077_四恩とエルク
「初めての方ですか?」
「え、ええ、そうね。ここは何をするとこなの?」
「えぇっと、ここは冒険者ギルドです。冒険者となって、モンスター討伐やら依頼を受けて頂いて、対価に報酬をお渡し致します」
「冒険者・・・、何だかおもしろそうね」
「それで登録を致しますか?その際にステータスを拝見させて頂くことになるのですがよろしいでしょうか?」
「ステータスを見るの?」
「ええ、犯罪者かどうかのチェックです。何もなければ問題なく冒険者として登録できます」
「そう」
私は慌ててステータスを開く。
勇者の項目を別のものに変える。
「それではお願いするわ」
「はい、念の為ですが、犯罪者だった場合、ステータスプロフィールをいじってもバレてしまいますのでご注意を」
「ええ、分かってるわ!早くしてちょうだい!」
「失礼します」
すると受付の女性は私の手を取り、何かの機械に触れさせる。
「えぇっと、四恩さんでよろしいでしょうか。犯罪歴は一切ありませんね。では冒険者登録を致しますのでお待ち下さい」
「分かったわ」
受付の女性は書類作業に入る。
周りを見ると野蛮そうな人がたくさんいる。
冒険者というのは女性が少ないのだろうか、ジロジロ見られて不快だ。
「終わりました。四恩さん、これであなたはFランク冒険者からのスタートとなります」
「そう、それでこの後はどうしたらいいの?」
「失礼ですが、モンスターと戦った事は?」
「あるわよ」
「分かりました。では討伐の証の魔石はお持ちでしょうか?ありましたら、こちらで換金致します」
「魔石?」
「えっと、、、魔石をご存知ないのですか?モンスターを討伐した際にモンスターから魔石を剥ぎ取るのですが」
「剥ぎ取る?それは倒すと自然に出てくるもの?」
「いえ、解体用ナイフでモンスターを捌いて、魔石を取り出すのです」
「嫌よ、そんな気持ちの悪い事!」
「はぁ、、、なるほど。それではまず初心者講習から受けて頂くのがよろしいですね。申し遅れました、私の名前はティナと申します」
「初心者講習?」
「ええ、冒険者になりたての方が、何をするのか覚えてもらう為に受けてもらうのです」
私は奥の部屋に案内され、初心者講習を受けることになる。
「ガハハ、すまんな、ティナの奴は手が離せそうにないから代わりにワシが説明をしてやる。俺の名前はヒッグ。ここのギルド長だ、お嬢さん」
髭を手入れする気もなく無造作に生やした大柄な男はヒッグと名乗る。
この人も他の冒険者達と同じく野蛮そうな雰囲気を感じる。
独り立ちを決めた私は、自らで生活出来るようにならないといけない。
例え不快でも、大人しく話を聞く事にする。
「と、まぁ、そんな感じだ」
「ええ、分かりました」
私は口元を抑えながら、話を聴き終えた。
モンスター退治は問題ない。
見た目が気持ち悪いものもいるが、基本倒すだけだ。
けどその後の解体がとてもじゃないが耐えられるものじゃない。
試しにと、奥からモンスターの死体を持ってきて説明をしてくれたが見るに耐えられなかった。
「ふぅむ、お嬢さんにはきついか・・・。でもなぁ、覚えてもらわんと冒険者として生活は出来ねぇからな」
「ええ、ええ、何とかします」
「ちょっと待ってろ」
ヒッグさんはギルドのカウンターへと戻っていく。
「ちょ、なんですか、ヒッグさん」
「いいから来い!」
すると一人の青年を連れてきた。
他の冒険者と比べると、身なりにも気を使っているし、口調も丁寧だ。
「えっと、この方はどなたです?」
青年が私を見て、質問をする。
「冒険者になったばかりの初心者だ」
「どうも四恩です」
「これは、どうもエルクと言います」
「エルク、しばらく面倒みてやれ!」
「ええええ、突然なんなんですか!?」
「まぁ、ちょっと色々問題ありそうだからな、誰かが面倒みてやらんと冒険者を辞めちまうだろ?」
「そんな、理屈は分かりますけど、いきなり」
