085_悪夢の続き
高校に入ってからは大変だった。
勉強ももちろんだが、奨学金や生活費の為にバイト三昧だった。
地元の公立だが、高校には無事に進学出来た。
父さんがせめて高校はちゃんと行かないと駄目だと、別れる直前ではあったが奨学金やらと色々手配してくれた。
母さんは別れる事が決まってからは、本当に悲惨だった。
酒浸りになり、絵に描いたような駄目な人間の末路そのものだった。
父さんは別れた後も気にかけてくれたのか、時間が取れた日は俺に連絡をして会いに来てくれていた。
バレたらまずいんじゃないかと思ったが、そこはうまくやっているつもりだと笑いながら言うからそれを信じる。
ある日、父さんが女の子を連れてきた。
七乃花だ。
さい時ぶりだったから覚えてはいなかったが、とても美人になっていた。
そして彼女は俺のことを義兄さんと呼ぶ。
いきなり見知らぬ美人の妹が出来、義兄さんと呼ばれるなんて何のゲームの設定だと思ったが、父さんによると七乃花には事情を全て話しているそうだ。
七乃花は話が分かるのか、父さんによると突然の婿入りで事情を分かってくれる七乃花は唯一の味方だ。
七乃花はこうなってしまった事で俺を不憫に思ったのか何でも力になると言ってくれる。
最初は七乃花の存在に戸惑っていたが、父さんがいない日も豆に連絡をしては俺の話し相手になろうとしてくれた。
七乃花と接するうちに、その無邪気さに心を許すようになっていた。
父さんとは家族ではなくなってしまったが、いつも心配してくれて、義妹まで出来た。
俺が潰れまいと必死に支えてくれたのを感じた。
だから俺はそれに答えようと腐らないようにしようと頑張った。
「母さん、母さん!こんな所で寝てたら駄目だろ」
「あぁ、、、お帰り」
「また酒か。いい加減辞めろよ?」
「辞める?そんなの無理よ、私はお酒が大好きだもん」
「そんなんじゃなかったろ?父さんがいた時はお酒飲んでるところ見たことないぞ」
「本当に、、、あんたは何も知らないのね。私は駄目な人間なのよ?ふふふ、あんただって本当は父さんの子かどうか」
「おい!!」
大きな声を出したことで母親が驚く。
「くそっ、ちょっと頭冷やしてくる!」
俺は外に出て頭を冷やすことにする。
俺はアパートの玄関の扉を閉め、表札を見る。
八月朔日 八恵
京八
ついこの間、中学までは苗字が違ったのに、今は新しい苗字だ。
母親の旧姓、新しい苗字に俺はまだ慣れないでいる。
そんな事を考えながら、アパートの階段を降りると七乃花が立っていた。
「どうした?」
「うん、父さんがこれをって」
七乃花の手にはどこかの土産物の箱が乗っている。
「饅頭?」
「うん、温泉まんじゅう」
「こんなの・・・わざわざ届けに来なくても。それに連絡くれたら取りに行ったのに」
「義兄さんにメールしたけど、気付かなかったから。何かあったのかなって?」
「・・・ごめん、気付かなかった。家で一緒に饅頭食べたいけど、、、母さんがいるからな」
「そっか。私のことは気にしなくていいよ」
「いやいや、わざわざ来てくれたのに饅頭だけ受け取って帰したなんて、、、あとで父さんに何て言われるか」
俺はポケットを探ると小銭が入っているのを確認する。
「あー、ちょっと待ってろ」
俺は近くの自販機で温かいお茶とコーヒーを買う。
七乃花に、お茶とコーヒーどっちがいいか両方見せると、お茶を指差す。
「ほら」
お茶を投げ渡すと、見事にキャッチしてくれた。
「ありがとう!」
「コーヒー嫌いなの?」
「お饅頭には合わないかなって」
「うーん、確かに」
近くの公園で、俺は七乃花と温泉まんじゅうを食べ終わるまで話を続けた。
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