084_嫌な夢
「は?」
俺はありえない事態に素っ頓狂な声で聞き返していた。
学校帰り、友達と遊んで帰ると母親が涙を流していた。
そして普段はこの時間にいないはずの父さんがそこにはいた。
「嘘じゃない、、本当だ。俺は離婚する」
ありえない事に俺は困惑をする。
だって、そうだろ。
父さんは仕事が忙しかったとはいえ、うちら家族のことは大事にしていた。
父さんと母さんはたまに口喧嘩はするがいつもの事だ。
父さんの反応から、冗談ではなく本当なんだと察する。
だが、それでも俺はほんの僅かな希望にすがろうとする。
「何言ってるんだよ・・・、父さん。俺がなにか悪いことしてたら、直すよ?だからそんな事言わないでくれよ」
俺の父さんは俺から見ても理想とも言える父親だ。
生活ぶりは普通だったが、それでも今まで家族三人で仲良くやってきたつもりだ。
俺自身、何の取り柄もなく、決して社交的な人間にはならなかったが、父さんはそれを恥じることはしなかった。
本を読めば、感想を求め自分も読む。
ゲームをやれば、一緒にプレイしたりしてくれた。
あまりにインドアな趣味ばかりだからと言って、外に連れ出される事もあった。
けど、俺が本当に嫌な時はやめてくれたりもする。
「すまない、本気だ。これは決めた事なんだ」
「分からないよ!何でだよ!」
「こうするしか、、、なかったんだ!」
初めて父さんに怒鳴られた。
俺はそれに萎縮してしまう。
横から母さんが俺の背中をさする。
「ごめんね、、、私が悪いのよ」
「どういうこと?」
「・・・・お前は黙っていなさい。俺が説明する」
父さんは母さんの言葉を遮る。
「俺の家が決めた事なんだ・・・」
俺は思い出す、小さい時に田舎の大きな屋敷に何回も言っていた事を。
「京はまだ小さかったから覚えていないかもしれないが、俺の家系は特殊な家柄でな。古臭いかもしれないが、今でもお家の力は強いんだよ・・・」
「だからって、そんなの鵜呑みにする必要ないだろ!うちには関係ないとこがそんな決める権利なんか!」
「あるんだよ・・・。母さんの実家にはとてもじゃないが、返せるとは思えない程の借金がある。それを俺の家が肩代わりする事になったんだ。その代わりにと、離婚する事になった」
「でも、、、だから離婚する必要がどこに!」
「七乃花ちゃんを覚えているか?俺の従兄弟にあたる七弥の娘だ。七弥の夫が交通事故で死んだんだ。本当であれば、七弥とその夫の間で男の子を生まなければならなかったんだが、そうなる前に死んでしまった」
「・・・・だから、その人とくっつくって事かよ!」
俺は初めて父さんを殴る。
父さんは歯を食いしばったまま、こちらを見ながら話を続ける。
「本当なら俺もお前と離れたくないさ・・・。けどな、圧力をかけられこのまま続けるなら、仕事をクビにさせると。それに他にも根回しすると脅された・・・!」
「そんなの・・・、そんなの犯罪とかじゃないのか!!」
「とっくにそんな訴えはしたさ・・・。それに家を裏切ったのは俺の方だ。俺は七弥と婚約していたんだ、京が生まれるずっと前から。俺はそんな決められた生活が嫌で、家を抜け出し母さんと出会って結婚した。そしてお前が生まれた」
父さんはワイシャツの襟を直し、再び話を続ける。
「このまま、俺がお前たちといる事を選択すれば、きっと苦しい生活になる。何の罪もない京にそれを押しつけることは出来ない」
父さんの決意は固く、決して変える気はないようだった。
まだ中学生の俺は話の大半の意味がマトモに分かっていなかった。
分かったのは俺の目の前から父さんがいなくなる・・・それだけだった。
今日は嫌な夢だったな。
これからまた悪夢が始まるのか、嫌だな。
知性も品性も失った俺が、どこかを彷徨う悪夢。
動くものがあれば襲う・・・。
「何だ・・・これは!」
目の前に大きく黒い竜の死体を発見する。
「竜か・・・、しかし死んでるんだよな、これ」
「あ、あぁ・・・、そうみたいだ」
「しかし、一体、誰がこれを倒したんだ」
「やはりネギリエさんはこいつに殺られたんだろうか」
