072_修行の開始
「師匠、敵だ!ロックゴーレム3匹」
「おう!」
師匠は剣を抜いて構える。
俺と師匠は、レイラ達と別れた帝国国境から街道とは別の道を進み、山に入っていった。
ここから山を2つ越え、ヴァナヘイム神国の都へ向かうルートだ。
何でもこの山一体は昔から強力なモンスター達が住み着いている。
神国の騎士団つまり聖騎士団達の修行の場所となっている。
師匠も昔はここで修行していたそうだ。
「近くで見るとでかいな、、、、3mはあるのか」
「京、よく見ていろ」
「はい!」
師匠は剣を振るうと巨大なロックゴーレムを横に一刀する。
そのまま流れるように2匹目。
そして3匹目は縦一直線に両断する。
「相変わらず、すげー・・・」
「ちゃんと見ていたか?流れを意識した動きだ」
「え、はい!」
剣を教えると言ったその日から俺は剣を一度も握っていない。
師匠は俺にしばらく見稽古だと言い、俺はその通りにしていた。
俺はてっきり剣での衝撃波の打ち方やすごい技を期待していたが、そんなのは剣を覚えたらいくらでも出来ると一喝されてしまった。
とりあえず理屈は抜きにして、動きや型を覚えろと言われた。
「流れを意識って、敵を見て、その動きを対処するとは違うんですか?」
「お前さんは頭が固いというか、頭でっかちというか。体で感じるんだ」
「殺気とは違うんですか?」
「逆に聞くが、殺気とは何だ?」
「うーん、、、敵の気配?」
「じゃあ、気配とは?」
「生きてるものの気?」
「まぁ、間違っちゃいない。つまり人間を含めて生き物には気がある。この辺の説明は難しいからな、、、まぁそれを感じるって事だ。気とは殺気だけとは限らない、それを覚えておくんだ」
「はぁ」
ここ数日こんな調子だ。
俺は正直、理解出来ていない。
せめてとも思い、師匠の動きだけは何度も頭でイメージをする。
日が暮れ、野営の準備をする。
食事は野生のモンスターの肉を俺が調理する。
この間の固有スキルのレベルに伴い、スキルが一斉にレベルアップした際に料理スキルも上達していた。
師匠との修行が始まって、料理をしていたら俺が料理係に任命されてしまった。
師匠が作る料理は、剣とは違いバリエーションがあまりにも無く、焼くか煮るかだけの料理だからだ。
「うまいな!」
「まぁ、自分は料理してる段階で味見してますから」
「しかし料理の腕も上がっててくれるとは、ありがたい」
今日の献立はこんな感じだ。
ハーピーの香草焼き
薬草サラダ
モンスターの出汁が聞いたスープ
豪華に見えるが、いつもとほとんど変わらない。
薬草は自生している薬草を拾い集める。
この辺のモンスターは雑食や肉食が多いので、どうにも臭みが強い。
倒したら香草と塩で漬け込んだものをアイテム袋へ放り込んでおく。
後はスープだが、モンスターの骨や肉から出汁を取り、灰汁を取ったものに、味付けをすしているだけだ。
「しかし、スキルってのは便利ですね」
俺がふとこんな事を言うと師匠が反応する。
「あぁ、そうだな。スキルっていうのは神が与えし力の一つだな」
「意外ですね、もっとこう否定的に来るかと思いましたが」
「お前さんはスキルに頼らないように育てからな、わざわざ言わなくても分かるだろう。スキルとは得た瞬間からあたかも最初から出来てた技能のように感じるだろう。剣の初心者が次の日にはベテランのようになってたりするからな。 だが、実際は本当のベテランとスキルで得た新人では天と地程差が生まれる。経験や努力によって培われる技術があって初めて会得したと言えるからな」
「まぁ、これまでの戦いで嫌という程、痛感しましたからね」
帝国騎士団との戦いを思い出す。
俺はかなりレベルが上がっていたが、それでも剣においては俺の技術が彼らを上回っていたのがでかいだろう。
「確かにスキルが便利なのは間違いないがな」
「ところで、ヴァナヘイム神国ってどんなところなんです?」
「ヴァナヘイム神国は、ヴァル神教の総本山だ。土地柄か、民は信者がほとんどだな。帝国や公国と比べると静かな所ではあるな」
「ヴァル神教?」
「そうか、お前さんは知らないんだな。まぁようするに世界を作った神々を敬う教えだな」
「何か軽いですね、仮にも師匠はその国の聖騎士なんじゃないですか?」
「まぁそうなんだけどな、俺は騎士だから別に教えを説く聖職者ではないからな」
「そうなんですね、まぁ厳格な教えじゃないって事ですかね」
「ヴァル神教は教えを説くが、強要はしない。教えで民を操る事もそれで金銭を巻き上げるような事はしてはならない」
「マトモですね」
「巫女がそういう考えだからな」
「巫女?」
「ああ、神国の指導者だ。実際は四聖が細かな事をやるが、国や世界の大事を決定されるのは巫女なんだ」
俺は前の世界での、悪い風習を思い出していた。
「別に若くないぞ?」
また心を読まれるような事を顔に出してしまっていた。
巫女といえば若い娘を想像してしまっていたからだ。
「い、いや、別に何も考えてないですよ!」
「そうかぁ?まぁ俺も年齢は分からんがな!」
「しかし、師匠は聖騎士で偉い人なのに?こんな場所でゆっくりしてていいんですか?」
「良くはないんだが、、、あいつがいるから何とかなるだろう」
師匠は何かを思い出すように俺に話す。
「あいつ、フューネルだ。四聖の一人だが、俺なんかより国のことを分かってるし、的確な指導者だよ」
「何だか俺には今いち、師匠の偉大さはわからないんですよね。いや、剣はすごいと思ってますよ!」
「はぁ、まぁ別に偉大でもないんだが、お前さんに言われるとちょっと悲しいな」
俺の失言で一人のおっさんを凹ましてしまった。
食事を終えた俺達は、横になると目を瞑った。
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