突然のことで私も驚く。
けど、他の野蛮な人が面倒を見るのならともかく彼なら良いかなと思う。
「嬢ちゃんも、それでいいか?」
「ええ、お願いします。その・・・他の人よりかはエルクさんの方がいいかなと」
「ガハハ、ご指名だ!良かったな、エルク。別嬪さんだ、丁寧に教えて差し上げろよ!」
ヒッグさんは笑いながら、どこかへ行ってしまった。
「えぇっと、改めましてエルクです。Cランク冒険者になります」
「これはどうも、エルクさん。冒険者になったばかりなのですが、、、そのどうにも解体が気持ち悪くて・・・」
「解体か・・・、うん、分かった。しばらく一緒に狩りをして、慣れよう。最初は僕が解体をするのを見て、徐々に君にやってもらうのがいいかな」
「分かりました」
私はエルクさんと共にしばらくパーティを組む事になった。
「四恩さん、ゴブリンがそっちへ行ったよ!やれるかい!?」
「ええ、任せてください!」
ゴブリンはこちらへ向かってくる。
私は弓を構える。
「単純な動きだわ・・・」
私は矢を射る。
放った矢はゴブリンの脳天を貫く。
「す、すごいよ、四恩さん!」
「えぇ、モンスターは今まで何度か倒しましたから、この程度の相手は弱すぎますね」
「えぇ、初心者なんだよね?」
「はい、、、冒険者は、ですが」
「四恩さんはもしかして貴族だったとか?」
「いえ、そうじゃありませんよ。公国に来るまでは王国に住んでいましたけど」
「まぁ事情は色々ありますよね、野暮なことを聞いたならごめんなさい」
「いえ!エルクさんはとっても親切です」
「そ、そうかな、ありがとう!それじゃあ、早速解体だね」
エルクは解体用のナイフを取り出すと、ゴブリンの胸を切り裂く。
「うぅぅ・・・」
「気持ち悪くても見てなくちゃ駄目だよ。大体のモンスターは胸の当りに魔石を持つことが多いかな」
「・・・はい」
「たまにそうでない場合もあるんだけど、それは出くわした時に教えてあげるよ」
胸を切り裂き、肋骨を取り除き、更に切り開くと魔石はあった。
「どうかな、わかった?」
「魔石って綺麗なんですね」
「え、ああ、そうだね。でもこれはモンスターの核だ。人が長く所持していたり、もし身に含んでしまうような事にならないでね」
「ええ、分かりました」
エルクは私に何でも親切に教えてくれた。
この世界の事、冒険者やモンスター。
勇者や魔王の事も。
「四恩、そっちにいったよ!ブルホーンだ、外郭が固いからしっかり狙って射つんだ!」
「ええ、分かりました」
私はブルホーンの柔い部分を狙い射つ。
「ブオォォォッ」
ブルホーンが倒れる。
「相変わらずすごいね、四恩は?」
私は何度エルクに褒められただろう。
こうしてしばらくパーティを組んでいたけど、エルクは決して私に横柄な態度を見せなかった。
どこまでも私に親切で、困ればすぐにエルクが優しく教えてくれる。
ある日、エルクが私に自分の夢を話してくれた。
何でも自らの商会で隊商を組んで、貿易を盛んにしたいと。
エルクはちっぽけな夢だよねって笑ってたけど、私は応援したい気持ちになった。
私はエルクに出会えてよかった。
この世界に転生して、不安な毎日だった。
けどエルクの存在は、そんな私の不安を和らげてくれた。
私は、エルクの為なら世界を守りたいと感じた。
ピロン
愛の隷属の発動条件が満たされました。
「じゃあ、四恩。さすがにそろそろ解体をしてみようか」
「・・・いや。お願い、エルク」
やっぱり解体が嫌で、エルクに少し甘えてしまう。
「分かりました」
エルクは何かに操られるように解体作業を始める。
「まさか・・・」
エルクは操られている。
私の固有スキルによって。
「そんな・・・、私。あなたをそんな風にしたかったんじゃ」
私は悲しくなり、涙を流す。
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