「そうかもしれんな・・・竜がいるかもという噂の中行ったのだ。こいつに殺られたと見るのが普通だろうな。ギルドにはそう報告するしかないか・・・」
「見て!あそこ、人影かしら」
遠巻きに人影を発見する。
それはこちらに気付いたのか、ゆっくりと向かってくる。
「おおい、君、大丈夫か!俺らはAランクパーティ・レイウイングスだ!」
人影は何も答えず、ただゆっくりと声のする方へ歩くだけだった。
「大丈夫かー!?この竜の事や、ネギリエという商人の事を知ってれば教えてほしいんだが!」
「ねぇ、ロー。もしかしてアンデッドじゃない?」
「その割には、足取りはマシに見えるぞ?」
「おい、君!もし人間なら反応してくれないか!?」
ローに反応したのか、人影は手を動かす。
「何だ、聞こえてるじゃないか。アンデッドではない事は確かだ」
「違うわ、ロー!剣よ!剣を抜いたのよ!」
「何!?」
人影は剣を持っていた。
そしてロー達に向かい、徐々に速度を早めてくる。
「っ!何にしろ、応戦しなければ!アンデッドじゃなければ無力化した後に話しを聞く!」
他のパーティのメンバーも武器を構える。
人影がローに向かい、襲いかかる。
「AAAh!」
「グゥオッ、何て力だ・・・!」
ローは剣を受け止めるが、かなりの力で抑えるので精一杯だ。
「何・・・これ?アンデッドじゃないの?動きが素早く力も強い・・・、それにしてもこの纏ってる黒い影は何?」
「た・・・頼む、ミュウ。浄化をっ!」
ローは声を精一杯だし、ミュウに指示を出す。
「え、、、ごめんなさい!この世界に仇なす悪しき存在よ、神のみ名において振り祓わん、ピュリファイ」
ミュウにより、浄化魔法が放たれる。
「AAh?」
だが、浄化はされない。
「アンデッドじゃないの!?」
「どけ、ミュウ!」
レイウイングスの戦士・カイが黒い人影に襲いかかる。
「おおおおっ!」
渾身の一撃が放たれるが、片手で止められる。
「何だと!?く、、、うおおっ!」
黒い人影は掴んだ大剣を振り回し、カイごと遠くへ放り投げる。
「カイ!?化物めっ!貴様が竜も殺ったのか!?」
ローはすかさず距離を取る。
「命の根源を司る火よ、汝は我が力とかし、その身を刃へとうつせ、エンチャントファイア!」
ローの剣が赤熱を帯び始める。
Aランクパーティ・レイウイングス。
個々の能力が高いだけでなく、ローという剣士の魔法の高さが戦術の幅を持たせていた。
特に魔法を巧みに使い、剣技へと反映させる技術はローの専売特許とも言えていた。
「これが魔法剣という奴だ!」
黒い人影もまずいと感じたのか避けようとする。
だが刀身の先から炎が伸び、黒い人影を焼ききる。
肌が焼ける匂いと音がする。
さらに続けてローは斬りかかる。
「受け止めるかっ・・・!だが、先ほどのようには行かないぞ!」
黒人影は剣を受け止めるが、受け止めた剣から炎が迫ってくるのだ。
そしてまた皮膚をジリジリと焦がす。
「AAAAAAAAAAh!」
悲鳴にも似た雄叫びが上がる。
「うおっ・・・!」
ローは強制的に後ろへと押し出される。
そして、その隙を狙い黒い人影は剣を振るう。
バキンッ
「まさか・・・、ミスリルで出来た剣だぞ!?」
ローの剣は折られていた。
そして、もの凄い力で殴られ、壁へと叩きつけられる。
「くそっ・・・」
ミュウがすかさず回復させようとローの側による。
「逃げろ、、、ミュウ」
「え?」
黒い人影は二人へ向けて剣を突き立てようとしていた。
そして剣を突き立てる。
・・・・が、しかし剣はロー達を突き刺していない。
そして黒い人影は頭を抱え、身悶える。
「助かったのか・・・。い、今のうちに、逃げるぞ!」
レイウイングス達はこれ幸いと、急いで逃げ出すことした。
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土日は12時と22時に更新を予定しております。
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