてはこう尋ねる。
だが決まって、まだ分からないと返事をもらっていた。
「ですが、さすがに遅いですね。ハルエルが同行しているとはいえ、あまりに時間が経ちすぎております」
「ふむ、そうじゃのぉ。あやつは国に縛られるのを嫌う性質なのは知っておるが、ここまで連絡がないのは初めてじゃ」
「ハルエルは聖騎士としては多少ずぼらな所はございますが、この期間一切連絡がないのはやはり何かに巻き込まれたのではないかと」
「あの坊主に頼まれておったが、確かにそろそろ捜索隊を組まねばなるまいか・・・」
ハルエル達が帝都を出発してから2ヶ月。
第8勇者を修行しながら向かうと連絡をもらったが、音沙汰が無いのはさすがにおかしかった。
そんな様子に七乃花は不安になる。
まさか魔王に襲われたのではないかとか。
「無事・・・なのでしょうか。まさか魔王に襲われるなどしたとか!?」
「落ち着いて下さい、七乃花様。ハルエルはかなりの使い手、魔王相手でも早々に遅れを取らないと思います」
「はい・・・」
賢者は落ち着けようと七乃花に言い聞かせる。
その時、星天の間の扉が開く。
「巫女様・・・、突然の来訪失礼致します」
四聖の一人、教皇フューネルが入ってくる。
「何事だい?」
「はい、急ぎ報告せねばならない案件かと思い参上致しました」
フューネルは膝を着きながら、そう巫女に返す。
「あい、わかった。聞くとしよう」
フューネルは七乃花の方を見る。
「構わないよ。お主が急ぎの案件という事は、彼女にもまつわるのだろう?ならば聞く権利はあると思うがのぉ」
「失礼致しました。まだ確実な内容ではなかったものですから」
「うむ」
「帝国と神国の国境沿いの山で、黒き竜の死体を発見したという報告が冒険者から上がりました」
「竜じゃと?」
「はい・・・、そのもの達は行方不明者の捜索をしていたのですがその際に発見したと」
「その付近はまさしく、ハルエルと第8勇者がいるところじゃないかなぁ」
賢者が横から口を出す。
「その通りだ」
フューネルは一呼吸置いてから続ける。
「そしてその竜の死体の側で黒い人影に襲われたと。その強さは人外、全うな言葉を操らず、冒険者達の姿を見つけると襲ってきたと」
「ふむ、、、人なのか?」
「分かりませんが、、、人の形をしており、剣を使っていたと。冒険者の一人に治癒師がいたのですが、アンデッドの類ではない事は証明されております」
「これは国として、放っておく事は出来ないねぇ」
「冒険者達の中では”黒き狂った魔人”と揶揄されております。冒険者ギルドも調査に乗り出そうと動き始めております」
巫女は深く眼を閉じ、何かを思案する。
「ナツ」
「はっ」
賢者は膝を着き、次の言葉を待つ。
「調査を任せるよ」
「畏まりました」
「フューネルや、報告すまないねぇ。一時的だがギルドには調査を禁止するのと、箝口令をしくんだ」
「はっ、すでに準備は整っております」
「相変わらず手際が早いのぉ、頼むよ」
「畏まりました」
巫女は四聖の二人にお願いするかのように命令を伝える。
二人は厳命とし、これを受け止める。
「して・・・」
巫女は七乃花を見つめる。
七乃花は先程から巫女をずっと見続けていた。
「私も行かせて下さい!」
「良いのか、七の勇者よ?万事、良い結果になると分かっておるのかのぉ?」
「構いません。私は知りたいのです、、、義兄さんかどうかを。例えその結果どうなったとしても」
七乃花はけして、巫女の眼を離さずにそう伝える。
「良いだろう。ナツ・・・勇者を連れて参りなさい」
「はっ」
「良いかね、七の勇者よ。もしそれが害なす存在ならば斬りなさい」
「・・・・」
「それが覚悟というものだよ。覚えておくといい」
巫女は最後にそれを伝え、七乃花とナツは星天の間を後にする。
「ふぅ」
「どうされましたか、巫女様」
残ったフューネルが巫女にそう尋ねる。
「これはわしの勘だけどねぇ・・・、ハルエルの坊主はもうおらん」
「・・・・はい」
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