076_魔族との接触
「はぁっ!」
俺はロックゴーレムを両断する。
「後ろだ、京!」
「分かってます!」
俺は後ろから迫ってくるミノタウロスも両断する。
「ハハハ、すごいな」
「いえ、まだまだですよ。師匠みたく、もっとこうかっこいい技を1」
「ああ、そういうのは早いな・・・。どんなものでもそうだが、変に大技を先に覚えてしまうと、それに頼ってしまうからな。大抵そういう奴は壁を越えられん」
「はぁ、、、ですよね。俺は陽の目の当たらない地道な道を歩きます」
「そう落ち込むな。今のお前さんなら、人間の剣士相手ならそうそう負けないさ」
「はぁ、師匠にはまだ届いてないですよ」
「ハハハ、そう簡単に弟子を越えられちゃ、俺の面目は立たないからな!」
ここしばらくは、俺がほとんどのモンスターを相手にしていた。
気を読むことが出来、気を斬る事が出来るようになったからだ。
師匠は基本的に見ているだけで、俺は次から次へとモンスターを両断していく。
型が間違えば、それを指摘され、直す。
さっきは悪態を着いたが、自分でも剣の腕が上達しているのを感じる。
ふと気というものが何のか考えてみた。
おそらくこの世界に存在する魂や存在力と言ったところだろうか。
倒した敵は気が変質する。
有機的なものから無機物的な気へと。
変わると言ったのは、存在力が変わるのだろう。
単純に生物をさしての魂なら、倒せば消失するはずだから。
師匠はそう捉えているみたいだが、感覚が鋭敏な俺はさらにそう捉えてしまっているみたいだ。
いつぞやのインド人もそうだが、彼も気を理解っていたんじゃなかろうか。
出なければ、あんな人間離れした技を披露する事は出来ない。
「京、噴き出てるぞ」
「え、ああ、すいません!」
俺は鍋からスープが溢れるのを処理する。
「考え事か?」
「ああ、ちょっと修行の感覚を頭で色々考えてました」
俺は料理をしながら、考え事に夢中になってしまった。
その間、師匠は魔除けの陣を貼り終えていた。
「敵じゃないな、、、誰かくるぞ」
師匠がそう呟く。
「ネギリエさん達でしょうかね?あ、でも、一人だ」
俺は捉えた感覚を口にする。
宵闇で姿ははっきりと見えないが、誰かが一人こちらへと歩いてくるようだ。
近づいてくるに連れ、焚き火で姿が見える。
長剣を担いだ男。
だが、その肌の色は青色だ。
「魔族・・・、警戒しろ、京!」
「はい!」
男に敵意は感じられないが、警戒をする。
「誰だ、お前さんは?」
「誰・・・か。旅の者だ」
「旅だと?魔族だろう、場合によっちゃ見過ごすわけには行かないな」
魔族はため息をこぼす。
「神国の者か?ならば我を警戒するのも仕方なかろう。ただ我が旅をしているのは事実。この山へは用あってここに来ただけだ」
ずいぶん固い口調の魔族のようだ。
敵意は感じられないが、先ほどから感じる威圧感はすさまじい。
気を抜こうにも、その威圧感が邪魔をする。
「用だと?」
「ああ、竜を退治しに来た。我も腕に覚えがある方でな、試したいのだ」
「竜か。つまり俺らに敵意はない…と?」
「本格的に戦争が始まれば、そうは行かないだろう。だが、我は旅の途中。種族が違えど、その道中で見かけたからここへ立ち寄ったに過ぎない」
「確かにな・・・。それはすまなかった」
「気にするな、我も魔族。場所が違えば、人族を警戒しなくてはならない」
何だか誤解は解けたようだが、相変わらずすさまじい威圧感だ。
「しかし、魔族のお前さんがここまで来るという事は、本当に竜が住み着いたのか?」
「分からぬ、本当にいれば斬るまで。それに我が同輩が先にここへ来て、戻らんからな。それも踏まえてここへ来ただけだ」
「なるほどな…人探しも兼ねているという事か」
「そんな大層な物でもないがな。お主達も竜退治か?」
「いや、違う。こいつの修行をしている。それにここは神国の聖騎士団の修行場だ。魔族がここでウロウロしていると、また良からぬ噂がたつぞ」
「そうか、それは失礼したな。用を終わらせたら、早々に去るとしよう」
魔族はこちらをちらりと見る。
何という眼だ、縛られて動けなるような錯覚を覚える。
「さて、我は行く」
「あ、ああ、気をつけてな」
「待て!」
俺はふと気になり、声をかける。
「何だ?」
「名前を教えてくれ。俺は京という」
「京・・・。我は壱成」
「壱成。突然、悪かったな」
「気にするな、これも縁だ」
こうして壱成と名乗った魔族は、また宵闇に消えていった。
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