079_瘴気
「ワイバーンの群れだと!?」
ワイバーン達はものすごい速度でこちらへと向かってくる。
「まずいぞ!」
先ほど戦ったがワイバーンは強い。
1匹相手だから、攻撃も見切りながら戦えたが群れともなるとさっきのようには戦えない。
しかも飛行しているワイバーンでは走って逃げても追いつかれてしまう。
「くそっ、来るぞ、京!」
ワイバーンの群れがあと少しの所まで迫ってくる。
が、しかしワイバーンの群れは俺らの上空を通り過ぎそのまま去っていく。
「助かった・・・?」
「みたいだな」
俺は安堵し、武器を降ろす。
「しかし、、、何だったんだ何かから逃げていたのか?」
「何でしょうね、とりあえず助かった・・・。ん?」
遠くから何か異様なものを感じる。
「師匠、ワイバーン達が逃げて来た方向」
黒いモヤみたいのが渦巻いている。
「まさか!」
師匠はモヤへ向かって走りだす。
俺はそれを追いかける。
師匠はモヤの前で立ち止まる。
「こいつは、、、瘴気」
「瘴気?」
「あまりこれを吸うなよ。多少なら害はないが、長時間摂取すれば毒となる」
「一体、何です、これ?」
「俺も正体は知らないが、アンデッドや呪い・負の念が固まると発生する。教会の教えでいうとこの世界の毒だ」
モヤは空中を漂っている。
少し触れてみると、特に何もない。
だが、何か嫌な感じがまとわりついてるように思える。
「にしても、これがあるって事は何かあるんですかね?」
「京、修行は中止だ」
「え?」
「俺はこれの発生源を確かめて、神国へと報告しなくてはならない」
「なるほど、、、了解です」
「ああ、すまないな。さっきのワイバーンを見るに、、、相当にやばいものがありそうだというのは分かったが。それなら尚更、何かを突き止めないとな・・・」
師匠は焦りながら、手を顎につける。
「京、お前さんは無理に付き合わなくていいぞ。これは俺の使命だ。それを強制したくはない」
「俺はついていきますよ。こんなやばいもの、俺も何なのか見極めたいですし」
「そうか、、、本当に何があるかは分からん。危険を感じたらすぐに離脱しろ」
「約束します」
師匠はどこからか布を出す。
俺はマフラーに命じて口周りを覆ってもらう。
俺と師匠は発生源へと向かい始める。
師匠に瘴気の事を聞いたが、正体については先ほどのように分からない存在だとしか言えなかった。
ただ、この世界に対しては良くないものだという事は分かった。
人間が多少なら体に含んでも、問題なさそうだが、数日も浴び続けると体に瘴気が溜まり死へと至るそうだ。
発生源へと向かう途中に草や木、岩などを見るが瘴気を浴び続けたそれらは腐り果て、得たいの知れない何かへと変わっている。
「気持ち悪いな」
「大丈夫か?」
「ああ、いえ、あのモンスターの死体ですかね。ドロドロっとして、ここで死んだんでしょうか」
「死体?まずいぞ、魔石を抜かれてなければ死体はそのままアンデッドになってるぞ」
そういうと死体が動き始める。
くそ、早く教えてくれよ。
あんなの見つけるんじゃなかった。
体躯は3m程ある、元が何のモンスターか分からないが人間を襲うという点だけは変わっていない。
「こいつらの攻撃は瘴気を帯びている。ダメージを受け続けるなよ、同じくアンデッドになっちまう!」
「あんなのの、攻撃なんか浴びたくないですよ!」
敵を躱しながら師匠に返事をする。
「京、魔石だ!アンデッドはもう肉体的に死ぬことはない!魔石を斬る以外に倒す方法はないぞ」
魔石。
こういったモンスターは胸に魔石を秘めている事が多い。
気配を辿ると胸に何かを感じる。
「そこか!」
俺はアンデッドに向かい剣を振るう。
うまく魔石ごと両断出来た。
「よくやった!」
「二度と戦いたくないモンスターに出会いましたよ」
「旅を続けてれば、こういう事はあるさ。何事も経験だ」
「はい・・・」
しばらくすると、得体のしれない気配を感じる。
「またか・・・」
アンデッドの気配を感じるぼやく。
先ほどのアンデッドモンスターに比べると小型だ。
何体かの気配を感じる。
ゴブリンの群れだろうか、それがそのままここで殺られアンデッド化したのか。
黒いモヤからアンデッド達が姿を現す。
「嘘だろ・・・」
「京、こういう事もある」
そのアンデッド達はネギリエさん達だった。
「そんな・・・」
「人もアンデッドになる。運が悪かったんだ。ここで討伐しなければ、こいつらは死ぬことなく苦しみ続けるぞ」
俺は意を決して、武器を構える。
「師匠、どうすれば?」
「あ、ああ。覚悟は決まったか。アンデッドになった人間は胸に魔石が生まれる。それを斬れ」
「はい・・・!」
俺は知り合い達を手に掛ける。
Bランクパーティと言っていたが、アンデッド化によりそこに至るまでの技術は失われ、ただのモンスターと変わらなかった。
「遺品は持ち帰った方がいいだろう、冒険者ギルドへ届けてやろう」
人間でさえも、変質させてしまう瘴気。
これを止めれば、ここで人がアンデッドにならない。
俺は何としても瘴気の発生源を突き止めると心に誓う。
またしばらく進むと瘴気が濃くなっていく。
そして俺らは発生源を突き止めた。
「・・・でかい」
俺は声を漏らすと、師匠が口を抑える。
「静かにしろ、こいつは起こしちゃならない」
そう小声で警告される。
俺は再びその発生源を見渡す。
20mはあるだろう、黒い竜だ。
先ほどのワイバーンが可愛く見える程だ。
黒い竜は眠っているのか、眼は閉じられ息だけをしている。
「これは、、、竜ですか?」
「わからんが、多分な。俺も竜には出会ったことがないから、何とも言えないが」
俺と師匠は、竜が起きる前に戻る。
ゆっくりと足音を消すように、来た道を戻ろうとする。
『ちょっとぉ、いい加減起きて、話を聞きなさいよぉ!』
突然大きな声が響き渡った。
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